beacon

柏FW工藤が“歴史的ゴール”「大迫くんよりも活躍することを意識していた」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[10.2 J1第28節 鹿島0-1柏 カシマ]

 悲願の優勝へ、難関をひとつクリアした。柏レイソルが“鬼門”を打ち破って大きな勝ち点3をつかんだ。リーグ戦では12試合目にして初めてとなるカシマスタジアムでの白星。ナビスコ杯を含めてもこれまで13試合でわずか1勝と相性の悪い会場だったが、2004年以来7年ぶりの歓喜が訪れた。

「最高です! チームとしても前節、負けてましたし、勝負強い鹿島を相手に、レイソル自体が試される試合だと思っていた。いろんな記者さんから、カシマスタジアムで勝てていないという情報を聞いて、僕自身は気合が入っていた」

 歴史的勝利に導いたのは21歳の成長株、FW工藤壮人だった。前半31分、柏はボールを奪ってカウンターを展開。FW田中順也のパスを受けたMFレアンドロ・ドミンゲスがドリブルで仕掛けたあと、DFラインの裏へスルーパス。これに快足を活かして工藤が抜け出し、ワントラップから右足一閃。GK曽ヶ端準と交錯したが先に触り、先制点を決めた。背番号「19」の今季通算6得点目が決勝点となった。

 同い年でユースから共に戦ってきたU-22日本代表DF酒井宏樹は「ユース時代から大事な試合とか大舞台に強いのが長所だった」と工藤が“持っている男”だと明かしたが、それだけではない。努力を重ねて自らが追い求めてきた形を大事な試合で発揮した。

「僕のストロングポイントが出た。“最後押し込むだけ”というゴールじゃなかった。レアンドロがスルーパスを出してくれて、ファーストタッチ(トラップ)がうまくいって、GKが出るか出られないかという位置にボールを置けた。実際は曽ヶ端さんが出てこなくて、最後のフィニッシュの場面ではGKとぶつかりましたけど、僕のほうが1歩速くて流し込めた。ファーストタッチがすべてだったかなと思います」

 自画自賛したゴールだった。ストライカーがゴールを決めるうえで大事なポイントの1つが、パスを受けた際のファーストトラップ。いかにシュートを打ちやすいところにボールを置くかだが、工藤もそこを自らの課題としてきた。もともと、ユース出身とあって技術が高く、足が速いうえにドリブルも上手い選手だが、ゴール前の密集地でのプレーでは一層、メンタル面や経験も必要になってくる。それを練習で身に付けようと努力してきた。「ファーストタッチでどれだけ自分を有利に持っていけるかが、僕自身の課題。それが上手くいかないと、シュートまで持っていけない選手なんで。それがうまく行って流し込めた」。大一番でこれまでの成果が発揮された。

 負のジンクスを破り、今季まだ1度もない連敗を回避しようと奮闘しただけでなく、工藤にはもう一つのモチベーションがあった。「相手には、意識せざるをえない存在の大迫くんがいた。彼よりも活躍するというのは、意識していた部分があった。今回は僕が得点という形で勝ちましたけど、またお互い意識しあって、まあ、彼が僕を意識しているかはわからないけど、僕自身は意識して、また代表に呼ばれるように結果を残し続けたい」。

 報道陣から聞かれたわけでもないのに、同い年のストライカー、鹿島FW大迫勇也の名前を出した。大迫とは同い年のうえ、誕生日も工藤が5月6日に対し、大迫が同18日と近い。しかし、大迫は高校選手権で大活躍し、U-22日本代表の主力。自身はU-22代表には生き残れず、悔しい思いをしている。チームの白星と共に、世代を代表するライバルとの直接打対決で、代表入りをアピールしたい思いがあった。

「後半、厳しい戦いになりましたけど、一人少ない中で勝ちきれたことはチームとしては残り6試合に向けて弾みになると思う。また一つ、チームがレベルアップした気がします」と工藤。前節の大宮戦に敗れており、鹿島戦は優勝に向けた一つの山場と言われたが、それをクリアした。まだまだ厳しい戦いが続くが、成長著しい背番号「19」が歴史を作り続ける。

[写真]ゴールを決め投げキッスをする柏FW工藤

(取材・文 近藤安弘)

TOP