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「正直、ビックリ」の追加招集で爪痕残したFW林大地「また一緒にサッカーをしたい」

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U-24日本代表FW林大地(鳥栖)

[3.29 SAISON CARD CUP 2021 U-24日本 3-0 U-24アルゼンチン 北九州]

 追加招集だった。チャンスは限られていたのかもしれない。しかし、練習からアピールを続けたU-24日本代表FW林大地(鳥栖)は、26日のアルゼンチン戦で同代表デビュー。そして、29日のアルゼンチンとの2試合目ではスタメンの座を勝ち取り、値千金の先制弾を叩き込むことになった。

 19日に発表されたメンバーの中に林の名前はなかった。だが、2日後の21日、MF堂安律(ビーレフェルト)が不参加となり、追加招集が発表される。今回の活動中のオンライン取材では、「正直、ビックリしている。代表活動に呼ばれたことがなかったので」と心境を語っていた。しかし、泥臭くガムシャラな姿を披露するスタイルから“ビースト”と呼ばれるニックネーム通りのプレーを、初めてスタメンに名を連ねて立った五輪代表のピッチで見せ付ける。

 4-2-3-1の1トップの位置に入ると、果敢に相手とのデュエルに挑む。1試合目ではチーム全体が球際の勝負で後手に回り、アルゼンチンに主導権を握られた。しかし、林は臆することなどない。「デュエルの部分や競り合いの部分で、多少無理な体勢でもマイボールにしたり、自分のところに持っていくのは持ち味」と空中戦であろうが、地上戦であろうが体を当てて相手から自由を奪い取り、マイボールにしようと奮闘した。

 そして、「代表活動であれ、チームのために走ることを優先して試合に入ろうと思っていた」と振り返ったように、サボらずに相手ボールホルダーにプレッシャーも掛け続けた。初先発の男が見せたガムシャラなプレーが、仲間の闘争心に火をつけているようにも感じられた。

 さらに、本職の攻撃面では大仕事をやってのける。前半26分にMF田中碧(川崎F)のロングボールから最終ライン裏を突くが、コントロールミスからフィニッシュまで持ち込めず。「良いボールがきたので、あれは100パーセント自分のミス」と唇を噛んだが、同45分に待望の瞬間が訪れる。

 DF瀬古歩夢(C大阪)がボールを持って前を見ると、相手最終ライン裏へと抜け出そうとする。「(瀬古から)『常に見ているから準備しといてな』と。すごく良いボールが来るのは練習から分かっていた」。ピンポイントのロングボールが届けられると、今度はしっかりとコントロール。PA内に侵入すると、相手GKの動きを見極めて右足のシュートでゴールを陥れた。

 ボールがネットを揺らしたことを確認すると、雄叫びを上げる。「アドレナリンが出過ぎて、あまり覚えていない」と苦笑したものの、自身にとっての同代表初ゴールはチームに勢いをもたらす貴重な先制点となった。

「正直、ビックリした」という選出となったが、デビューを飾り、ゴールも記録したことで、確かな爪痕を残した。東京五輪本大会まで、約4か月。「出られるチャンスがあるなら、そこを目指したい。この代表に初めて呼んでもらい、初めて会った仲間にすごく刺激をもらったし、また一緒にサッカーをしたいと思った」。東京五輪への思いも強くなった。

 この日の得点で、次回の選出に近付いたのは間違いないだろう。より確実なものにするためにも、これまで同様、鳥栖でゴールを奪い続けたいところだ。

(取材・文 折戸岳彦)

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