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[連載:川崎F・U-12世界一への道のり:最終回]『カワサキ』が5万人の前で得たもの

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 10月7日よりFIFA公認のU-12世界大会、「ダノンネーションズカップ2011」がスペインにて開催された。「ダノンネーションズカップ」は、2000年フランス大会より開催されているU-12世代の9人制世界大会。9月に横浜で行なわれた予選大会で優勝を果たした川崎U-12が日本代表として大会に出場した。川崎F・U-12は日本大会4連覇。2008年のフランス大会以降4大会連続で日本代表としての出場となった。

 3日間で8試合というハードスケジュールだったが、川崎F・U-12はたくましく戦い抜いた。川崎F・U-12は、グループステージを2勝2分けで勝ち抜いた。翌日、決勝トーナメント1回戦でタイ代表に0-1で敗れはしたものの、大会最終日の順位決定トーナメントでは強豪の韓国、アルゼンチン、ドイツを破り、9位の成績を収めた。また、大会ベストゴールキーパー賞には日本予選でも好セーブを見せた早坂勇希が選出された。

 今回の世界大会は、U-12世代の選手たちにとって時差と環境順化との戦いでもあった。高崎康嗣監督はこう語る。「例を一つ挙げれば、ヨーロッパでは夜食が21時からが普通、しかもまだ外は明るい。朝の練習からでも7時でも外はまだ少し暗い。そういった環境順化がまず選手たちにはしんどかったと思う。でも、こうしたことが世界を戦う上での今の『日本』のスタンダード。これから先の指導、そして選手個々の努力次第で、国際経験をますます積む選手が出てきてほしいし、そうしなければならない。そうした意味で、今回スペインで戦えた意味は大きかったと思います」

 「世界9位」、という肩書きよりも価値があると思う。一つ例を挙げれば川崎フロンターレU-12が手にしたのは、「舞台」だった。10月9日、レアル・マドリッドのホームスタジアムのサンチャゴ・ベルナベウで戦ったドイツとの一戦は、有料入場者数で5万人を越えた。12歳以下の「子どもたち」の試合を観るために、だ。サッカー文化が違う、と言えばそれまでだが、日本代表の「カワサキ」が見せたプレーは、目の肥えたスペイン人の足と心を動かしている。普通なら足が震えるような大観衆の前でプレーしドイツ相手に勝利を収めたことは、何物にも代え難い貴重な経験となったはずだ。

 10月16日Jリーグ第29節、川崎Fvs新潟の試合前に、高崎監督率いるU-12の選手たちが青黒で染まったサポーターたちの前で大会結果報告を行なった。堂々と、そして胸を張って。

 わずかひと月前の日本予選での表情とはまた、一人ひとり違う。「悔しい」。川崎F・U-12の選手はもちろん、横浜の予選大会、地域予選を含めで涙を流した何千人もの選手たちが今日今この時間にそう思っているはずだ。経験がまた一つ、日本サッカーにとっての大きな力になる。

[写真]順位決定戦のドイツ代表と記念写真

(取材・文 井上俊樹)

■ダノンネーションズカップ2011結果
※()カッコ内は得点者

<グループステージ>
10/7(金)
vsベルギー代表○2-0
(榎本大樹、高橋真)
vsウルグアイ代表○3-0
(高岸憲伸、小川真輝、池谷祐輔)
vsオランダ代表△0-0
vsチュニジア代表△0-0

<決勝トーナメント>
10/8(土)
vsタイ代表●0-1

<(9位~16位)順位決定トーナメント>
10/9(日)
vs韓国代表△0-0(PK2-0)
vsアルゼンチン代表○1-0
(高橋真)
vsドイツ代表○1-0
(金井満生)

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