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A代表初選出の大体大MF田中駿汰…自身が語る関西大学MVP、日本代表への成長曲線

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A代表まで登り詰めた大阪体育大MF田中駿汰(4年=履正社高/札幌内定)

 12月7日に行われた2019年度関西学生サッカーアウォーズで第97回関西学生サッカーリーグの各賞が発表となり、年間最優秀賞(関西サッカー協会会長杯)に大阪体育大MF田中駿汰(4年=履正社高/札幌内定)が選ばれた。

 田中は「この賞をもらえるようなことは何もしていない」と謙虚に語ったが、「数字で結果を残している選手もいる中、リーグでやってきたことを評価してもらえたのはうれしい」と喜びも口にする。

「自分の良さは波のなさ。練習で取り組んできた守備力とビルドアップの部分が評価されたと思う」とMVP受賞について分析する田中だが、高校時代は展開力こそ武器としていたが、守備の意識には乏しい選手だった。しかし、堅い守りをベースとする大阪体育大に進学すると、試合に出るためにはディフェンスが必須と考え、弱点に向き合った。全体練習後に菊池流帆(現・山口)と1対1の練習に励み、CBでも起用されたことで対人の強さを身につけ、試合でもその力を発揮。大学サッカーを代表する選手となった。

 着実に歩みを進めてきた田中を、大体大・松尾元太監督はU-22日本代表として招集された6月のトゥーロン国際大会を経て、さらに成長したと評する。大学生の中では感じられないプレッシャーを世界で味わい、コンマ何秒の予備動作や準備の部分という質に気付き、こだわりを持ってプレーできるようになった。また、U-22でともにプレーした選手たちからも多くの刺激を受けたと田中自身も話す。特に、田中碧(川崎F)については「碧は日本でトップクラスのボランチ。同じポジションでも碧のほうが上だし、いろんな面でうまさ、強さがある。そこから学びたい」と意欲を見せる。

 U-22で感じた「プロの選手は勝負どころの厳しさ、懸けている思いが違う。目の前のワンプレーへの思いを大学でも出せるように伝えたい」という決意を抱いて自らを高めつつ、積極的に周囲とコミュニケーションをとる姿勢は、大学のチームメイトにも響いている。「大体大では、プレー面で見本になる。代表で感じたことを、ここまでの練習の中で伝えてくることができた」と話す田中の姿勢は、後輩たちにとってかけがえのない手本となっており、DF林尚輝(3年=立正大淞南高)も「近くにいて、学べるのはあと少ししかない。少しでも吸収したい」とその姿を追う。

 唯一の大学生として日本代表にも選出され、EAFF E-1選手権2019に臨むが、「このタイミングというのには驚いたけど、やってきたことが評価されたという手ごたえがある」と浮ついた気持ちはない。松尾監督も「A代表でもスタメンで出場するべき素材。招集は驚かないし、胸をはって自分の力を発揮してほしい」と、自信をもって韓国へと送り出す。

 だが、「このタイミングだったので、大学で積み上げてきた集大成としてのインカレに出してやりたかったという気持ちはある」と松尾監督も漏らすように、大体大がインカレ準決勝まで勝ち進まなければ、田中の大学サッカーは終わりとなってしまう。それでも、「みんなを信じています」と力強く話す田中の言葉に迷いはない。それぞれの場所で戦い抜くことが、互いへのエールになると信じている。

(取材・文 蟹江恭代)

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