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[MOM2292]履正社GK瀧浪朋生(3年)_光った空中戦の対応。そして2本のPKストップで主役に

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履正社高GK瀧浪朋生は延長後半とPK戦でシュートをストップする大活躍

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.5 選手権大阪府予選準決勝 東海大仰星高 0-0(PK2-4)履正社高 キンチョウ]

 小学生時代から8年間に渡って指導を行う貴志正弘GKコーチが、「技術的な面では大阪で一番」と評する履正社高のGK瀧浪朋生(3年)が、大一番でその実力を証明した。

 この日のポイントとなったのは、空中戦への対応だ。今季、東海大仰星高との3度の対戦で、許した失点はセットプレーがほとんど。後方から繰り出すロングボール、両サイドからゴール前へ向かってくるスローイン、そして計23本に及んだセットプレー。序盤から多種多様な浮き球へ対応させられた瀧浪は「仰星が蹴ってくるのは分かっていたので、対策はしていたけど、想像以上に蹴ってきたけど、苦しかった」。

 身長は180cmと小柄だが、何度も相手と接触しながらも、決してボールをこぼすことなく落ち着いて相手のチャンスを一つひとつ潰していった。肝を冷やす場面は、後半に一度だけ。競り合いからこぼしたボールがゴールネットを揺らすことになったが、主審の判定はGKチャージで失点にはならず。「今日は絶対に負けられないと思っていた。技術うんぬんよりも、気持ちの面で勝負していこうと思っていた」と気迫を最終ラインから誇示し、無失点のまま試合終盤を迎えた。

 最大の見せ場が訪れたのは両者、無得点のまま迎えた延長後半7分。PAの右を崩しにかかった東海大仰星MF東龍星(2年)をチームメイトが倒し、PKを与えてしまった。普段は、「みんなから気持ちが弱いと言われる」瀧浪だが、この場面では落ち込んだ表情が多かったチームメイトとは一人だけ違い、「あそこでPKになった時に、みんな下を向いていた。気持ちがみんな落ちていたので、『まだ終わってないから。俺に任せとけ』と声をかけた」。

 とは言え、「正直めちゃくちゃ怖かった」。緊張に押しつぶされそうな中でも忘れていなかったのは、貴志GKコーチから教わった「先に動かない。真ん中から外へと消していく」という試合中のPKに対する対応策。相手が中央に蹴り込んだボールに対し、右方向へと飛んでしまったが、足でしっかりと防いだ。「先に動いてしまったけど、中への意識があったから足が残っていたんだと思う」と貴志GKコーチが振り返ったように、普段からの指導があったからだ。

 迎えたPK戦でも、1人目のキックを読み通りストップ。3人目も相手が枠外へと外したものの、しっかりキック方向へと反応していた。チームメイトも1本止められてしまったが、それ以外は4人が成功。「昨年のインターハイで2回、PK戦で勝てていたので、負ける気はしなかった」という自信通り、苦しみながらも決勝行きのチケットを手にした。

 試合後、「今日の手応えは正直、むっちゃある」と笑顔を見せた守護神は、「昨年は先輩たちがいたので、合わせてやることばかり考えていて、自分を出せなかったけど、今年は自分を出していこうと考えていた。中学までの自分ならPK戦になった時点で気落ちしていて、ダメだったと思うけど、メンタル的に強くなった今だからこそやれたんだと思う」と成長への手応えを口にした。最後尾で頼もしさを見せた守護神の活躍もあり、チームはここまで無失点。決勝でも気持ちのこもった守りで、最後まで走りぬく。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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