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湘南工科大附が87年以来8度目、現校名で初のインハイへ!ブレずに「神奈川県で一番ボールを動かして…」目指して壁破る

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後半3分、湘南工科大附高がMF三觜真生の決勝点を喜ぶ

[6.18 インターハイ神奈川県予選準決勝 桐蔭学園高 1-2 湘南工科大附高]

 湘南工大附が現校名で初の全国へ! 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技神奈川県予選は18日に準決勝を行った。第1試合は、湘南工科大附高桐蔭学園高に2-1で逆転勝ち。相模工科大附高時代の1987年大会以来、8回目のインターハイ出場を決めた。

 相模工大附時代に全国高校選手権3位2回、インターハイ3位1回。元日本代表MF奥寺康彦氏や元日本代表FW福田正博氏をOBに持つ伝統校が、90年の校名変更後、初となる全国切符を勝ち取った。

 室井雅志監督は、「こういうベスト4に入っていれば、勝つ時は勝つし、負ける時は負けるだろうという気持ちでやっていた」と振り返る。全国からは遠ざかっていたが、神奈川上位を維持すること、そしてブレずにボールを繋いで崩すスタイルにチャレンジ。指揮官が「(監督就任後、)代表決定で5回目になるのかな」という大一番をついに突破し、全国切符を獲得した。

 この日、湘南工大附は大黒柱のCB三浦翔遼人主将(3年)がコンディション不良で欠場するアクシデント。4-1-4-1システムのGKが岩崎翔(3年)、右SB高橋陽翔(3年)、CB森田羚音(2年)、CB小川源生(3年)、ゲーム主将の左SB伊藤大輔(3年)、1ボランチが小島大和(3年)でインサイドに村岡遊(3年)と三觜真生(3年)、右SH大木啓汰(3年)、左SH中山陽輝(2年)、1トップを岩崎由磨(3年)が務めた。

 一方、桐蔭学園は全国制覇した11年大会以来となるインターハイまであと1勝。4-4-2システムのGKが入江倫平(3年)、右SB三須友喜(3年)、CB関悠成(3年)、主将のCB飯島大地(3年)、左SB安藤優志(3年)、ダブルボランチが中村壮太(3年)と山本祐太郎(2年)、右SH菅沼仁徳(3年)、左SH阿部大輝(3年)、そして2トップは中本竣介(3年)と山形真之(3年)がコンビを組んだ。

 ともに緊張からか落ち着かなかった立ち上がり。その中で徐々に狙いとするプレッシングやボールを動かす部分を表現した湘南工大附がリズムを掴む。同じくボールを動かそうとする桐蔭学園よりも止める・蹴るの質が高く、優勢に試合を進める要因にしていた。

 3分にこぼれ球を大木が頭で押し込んだシーンはオフサイド。だが、その後も室井監督が「スペースを見つけるのがチームで一番上手くて、彼のパスはこれもチームで一番だと思うんですよね」と評価する小島が、正確なビルドアップに加えて巧みにマークを剥がして前進したり、虚を突くパスを狙ったりするなど存在感を放つ。

 対する桐蔭学園はスピーディーなパスワークから、いずれも強度の高い中本、山形の2トップを活用した攻撃。左サイドでは阿部が迫力のあるドリブルを見せていた。そして18分、右サイドからのスローインで中本が競ると、こぼれ球に反応した山形が右足でゴールへ流し込んだ。

 徐々に流れを掴んでいた中で生まれた先制ゴール。だが、湘南工大附は三浦不在で一際声を出していた伊藤が果敢な仕掛けでCKを獲得する。この左CKを中山が右足で蹴り込むと、ファーサイドの小川がDFの上から頭で叩く。GKが反応したものの、ボールはゴールラインを越え、1-1となった。

 追い付いた湘南工大附は小島、村岡、三觜の3人を軸に、選手間の繋がりを意識しながらビルドアップ。リズム良くボールを動かしていく。対する桐蔭学園はポゼッションで対抗しながら強みの強度を発揮。競り合いでマイボールに変える回数を増やすと、37分には高橋の右クロスから中本がヘディングシュートを放った。

 拮抗した戦いは1-1のまま後半へ突入。湘南工大附がそのファーストチャンスをものにする。3分、右ハイサイドへボールを運び、岩崎由がPAへ切れ込む。そして、何とか残したボールを三觜が右足アウトサイドで決めて逆転した。

 湘南工大附は5分に大木とMF成田梨甫(1年)をスイッチ。一方、後半開始から菅沼とMF谷琉真(2年)を入れ替えていた桐蔭学園は、15分にも中本とFW齋藤快叶(2年)を交代する。湘南工大附の勝ち越し後は膠着状態が続いたが、試合の流れは後半半ば頃から桐蔭学園へと傾いて行く。

 ボールを動かすところと割り切るところが曖昧になってしまった湘南工大附に対し、桐蔭学園がボールを保持する時間を増加。21分のMF大木清之介(1年)とFW田村陸人(1年)の同時投入後は、特に左SB安藤が存在感を放つ。25分にカットインシュートを狙うと、28分にはクロスバー直撃のミドルシュート。また縦へのドリブル突破で反撃の中心になっていた。

 湘南工大附は中山が幾度か高い位置でボールを収め、速攻などからフィニッシュまで持ち込むシーンもあった。だが、その回数を増やせず、我慢の展開。それでも、室井監督が「三浦以外の3年生がいつも以上に声掛けて、いつも三浦がやっているところを1.2倍ずつ普段よりも声を掛けてやるべきところを徹底しようと」求めた通りに声を掛け合いながら試合を進める。

 湘南工大附は28分にFW橋山翔太(3年)、31分には右SB前田蓮(3年)を送り出し、桐蔭学園も29分にMF高橋保好(1年)を加えて1点を目指す。桐蔭学園は谷の左足シュートに加え、飯島がターンからPAへ切れ込むなど相手にプレッシャーを掛ける。そして、飯島を前線へ上げた終盤は敵陣で戦う時間帯を増やした。

 だが、CB大石歩武(1年)を投入した湘南工大附は、CB小川がヘッドやPAへ入って来るボールへの強さを発揮。またGK岩崎翔が安定した守備を続けるなど、大きな隙を見せない。桐蔭学園の八城修監督は「技術とか判断に自信を持っていないからできない。本当に力不足。相手が疲れてきたらできるかもしれないけれど、プレッシャーの中でできるだけの技術、判断がまだない」と厳しく指摘。そして、2-1のまま試合終了の瞬間を迎えた湘南工大附の選手たちが歓喜に湧いた。

 湘南工大附の室井監督は後半の内容の悔しさが、歴史を変える勝利の喜びを上回っていたようだ。「プレッシャーが掛かる舞台だからこそやれる。そのために練習している。そっちが悔しくて……。もっと自信持って動かせるだけのトレーニングをしたい。もっともっと追求して、神奈川県で一番ボールを動かしてサッカーできるチームになりたい」と力を込めた。

 小川は、全国大会へ向けて「パスの精度だったり、声を掛けるところとか、湘南工科はこういうサッカーをするんだぞと全国のサッカーチームに見せればなと思います」と意気込んだ。選手たちは相模工大附時代の活躍を知らない世代。これから「湘南工大附の歴史」を一つ一つ築いていく考えだ。激戦区・神奈川の代表切符を掴んだ湘南工大附が、現校名で初のインターハイでその名を広める。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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