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【検証】岡田ジャパンはW杯で勝てるのか(上)

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 史上最低の3位に終わった東アジア選手権。試合後はもはや恒例となったブーイングが浴びせられ、岡田武史監督に対する解任論も強まった。屈辱的な1-3敗戦に終わった韓国戦から一夜明け、犬飼基昭会長は岡田監督と緊急会談。現体制を全面的に支えていく方針を決めた。南アフリカW杯まで4ヵ月を切り、果たして岡田ジャパンはW杯で勝てるのか。1月の鹿児島・指宿合宿から東アジア選手権までの約3週間の取材をもとに全3回に分けて検証していく。


 14日の韓国戦後、ミックスゾーンを通る選手たちの表情に生気はなかった。選手は声をそろえて「パスを回すだけじゃダメ」と厳しい表情で話した。高い位置からプレッシャーをかけてボールを奪う。そこの意思統一は取れている。では、いざボールを取ったら、どうするのか? 横パスをつないでサイドにボールを運び、局面の打開を図る。選手は練習で繰り返してきたパターンを愚直に守った。

 しかし、実際には相手の守備ブロックの外側でひたすらパスを回しているだけだった。パスをつないでいる間に敵は守備組織を整え、相手の思惑通りにサイドに追いやられる。パスを回しているというより、回されている展開。狙い通りのサイドからのクロスは、中を固めた相手に簡単に弾かれた。アタッキングゾーンで1対1を仕掛ける選手も少なく、単調なアーリークロスを重ねる。数的優位をつくって深い位置まで進入する場面はわずかで、狙いどころであるはずのニアゾーンも相手にケアされ、日本の選手が飛び込む場面はほとんどなかった。

 前線の選手は「一発で裏に行ける場面もあったのに、横パスが多すぎる」と注文を付け、中盤の選手は「横に回しながら縦を狙えるチャンスを待っていた」と反論する。互いの信頼関係を失っているから、何度でも動き直しをするべきFWは足を止め、MFも優先順位が「横>縦」のまま変わらない。4試合を通して、スルーパスに抜け出したFWがGKと1対1を迎えるという場面が何回あっただろう。DFラインの裏への飛び出しが最大の武器である岡崎慎司も足元でボールを受けるシーンがほとんど。昨年6月のウズベキスタン戦でW杯出場を決めたゴールのような日本の攻撃パターンのひとつがなくなってしまった。

 ミスをしないように慎重になるあまり、大きな展開やダイレクトパスが少なく、攻撃に手数も時間もかかる。「遊び心がない」と話す選手もいたが、プレーに余裕がなかったのは間違いない。「自信を失っている」と言うのは大げさにしても、迷いが生じているような印象を受けた。自分たちのサッカーは本当に間違っていないのか。このままで大丈夫なのか。根底からチームは揺れている。

 1-3の完敗に終わった韓国戦後、選手はシュートの意識や強引さ、仕掛けるプレー、決定力、ゴール前の精度など「個々の問題」を敗因に挙げた。もちろん、個の部分は大事だ。だが、チームとして機能した上で最終的に勝ち切れない要因を個に求めるならともかく、「(東アジア選手権の)3試合を通して“日本はこういうサッカーだ”というのがなかった」(玉田圭司)という状況の中、選手が異口同音に個の部分を反省する現状はよりいっそう深刻だ。チームとして立ち返るべき「コンセプト」を見失ってしまったように思える。

 韓国戦では、それまでの拠り所だった堅守も崩壊した。前線からプレッシャーをかけ、攻守に渡って数的優位をつくろうとする日本のサッカーは綱渡りのバランスで保たれている。韓国のイ・スンヨプは試合後、「日本は攻めているときに中が空き過ぎているし、サイド(の裏)にもスペースがある。カウンターに弱いね」と話していた。ぽっかり空いたバイタルエリアを突かれた2失点目のように、自分たちがボールを保持しているときに奪われると、一気にピンチに陥る。サイドバックも高い位置を取っているため、その裏を何度も突かれた。中央でもサイドでも、相手からすれば日本は穴だらけのチームに映っているのだ。


(取材・文 西山紘平)

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