beacon

紅白戦敗戦で涙するほどのBチーム、「思いの強さ」がもたらした広島ユース日本一

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.17 高円宮杯サッカーリーグチャンピオンシップ 札幌U-18 1-3広島ユース 埼玉]

 高校年代日本一を告げるホイッスルとともに控え選手たちが一斉にピッチへとなだれ込んできた。昨年に続く“高校年代日本一”だが、「弱い」と言われてきた彼らにとって喜びは昨年以上。ピッチに立っていた選手はもちろん、なだれ込んできたサブ組の目からも涙があふれていた。

「気持ちには引力がある」。サンフレッチェ広島ユースの合言葉となっている思いの強さが、昨年の全日本ユース選手権に続き、再び広島を日本一へと引き上げた。森山佳郎監督は言う。「誰一人あきらめたり、投げやりになったりする選手がいなくて、練習試合ではAチームに負けたBチームの選手が泣くくらい頑張っている姿をAチームの選手たちは感じながらやっている。『あれほどBチームが頑張っているチームはねえゾ』と言っている。チームの雰囲気が優勝へ導いてくれたと思う」。公式戦に絡むことができなないBチームでも普段の練習から必死に戦っている選手たちの集まり。それを感じながら戦った広島イレブンのゴールを「奪う」「守る」という貪欲な姿勢が、最後にトップチーム昇格者5人を擁するタレント軍団・札幌を上回った。

 前半24分、広島は中盤を突破されてPAへスルーパスを通される。その折り返しをMF中原彰吾に詰められるが、そのシュートを猛然と駆け寄ったDF柳川剛輝が身体ごと投げ出してブロックするビッグプレー。さらに35分にはサイドを突破されて決定的な形をつくられたがGK有賀陽平が必死の形相でボールへ寄せるとこぼれ球をDF陣がゴールの外へかき出した。指揮官も「ふつうのチームだったらやられている」と振り返った2度の決定機。「引力」でボールを自らへ引き寄せて相手にリードを与えず、これが先制された直後に気落ちしたのか、ややディフェンスが甘くなった札幌との差になったかもしれない。

 自分たちはトップチームへ昇格する選手はいない。現3年生は1年生の時から「弱い」と言われ続けた世代だった。それでもトップチームへ5人が昇格内定し、年代別日本代表がズラリと揃う札幌相手に負けられない意地があった。DF脇本晃成主将は「(札幌を)倒したいと思ってやってきた。(守備面では)クリアの処理やゴール前の守備でどれだけ身体を張れるか、とやってきた。積み重ねを出せた。(札幌は)スピード、フィジカルはオレらよりも上回っている。でもオレらは戦う気持ちで上回っていた」。伝統の武器で日本一を手繰り寄せた3年生たち。日本一という大きな結果を残し、自分たちの思いの強さを証明した。来年は先制ゴールを決めたMF野津田岳人らレギュラー7人が残る1、2年生たちがこの強さを引き継ぐ。

(取材・文 吉田太郎)

TOP