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[高校選手権]主将戻るまで負けられない!藤枝明誠、魂の8強進出

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[1.3 全国高校選手権3回戦 藤枝明誠 1-0 岐阜工 駒沢]

 第88回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、初出場の藤枝明誠(静岡)と岐阜工(岐阜)との「東海決戦」はCB増田浩史(3年)の決勝ゴールにより、藤枝明誠が1-0で勝利。10月の全日本ユース選手権に続く8強入りを決めた藤枝明誠は5日の準々決勝で関大一(大阪)と対戦する。

 「(4-1で勝った)国見戦は80点をあげられたけど、きょうは15点。赤点ですね」。藤枝明誠・田村和彦監督の評価は非常に厳しかった。確かにこの試合の藤枝明誠は、これまで強豪を撃破してきた前線からのハイプレスで相手を敵陣に釘づけにするサッカーとは程遠い出来だった。

 今年のプリンスリーグ東海ではJクラブユース勢など並居る強豪相手に対し、ほぼ全ての試合で相手を大きく上回るシュートを放っていたが、この日は運動量が少なく、球際では強靭な相手に競り負けて後手に回る場面の連続。攻撃も狙いが曖昧で決定機を作り出すことができない。

 後半4分の先制点も崩したのではなくセットプレーから。右CKでチームメイトに自ら「俺、ニアにいく」と宣言した増田が、MF辻俊行(3年)のキックをドンピシャヘッドでゴールをへと叩き込んだ。全国高校総体全3試合無失点で今大会初戦も完封勝利を果たしていた岐阜工の名手・GK山田健太(3年)を破る一撃。だが、押し込まれる展開に変わりはなく、相手の徹底したロングボール攻勢にクリアするのがやっとの時間が続いた。

 単調な攻撃ながらもゴールの予感を漂わせていた岐阜工は後半25分からDF山崎貴雅、33分からはDF福川和宏(ともに3年)と身体能力の高いストッパーを最終ラインから前線へとポジションチェンジ。“パワープレー”をさらに強化した。だが藤枝明誠はU-18日本代表候補CB藤原賢土(3年)と増田の両CBが冷静に跳ね返していく。それでもつくられた危険な場面はGK甲斐透真(3年)が相手アタッカーとの激突を恐れない飛び出しとビッグセーブでゴールを死守した。約4分間のロスタイムも隙はなかった。
 試合後、笑顔の少なかった指揮官だったが「集中力を切らさなかったことは収穫」と勝ち切ったことを評価。初出場ながら「静岡代表としてベスト4は絶対のノルマ」と話すチームは最低ラインの目標に王手をかけた。

 藤枝明誠にはまだ負けられない理由がある。静岡県大会MVPで主将のMF小川哲生(3年)が県決勝で負った左足首負傷の影響で今大会はベンチにすら入れていない。代役で主将を務めている辻は「テツ(小川)がいないからいいサッカーをできないと言われたくない」と目標を語る一方で「試合前の円陣ではみんなが(勝ち上がって)テツを出してやろうと言っています」と明かす。
 小川主将は憧れのピッチを前にしながら水汲みなどの雑用を率先して行っている。その姿に増田は「(自分もケガで欠場したから分かるが)今、テツは苦しいと思う。何とか出してやりたい。テツができるまで何とか勝ちたいと思っている」。
 小川主将の負傷はまだ完治していないが、サッカーができるまでには回復している。あとは全国レベルの試合で遜色なくプレーできるかどうか。早ければ準々決勝でのベンチ入りも可能だが、時期早々と判断されればベンチ入り実現は準決勝まで先送りされる。それだけにチームは小川主将が復帰するまで勝ち続けるつもりだ。
 
 この日は押し込まれる展開も魂の守りで勝利をもぎ取った。チームとっての最低ライン・ベスト4まであと1勝。辻は「チームの歴史を変えるなら国立にいかないと何も変わらない。(国立へいったという財産を)後輩に残してあげないといけない」。5日の準々決勝、国立を目指す戦いはチームの将来のため、そして主将とともにプレーできる可能性を増やすための負けられない戦いでもある。

<写真>後半38分、岐阜工・名和が決定機を迎えるが藤枝明誠GK甲斐がビッグセーブ 
(取材・文 吉田太郎)

特設:高校サッカー選手権2009

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