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[選手権]市立西宮の快進撃は8強でストップ、大学受験の3年生へ「2つ目の夢も叶えてほしい」

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 市立西宮2-3大分 埼玉]

 国立は目の前だった。初出場・市立西宮(兵庫)の挑戦はベスト8で終わった。前半9分、MF後藤寛太(3年)のシュートをGKが前にこぼし、FW指田真宏(3年)が押し込んで先制点を奪うと、同13分には後藤が豪快なミドルシュート。背番号10の3戦連発4点目となる追加点で2-0とリードを広げた。

 ところが、ここから“落とし穴”が待っていた。2点リードまでは市立西宮らしいショートパスからのサイド攻撃が機能していたが、徹底してシンプルにロングボールを放り込んでくる大分の反撃を受けて立ってしまう。前半34分、後半8分とセットプレーから失点。2-2の同点に追いつかれると、徐々に足も止まり出し、大分のパワーに押し込まれた。

「早くに2点取れて、経験のなさが選手にもベンチにも出た。長短のパスを混ぜて、アイデアあるサッカーでパワーのサッカーに対抗したかったが、最後はパワーに屈した形になった」。大路照彦監督は唇をかむ。

 誤算は指田の負傷交代だった。「指田がハムストリングを痛めて、代えざるを得なかったのは苦しいメンバーチェンジだった」。後半23分、指田に代えてFW細井優希(1年)をピッチに送るが、前線でタメをつくれなくなり、大分の猛攻にさらされる展開となった。細井と後藤のポジションを入れ替え、後藤の裏への飛び出しを生かす攻撃に切り替えたのも苦肉の策だった。

「指田以外に、前線でボールをおさめられる選手を育成しきれなかった自分の準備不足。指田の負傷は予想外だったが、選手層の薄さが出た。すべて監督の責任。選手にかわいそうなことをした」

 シンプルに縦パスを入れてくる大分の攻撃に対し、市立西宮守備陣は常に自陣ゴールに向かっての守備を余儀なくされた。タッチライン、さらにはゴールラインに逃げるのが精一杯となり、体力的にも精神的にも追い込まれていった。後半39分、その4分前に投入されたばかりのフレッシュなFW牧寛貴(2年)に裏のスペースを突かれ、決勝点を献上。大路監督は「大分はパワーとスピードと闘志。気迫の部分で、2点取って甘さが出たかなと思う。執拗なまでに同じ形を徹底してきたことは素晴らしかった」と脱帽だった。

 最後は敗れたとはいえ、全国選手権初出場で8強入り。兵庫県大会準決勝で滝川二、全国選手権2回戦では山梨学院(山梨)と、昨年、一昨年の全国王者を次々と破り、無名の公立校が全国ベスト8まで上り詰めた。大路監督は「見ていて楽しいサッカーを全国の皆さんに見せられたと思う。自分たちのサッカーを誇りに思っている」と胸を張る。

 3年生9人は14、15日に大学入試センター試験を受験する予定。選手権が終わり、休む間もなく受験勉強が待っている。大路監督は「一つ目の夢は叶えたのだから、2つ目も絶対に叶えてほしい」と教え子たちにエールを送る。「もう一つ行けたんじゃないかという思いも出てくるけど、ここまでこのメンバーで来れたことはよかった」。大会をそう振り返ったDF帷智行主将(3年)は「明日から切り替えて。志望校を記事でも書かれてしまっているので。死ぬ気でがんばって、志望校に入りたいですね」と笑みも浮かべ、キャプテンから受験生の顔へ変わっていった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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