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リベンジを懸けた大一番に3発快勝。長崎総科大附を退けた東山は、夏に完敗を喫した青森山田との“再会”へ向かう

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東山高はFW藤枝康佑(10番)の2ゴールで快勝を収めた(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 東山高 3-0 長崎総合科学大附高 駒沢]

 あの完敗から4か月半。突き付けられた差を、感じた違いを、少しでも埋めようとみんなで努力してきた。2つの勝利を重ねて、力強く引き寄せたこのチャンス。次こそは、必ず。

「夏にやっぱり自分たちと青森山田さんのトップレベルとの差を感じて、それをうまく改善しながら、トップレベルに基準を合わせていこうということを積み重ねてきました」(東山高・福重良一監督)。

 トップレベルとの再会、実現。第100回全国高校サッカー選手権は2日に3回戦を開催した。駒沢陸上競技場の第2試合では、東山高(京都)と長崎総合科学大附高(長崎)が激突。前半29分にFW藤枝康佑(3年)が先制点を挙げた東山が、後半23分にFW芦谷斗亜(3年)、39分に再び藤枝と、2トップが叩き出した3ゴールで3-0と勝利。次のステージでは、インターハイと同じ因縁の準々決勝で、三冠を狙う青森山田高(青森)と対峙する。

 お互いに夏のリベンジを期した一戦だった。福井で開催された今年度のインターハイ。東山は準々決勝で2-5と、長崎総科大附は初戦で0-3と、どちらも優勝した青森山田に同じ3点差で敗れている。その王者は同じ会場の第1試合で阪南大高(大阪)に3-1と快勝。この試合の白星は、すなわち“再戦”の実現を意味していた。

「苦しい時間が増えて、なかなか押し込めない時間があった」と芦谷が話せば、「自分たちのサッカーをやろうとしていたんですけど、それを全部相手に止められたところもありました」とは長崎総科大附のキャプテンを務めるDF児玉勇翔(3年)。どちらもなかなか攻撃の糸口をつかみ切れない展開の中で、29分にはセットプレーが試合を動かす。

 左サイドで東山が手にしたスローイン。ボールを託されたMF松橋啓太(2年)がロングスローを投げ込むと、相手DFのクリアをMF真田蓮司(2年)は左足でダイレクトボレー。芦谷に当たったボールは、一度空振りしていた藤枝の元へ帰ってくる。

「ロングスローから良いタイミングでボールが来て、斗亜が良い落としをしてくれたので、フリーでシュートを打てました」。右足一閃。ボレーで叩いたボールは、豪快にゴールネットを揺らす。10番のストライカーが一仕事。前半は東山が1点をリードして、ハーフタイムに折り返す。

 後半も先に決定機を作ったのは東山。5分に右サイドを運んだ松橋がクロスを上げ切ると、フリーで待っていたMF李隆志(3年)のヘディングは枠を越えたものの好トライ。一方の長崎総科大附も7分には、右サイドで獲得したCKを1年生レフティのDF平山零音が蹴り込み、2戦連発中のDF原口玖星(3年)が頭1つ分抜け出した高い打点のヘディングでゴールを狙うも、軌道は枠の上へ。同点ゴールには至らない。

 すると、次の得点も東山に。23分。右サイドで相手のパスをインターセプトしたMF阪田澪哉(2年)が、得意のドリブルで一気に加速。そのまま放ったシュートは右ポストを叩いたが、ここに芦谷がきっちり詰める。「僕は1年生の時はずっとCチームでやっていて、その時から一緒にやっていたメンバーがスタンドでも応援してくれていて、そういう応援のメンバーが声を掛けてくれたり、連絡とかいっぱいくれたりしていたので、この全国でゴールを届けたいなと思って、決めました」という苦労人フォワードの全国初ゴール。点差は2点に広がった。

「クリアや前線へのフィードが相手に取られたり、セカンドボールを拾われたことが苦しい展開になったと思います」と定方敏和監督代行も口にした長崎総科大附は、MF高良陸斗(3年)とMF別府史雅(3年)の配球を中心に、サイドへ散らしながら攻める姿勢は打ち出すも、なかなかフィニッシュには届かず。相次いで切った交代カードも、東山のディフェンス陣に抑え込まれる。

 ダメ押しの一撃は39分。真田が左から入れた鋭いFKに、DF井上蒼太(3年)がヘディングで競り勝ち、藤枝が頭で合わせたボールは、GKの頭上を破ってゆっくりとゴールネットへ弾み込む。

「ヘディングはいつも狙っていたので、クロスのタイミングに合わせて、上手く中に入ることができたなと思っています」と笑った10番のドッピエッタで勝負あり。「長崎総附さんが徹底してダイレクトプレーで縦に来るというのはわかっていたので、そこは昨日の練習で意識づけをして、あらゆるやり方に対応できるようには日々練習してきたので、そこは上手くできたと思います」と福重監督。3-0。理想的な時間帯に得点を重ねた東山が、約束のクォーターファイナルへと勝ち上がった。

 インターハイでは阪田と真田が優秀選手に選出。この日もスタメンの半数以上を占めた2年生にタレントが揃うとの評価もある東山だが、この大会は3年生の活躍が際立っている。

 初戦の市立長野高(長野)戦では、キャプテンマークを巻いたDF夘田大揮(3年)が勝利を引き寄せる2点目を記録。この日もゴールを挙げたのは3年生2トップであり、CBの井上は完封勝利に大きく貢献し、アシストもマーク。「今年のチームは2年生が主体なんですけど、やっぱり出ていない3年生も含めて全員が一丸となって戦えるチームだと思っています」と話していた李は、高い技術を生かしたドリブルで存在感を発揮した。

「僕自身は2年生が主力だとは思っていないんです。チームとして毎試合毎試合で選手を決めていく時に、2年生が多いという感覚です。もちろん3年生はそれを糧にというか、励みにして、予選から本選に掛けて頑張っていますし、試合で戦える選手は学年に関係なく選んでいるので、今はこうなっているという状態です」と言及したのは福重監督。最後の冬に懸ける最上級生の意地が、チームに推進力を生んでいるのは間違いない。

 自分たちの力で手繰り寄せた、リベンジの機会。前述したようにインターハイでは、青森山田に5失点を喫しての完敗。日本一に輝いたチームを基準に、夏からの日々を真摯にトレーニングと向き合ってきた。相手にとって不足なし。2度も同じヤツらに負けるわけにはいかない。

「インターハイで悔しい想いをした相手なので、今までやってきたことをすべて出して勝ちたいです」。藤枝の言葉が力強く響く。全国大会。準々決勝。青森山田。3つの同じ要素は揃った。東山にとって国立競技場を懸けた一世一代のビッグマッチが、そのキックオフを静かに待っている。

(取材・文 土屋雅史)

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