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まったくブレない男。実践学園CB土方飛人は、人生初となる夢舞台の全国大会へ

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実践学園高を率いる“心の整え人”、キャプテンのDF土方飛人

[6.19 インターハイ東京都予選準決勝 駿台学園高 1-3 実践学園高]

 この2か月で様々な経験を味わったことで、以前から掲げ続けてきた目標との距離は、少し近づいたり、少し遠ざかったりしながら、確実にその輪郭をハッキリとしたものに変えつつある。「関東大会で味わったような悔しさを今度は跳ね返せるように、練習の中から集中して、みんなでレベルアップして、全国ベスト4を叶えられるようにしたいですね」。実践学園高を束ねる、キャプテンで、10番で、センターバック。DF土方飛人(3年=日野七生中出身)は自身初の全国大会に、大きな期待と覚悟を持って挑んでいく。

 東京の代表権を勝ち獲るための最終関門。インターハイ予選準決勝の駿台学園高戦。ラッキーなオウンゴールで先制したものの、後半10分に完璧なクロスから、完璧なへディングを叩き込まれ、スコアを振り出しに戻されてしまう。少し嫌な流れが漂い掛けるチームに、キャプテンは冷静な声を掛け続けていく。

「自分としては焦らずに、『1-1になっただけだ』という考え方で、追い付かれたんですけど、今までの経験上もそこを跳ね返してきた試合もあったので、『冷静にやろう』と」。

 28分。1年生の頃にはディフェンスラインでコンビを組んでいた、MF入江友規(3年)が素晴らしいゴールをゲット。「1年の時は3バックで、自分が右で、アイツがセンターとかやっていました。センターバックの時もヘディングが強いので、安定感はあったんですけど、今となっては前線の方がキレもあるし、シュート力もあるので、たぶんサイドハーフの方がいいと思います(笑)」。土方は選手評にもキレがある。

 40分。メンバー唯一の2年生、FW牧山翔汰(2年)がゴラッソを沈めてみせる。「2年生のウタ(牧山の愛称)が決めてくれたことで、他の2年生もやる気を起こしてくれますし、アイツも練習の中でも良いシュートを決めていたりしたので、それはチーム全体にとっても凄く大きいなと思います」。チームのことを考え、それを良い形にみんなへ還元できるのも、この男の大きな力だ。

 実際に深町公一監督は、この日の準決勝へと向かうチームに雰囲気の緩みを感じ、土方を個別に呼び出して、グループを引き締めるように促したという。そして、その効果はてきめんに表れる。

「選手権であれば、この試合はいわゆる“決勝”じゃないですか。その前の雰囲気ではないよねという所で、土方にチームを締める所を任せて、アドバイスをしました。高校生なのでそれが良いプレーに繋がるかどうかは別としても、とりあえず今日のキックオフの時間には、みんなが心と身体の良い準備はできたと思います。彼がこの2、3日うまくコントロールしてくれていたかなと。彼がいないとなかなかこのチームは厳しいかなと思いますね。1年の時からこの学年の責任者をずっとやっていましたし、まったくブレない男なので、良い意味で変わらずに1年からここまで来ているかなと」。指揮官の言葉にも、絶対的な信頼が滲む。

 日野市立七生中のサッカー部出身。チームでも数少ない中体連出身者だが、見据える自分の立ち位置は十分に高い所へ置いている。「さっきもたまたま都の中体連選抜で一緒にやっていたヤツに会って、『中体連出身では、今オマエが一番凄いかもしれない』ってサラッと言われて、それは嬉しかったんですけど、上には上がいるというか、やっぱり全国基準で戦える選手になりたいので、自分的にはまだまだ全然ダメだと思っていますね。今日の競り合いも100パーセント勝ち切れたかと言うと、そうとも言えないので、もっとセンターバックとしてのハッキリとした強さを求めていきたいです」。関東大会で前橋育英高(群馬)と対戦したことで知った、全国レベルの基準を携えて、さらなる成長を自身に誓う。

「小学生の頃から全国大会に行けるとは思ってもみなかったですし、中学生の頃も都大会止まりだったので、正直夢のような感じですね。『本当に全国に出られるのか?』というのは、自分でも感じています」。

 憧れ続けてきた夢の舞台。全国大会でも、背伸びせず、自分にできることを、100パーセントで発揮するだけだ。実践学園が戦うフィールドにはいつだって、キャプテンで、10番で、センターバックの土方が、大きな声を張り上げて、チームメイトを最後方から見守っている。

(取材・文 土屋雅史)
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