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横浜FCに合流したMF寺田「自分を高めたい」

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 MF寺田紳一が、横浜FCに帰ってきた。昨シーズンまで2年間、横浜FCに期限付き移籍していた寺田は、1年目の2010年はチームの中心として活躍した。2年目も負傷に苦しんだが、終盤には復帰し、キャプテンマークを巻いてピッチに立っている。岸野靖之前監督は「来シーズンも残ってくれたら、キャプテンにしたい」と語っていたが、今季の開幕前にはレンタル元であるガンバ大阪に戻っていた。

 しかし、G大阪ではなかなか出場機会を得られず、リーグ戦の出場は9試合に留まった。6月27日の名古屋戦以降はベンチから試合を見守ることが続いていた。それでも、チームを離れる上で、悩んでいたことを明かす。

「ガンバがああいう(残留争いをしている)状態だったので、自分のわがままでチームを出ていいのか、悩みました。でも、チームと話をした結果『移籍してもいい』ということになり、そのときに横浜FCが声を掛けてくれた。昨年までプレーしていたし、今はすごく調子が良さそうで、楽しそうなサッカーをしているようだったので移籍を決めました」

 アカデミーから育ったG大阪での半年間では刺激を受けた。「地元なので、地元の友達と会えたりして、そういう意味では楽しい半年でした。ガンバも結果は出ていませんが、レベルも高かったですし、サッカーもやっていて面白かった」と話す。

 クレバーなパサーだった寺田は、横浜FCの2年間で戦える選手に変貌した。2列目だけでなく、ボランチとしてもプレーできるように幅も広げた。ある程度の自信を持っての復帰だったが、G試合に出られない状況については、受け入れざるを得ない側面もあったと言う。

「悔しいのもありましたけど、モヤモヤした感じがありました。仕方ないと言えば、仕方ないのでね。自分はヤット(遠藤保仁)さんや明神(智和)さんのところまでは、まだ届いていないなっていうのは分かりましたし。でも、自分も体が動くし、調子がいいなというのはあったので、このままではもったいないと思って『移籍したい』と申し出ました。だから、わがままを通してくれたガンバには感謝したいです」

 G大阪に戻ってからは、横浜FCの試合を全く見ていなかったと正直に語る。

「一回も見ていないです(笑)。ただ、結果を見て、良いサッカーをしているんだろうなと思ったし、あとは選手たちと話をして『楽しくやっている』『強くなっている』と言っていたので。一回も見ていないのですが、良いサッカーをしているなというイメージはありました」

 チームの練習に参加したことで、そのイメージは間違っていなかったと言う。

「みんな高い意識でやっているので。そこは岸さんのときもそうですが、練習でやっていることは、少し違う感じがありますね。コンパクトに質を求めてやっているなということはすごく感じました」

 再び声を掛けてくれたチームを、J1に戻して恩返しする。その意識は当然あるが、まずはチームのためというよりも、自分のための決断であることを寺田は強調した。

「一番は自分が試合に出て、自分を高めたいという気持ちです。たまたま縁があって、ここに来ることができました。そして、そのチームの状況が、こういう昇格を狙える状況です。みんながJ1に上がるために全力でやっているのがすごく分かるので、その役に立つというか、頑張って一緒にJ1に上がりたいです」

 山口素弘監督は「また競争だね」と中盤に新たな選手が加わったことを喜ぶ。

「当然、中盤が欲しいと思っていたから取ったわけですし、しかも良い選手。メンタル面も良いですし、昨年やっているからチームにもすぐ馴染むでしょう。彼に合うサッカーをやっていると思うし、もう1ランクチーム全体をアップさせるためには良い補強かなと思います。質も高いし、またチーム内にも競争が出る。実際に(今日の練習から)目の色が変わった選手が、何人かいましたからね」

「自分を高めたい」という想いで移籍を決断した寺田と、「もう1ランクチーム全体をアップさせるために」彼の加入を望んだ指揮官。J2を制してJ1に昇格するという目標を掲げたチームは、寺田を加えて、どのような変化を見せていくか。横浜FCは今週末、湘南との神奈川ダービーを迎える。

(取材・文 河合拓)

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