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GKで史上初のMVP、楢崎「他のGKの励みになることがうれしい」

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 だれもが納得のMVPだ。史上初となるGKによる最優秀選手賞(MVP)受賞。2010年Jリーグの“顔”に名古屋グランパスのGK楢崎正剛が選ばれた。

 「歴代のMVP受賞者の顔触れを見て、本当に俺がもらっていいのかなと思ったけど、GKである自分が受賞するのはちょっと価値があると思うし、他のGKの励みになると思うので、そこはうれしい。こんな素晴らしい賞をいただけたのはチームメイトのおかげだし、支えてくれたいろんな人たちのおかげで受賞できた。感謝の気持ちでいっぱいで、どう伝えたらいいか分からない」

 日本を代表するGKだからこそ、GKがMVPを獲ることの難しさはだれよりも知っている。「失点が目立つ中、コンスタントに高いレベルでいいプレーを続けること、インパクトあるセーブを見せ続けることは難しい」。それが不満というわけではない。「それはしょうがないし、ゴールとか目に見えるプレーの方が評価しやすい。でも、それが仕事なんで、何とも思ってないし、目立つのに慣れていないので逆に困った。(壇上に上がって)久々に汗をかきました」と苦笑いを浮かべていた。

 「GKは決定的な仕事ができる。試合の結果を左右するポジションだし、ボールが来ないのが一番だけど、数少ないピンチをしのぐ大事な仕事だと思っている」。GKとしての誇り。Jリーグの歴史に残るMVP受賞となった。

 数字がすべてを物語っている。名古屋の失点数は37。リーグ最少失点である鹿島の31、C大阪の32には及ばないが、チームの被シュート数は483本と、最下位・湘南の543本に続いて18チームで2番目に多かった(鹿島は385本、C大阪は362本)。

 「あんまりそういう感じはしない。みんなで止めてきたし、前にデカイやつがいて、よくボールが当たっていたので」。本人は自分だけの力ではないと強調したが、数多くのシュートを浴びながら守護神のビッグセーブが何度となくチームを救ってきたのは事実だ。

 DF田中マルクス闘莉王(名古屋)は「間違いなく、どっちかだと思っていた」と、自分と楢崎のどちらかがMVPを受賞することを確信していたという。楢崎は「俺はチームの中を知っているので、MVPに値するのは闘莉王だと思う。プレーもそうだし、ピッチ外の言動や存在感もそう。恐れ入ります。チームをまとめたのは彼。MVPは闘莉王で良かったと思うけど」と言う。

 「でも闘莉王は『俺に獲ってほしい』って。年下なのに親心的な気持ちで俺のことを見ていた。闘莉王に獲らせてもらった感じがする」。そう笑った楢崎に対し、闘莉王は「ナラさんがMVPになって、本当にうれしい。俺にとっては兄貴のような存在だから」と素直に喜んでいた。

 日本代表では悔しい思いを味わった。南アフリカW杯の壮行試合となった5月24日の韓国戦に0-2で敗れると、続くイングランド戦からGK川島永嗣に守護神の座を明け渡した。自国開催以外では初の決勝トーナメント進出を果たした歴史的な大会で、一度たりともピッチに立つことはできなかった。

 大きな挫折を味わった4度目のW杯。新生日本代表の始動となった9月の代表合宿で原博実技術委員長に代表引退の意思を伝え、9月7日のグアテマラ戦後、正式に日本代表からの引退を表明した。

 クラブに専念し、勝ち取った初のリーグタイトルとMVP。「何回かJリーグアウォーズに出て、優勝チームがみんなで壇上に上がるのを見て、うらやましいなと思っていた。いつか自分もそうなりたいなと。その目標を達成できた。こういう賞はおまけみたいなもので、優勝が一番うれしい」。悲願の初優勝。そして、過去のどんな名GKでも手の届かなかった最高の栄誉を手にし、楢崎が名実ともに日本一のGKになった。

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(取材・文 西山紘平)

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