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瀬沼渾身の初ゴール!逆転勝ちした筑波の強さは本物か(筑波大vs拓殖大)

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[5.19 関東大学1部第8節 筑波大 2-1 拓殖大 西が丘]

 筑波大が終盤2発で逆転勝利。第84回関東大学サッカーリーグ1部第8節の筑波大対拓殖大が19日に行われ、1点ビハインドを追っていた筑波大が後半34分からの2得点で逆転し、2-1で勝った。筑波大は前節までの6位から5位へ浮上した。

 以前ならばズルズルと勝ち点3を失っていたかもしれない。前半39分に拓大FW三村真(4年=山陽高)に自ら蹴った右CKのこぼれ弾を拾われて、鮮烈な左足シュートを決められていた筑波大。ハイレベルな技術を持つ選手を先発に並べるチームは「ミスがなければボールを失うことはない」と、自陣から徹底的につなぐスタイルをこの日も貫く。ただ、雨でスリッピーなグラウンドではMF八反田康平(3年=鹿児島中央高)やMF森谷賢太郎(4年=横浜FMユース)ら一部選手を除くと、普段よりもスピードの上がったパスに受け手のトラップが乱れるなど苦しんでいた。

 前節早稲田大に競り勝って1部初勝利を飾っている拓大はわずかなミスを見逃さず、前方へ蹴りだすと一瞬でのギアチェンジから一気に加速する三村とFW目黒祥晃(4年=利府高)の2トップを中心に高速カウンターを繰り出した。
 筑波大はボールこそ保持しているものの、自陣で堅い守りを敷く相手を崩せず敗れる試合が、今年に限らず近年何度もあった。今季は元日本代表MF風間八宏監督就任3年目で過去最高のタレントが揃う布陣となったが、開幕4試合で3敗を喫するなどリーグ9位に終わった昨年同様「上手いけど強くはなかった」。0-1のまま後半30分を迎えたこの日もいわば“負けパターン”。ただ、レベルの高い11人がミスを犯さずボールを運び、前節慶應義塾大戦では相手ゴールに5発を叩き込んで“覚醒の兆し”を見せていたイレブンは、苦しみながらも終盤に試合をひっくり返す。

 圧巻のボールコントロールを見せる八反田や森谷が拓大DFの間を絶妙なボディコントロールですり抜けていく。そしてPAで張るエースMF小澤司(4年=桐蔭学園高)へボールが通ると、ゴールへの期待は一層高まった。31分に八反田からの折り返しを受けた全日本大学選抜FW瀬沼優司(2年=桐光学園高)の左足シュートは拓大GK奥津翔夢(4年=麻布大淵野辺高)のビッグセーブに阻まれたが34分、小澤の左CKのこぼれ球を拾った森谷が右足を振りぬくと、ボールは集中した守備を貫いてきた拓大のゴール左隅へと吸い込まれた。

 “覚醒の兆し”を見せる筑波大は同点だけでは終わらない。劇的なV弾を決めたのはスランプに苦しんできた“大砲”瀬沼だった。43分、右サイドでDF長沼恭平(4年=札幌U-18)からのパスを受けた森谷がドリブルで切れ込みクロス。相手DFに当たったボールはコースが変わったが、抜群の身体能力を活かして浮き球をコントロールした瀬沼が「無我夢中で反応して思い切り蹴った」と渾身の右足シュートでゴールを破る。これまでの試合、再三の決定機を演出してもらいながらノーゴールが続き「FWとして納得のできるプレーではなかった。苦しかった」という瀬沼の悩みを知るイレブンは、勝利を決定付ける瀬沼の復活ゴールに喜びを大爆発させた。
 
 風間監督は「もうちょっと出来ると思ったけど、90分間変わらなかった。もっと止める技術を上げないとダメ」とチームに対して厳しかったが、瀬沼の初ゴールと勝ち点3をもぎ取ったことについては評価。昨年はリードされて迎えた終盤に逆転し勝ったケースは1度もなかったが、この日それを断ち切った。
 過去2年間「タイトル」という言葉を口にしなかった指揮官が栄冠への期待を寄せる今季は、選手たちも「Jとやっても真っ向勝負できる」手ごたえがある。その「強さ」が慶大戦での5発にこの日の逆転勝ちと結果にもつながってきた。森谷は「今までの筑波は上手いけど強くないという印象だったと思う。でも慶應に5-1で勝って、きょうも『勝てない』という雰囲気を振り払うことができた。自信になった」。果たして“強い筑波”は本物か? 上位争いに踏みとどまったリーグ戦前期残り3試合と、間もなく始まる総理大臣杯全日本大学トーナメント予選でまずはその真価が問われる。

(取材・文 吉田太郎)

大学サッカー特設:関東1部

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