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葛藤ある立場でも一体感支えたMF川崎颯太「悔しさを晴らすのはJリーグしかない」決勝から“中1.5日”次節強行出場へ

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京都アカデミー同期のMF山田楓喜(東京V)とともにトロフィーを掲げるMF川崎颯太(京都、写真右)

 AFC U23アジアカップを制したU-23日本代表のMF川崎颯太(京都)が4日深夜、大会開催地のカタールから羽田空港に帰国し、報道陣の取材に応じた。今大会ではグループリーグ2試合に先発し、第2戦UAE戦では得点も記録したが、決勝トーナメントは3試合ともベンチスタート。最後は悔しさを胸に秘めながらチームを鼓舞し、途中出場で活力を加える役割でアジア制覇に貢献した。

 チームの代名詞となった「23人全員で戦う」という姿は、控えメンバーの前向きな振る舞いなしには成し得なかった。

 大会初戦・中国戦(○1-0)ではDF西尾隆矢の一発退場でチームに衝撃が走った中、ベンチに控える川崎らがロッカーに引き上げる西尾をフォロー。続く第3戦ではライバルの韓国に敗れるという屈辱も味わったが、準々決勝を前に選手ミーティングで思いの丈を話し合い、全員で前を向いた。そうして掴んだパリ五輪の切符、アジア王者のタイトルだった。

「初戦でレッドカードがあったけども勝利で乗り切ったというところから日々団結力がよくなっていたと思うし、最後は最高のチームになったと思う」

 帰国後、そう大会を総括した川崎は「チマ(MF藤田譲瑠チマ)をはじめキャプテン、副キャプテンがまとめてくれたからだし、いつも各自違うチームでプレーしているけど、ここでは日本のために戦うという気持ちが自分たちを熱く一つにしてくれたと思う」とチームの団結力を誇った。

 川崎の考えるターニングポイントは、負けたら終わりの準々決勝カタール戦(○4-2)で、10人の相手に勝ち越しゴールを与えた直後の雰囲気だった。

「一つ自分が思うのは、カタール戦で2失点目を食らってしまって、だいぶしんどい展開になりそうだった時のこと。自分たちもベンチからの声を欠かさなかったし、ピッチの中の選手たちも心では焦っていたかもしれないけど、自分たちのサッカーを信じて、最後まで突き進んでいった」(川崎)

 10人の相手に五輪出場権の希望を奪われるかもしれないという重圧の中、セットプレーでなんとか追いつき、延長戦の末に突き放すという劇的な試合となったカタール戦。その経験が「みんなで勝ちたいという気持ちがみんなを一つにしてくれて勝利に結びついた」という成功体験につながり、チームに一体感をもたらしていたようだ。

 そんな苦しい戦いを経験しながらアジアの頂点に上り詰めた大岩ジャパンだが、大事な試合のピッチに立てないベンチメンバーにはもちろん複雑な思いがあった。所属クラブでは中心的な役割を果たし、日本サッカーに貢献したい思いを持って集まった選手ゆえ、それは当然のことだ。しかし、ベンチスタートが続いた川崎らはその葛藤も胸に秘め、チームに前向きな影響を与えるよう努めていた。

「ベンチにいることには悔しさがあると思うし、納得のいっていない選手もいると思う。それでもチームが勝つことが幸せだし、嬉しい。それでもチームを勝たせたいと思うのは、大岩さんのサッカー、大岩さんの魅力だと思う。俺もだけど、もっとスタメンで出たかったという気持ちがある中で、あそこまで自分たちがチームのために徹することができたのは、また逆に選ばれている11人の責任ある行動のおかげだと思う」(川崎)

 そんな静かな悔しさはここからのJリーグ、そしてパリ五輪で晴らすしかない。京都のチョウ・キジェ監督は6日のJ1次節・町田戦で川崎を起用する方針だといい、アディショナルタイム含めて約30分間プレーした決勝ウズベキスタン戦から“中1.5日”での出場が濃厚。チームキャプテンを務める川崎自身もそれは望むところだ。

「チョウさんに何と言われようが自分としても出るつもりだった。こっちでの悔しさを晴らすのはJリーグしかないと思う。一つでも多くのチャンスがあるという面で、町田戦も絶対に出て、少しでもパリに向けて大きくなっていきたい」。パリ五輪に向けた中盤のポジション争いは熾烈。まずは誰よりもJリーグで大きなアピールを果たし、夢舞台への挑戦権を掴むつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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