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「天皇杯でフロンターレとやりたいという新しい目標できた」風間八宏監督退任の筑波大が首位決戦制し開幕3連勝!:関東

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[4.21 関東大学1部L第3節 筑波大2-0早稲田大 東総]

 筑波大、指揮官電撃退任のショック感じさせない快勝! JR東日本カップ2012 第86回関東大学サッカーリーグ戦1部は21日、第3節の5試合を行い、首位・筑波大と2位・早稲田大との首位攻防戦は筑波大が2-0で勝利。川崎F新監督就任発表が秒読み段階となっている風間八宏前監督が前日20日の練習指導を最後に退任した筑波大だが、開幕3連勝で首位を守った。
 
 突然の発表があったのは18日水曜日の練習前。風間前監督から川崎フロンターレ監督就任の意向を聞いた筑波大イレブンは、驚きを隠すことができなかったという。翌19日には急遽トップチームによる送別会が行われ、20日に退任式。08年から指揮を執った風間前監督の「相手を外す」「CBを攻撃する」「(プレー中)身体が休んでいても常に考えておくこと」など独特のことば、練習方法によって選手たちは「上手くなっている」「自分の戦う術を知る」ことを実感し、その指導に憧れて入学してきた選手もいる。風間前監督への思いの強さのあまり、涙を流す選手もいたというほどの衝撃。だが、FW不老祐介主将(4年=広島ユース)は「風間さんがいなくなって負けたら、風間さんがいないとダメだと言われる。しっかりとやり続けて結果を出していこうとみんなで言っていた」。そして、この日の試合前に風間前監督からのメッセージとして、内藤清志ヘッドコーチを通して「オレ(風間前監督)がいないと負けるようなサッカーはしていない」と伝え聞いた選手たちは、高いモチベーションで試合に臨んで首位決戦を制した。

 より攻撃に人数をかけるために今季から取り入れている3-4-3システムは、副監督から昇格した中山雅雄新監督と内藤ヘッドコーチ体制でも変わらず。FW瀬沼優司(4年=桐光学園高)、FW赤崎秀平(3年=佐賀東高)、MF谷口彰悟(3年=大津高)、MF上村岬(3年=磐田ユース)、DF車屋紳太郎(2年=大津高)と全日本大学選抜歴を持つ5選手を擁するタレント軍団が圧倒的なポゼッションで早大を振り回す。

 赤崎が「今年はみんな(技術が高くボールを持って)前を向ける。後ろでヘタな失い方もしない。昨年以上に手ごたえがあります」という今年の筑波大。安易にボールを下げることをせず、2タッチ以内のパスとドリブルとを交えながら、DFをしっかりと外してボールを前へ前へと推し進めていった。そして、20分には上村からのパスをゴール正面右寄りの位置で受けたMF中野嘉大(2年=佐賀東高)がマークを外してから右足シュートをゴール左隅へ叩き込む。その後も上村と玉城中心に高い技術で主導権を握り、赤崎と中野が右サイドをワンツーで切り崩すなど決定機をつくる筑波大は29分、DF山越享太郎(4年=東京Vユース)がドリブルで左サイドを切り裂くと、最後は絶妙なトラップでゴール前の攻防戦を制した10番MF玉城峻吾(3年=三菱養和SCユース)の右足シュートで2-0へ突き放した。

 早大は前半、MF島田譲(4年=鹿島ユース)の縦パスからFW富山貴光(4年=矢板中央高)やFW榎本大希(3年=横浜FMユース)を走らせ、榎本がサイドをえぐるなど決定機をつくったが、筑波大の車屋や1年生GK岩脇力哉(磐田U-18)の好守にあうなど決めきることができない。ただ、早大は後半、相手3バックの脇を突くサイド攻撃と鋭さを増した攻守で試合の流れを奪い返す。開始直後には混戦から榎本が左足を振りぬき、20分にはカウンターから榎本のラストパスを受けたMF近藤貴司(2年=三菱養和SCユース)が決定的な右足シュート。またセカンドボールも拾い続けて筑波大を完全に押し込んでいた。ただ普段よりも明らかに集中力が高いように映る筑波大は相手の決定機を1年生DF早川史哉(新潟ユース)が身体を投げ出すようにブロックし、谷口の的確なカバーリングでピンチを消すなど追撃を許さない。また後半半ばからは自分たちの判断で4バックへ移行してサイド攻撃も封じ込んだ。

 逆に3点目を狙った筑波大は後半25分に玉城のスルーパスで赤崎が抜け出し、その後3度ビッグチャンスを迎えた瀬沼の一撃がクロスバーを叩く。追加点を奪うことのできなかった筑波大だが、2-0で勝利。後半はややらしくないカウンターを多用する場面が増えたものの、チームの象徴的存在でもあった指揮官の電撃退任にもブレずに戦って白星を掴んだ。内藤ヘッドコーチは「(特別に)何かを伝えた訳ではなかったけれど、選手たちは自分たちの力が問われていると感じていた。大人になった。ボクらもビックリしています」と選手たちを讃えていた。

 風間前監督は退任の挨拶で「これからも筑波を応援しているし、これからもみんなの面倒を見る」と語ったという。不老は「風間さんに心配されることなく、気持ちよく送り出したい。フロンターレに行くのも風間さんが『いなくても大丈夫だから』と思って行くと思うので、ボクらも自信を持ってやる」と誓った。赤崎は「天皇杯でフロンターレとやりたいという新しい目標もできた」とニヤリ。筑波大はこれからもスタイルを継続し、一人ひとりが相手を見て対応できる選手たちを育成していく。そして成長を続け、ピッチの上で憧れの前指揮官を驚かせる。

[写真]前半29分、玉城(10番)のゴールを喜ぶ筑波大イレブン
(取材・文 吉田太郎)
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