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[関東]強く魅力的なチームへ進化する筑波大、首位攻防戦制す

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[9・17 関東大学リーグ1部第11節 慶應義塾大1-2筑波大 西が丘]
  
 JR東日本カップ2011第85回関東大学リーグ戦1部は17日、東京・西が丘サッカー場で第11節第2日目の2試合を行った。第2試合では首位の筑波大がFW曽我敬紀(3年=横浜FMユース)の2ゴールにより、2-1で3位・慶應義塾大に逆転勝ち。暫定首位に立った。

 就任4年目の元日本代表MF風間八宏監督が「悪い試合でも勝てるようになっている」と評する筑波大が6勝3分2敗の暫定首位で前期を折り返した。前半は慶大の1年生SB保田隆介(1年=横浜FMユース)の右クロスをMF森田達見(3年=川崎F U-18)に頭で合わされて1点ビハインド。清水加入内定の全日本大学選抜MF河井陽介(4年=藤枝東高)が「前半はいい戦いが出来ていた。最低勝ち点1取らないといけない試合だった」と振り返った慶大にリードを許す展開だった。風間監督は頭の中での選択肢が少なく、またミスが増加して攻撃のままならないチームに対してハーフタイムにゲキ。「ミスで試合を壊している。(ピッチに立っている選手全員が)同じレベルに入ってこないといけない。だから曽我と谷口にはハーフタイムに『生まれ変われ』と言いました」。

 技術的なミスはどの選手にもまだ必ずある。ただ練習で出来ていた、試合で表現できていたプレーを取り戻せなくなった選手がひとり、ふたりと出て崩れると周囲に“伝染”してしまう。この日の前半、筑波大はその事態に陥っていた。全日本大学選抜でG大阪と清水が争奪戦を繰り広げているMF八反田康平(4年=鹿児島中央高)は「(出来る、出来ていたプレーが表現出来なくなると)監督からは『自分のプレー、自分の判断を戻せ』とアドバイスされます。成功体験を知っている選手に対して『まだ今はやっていない。しっかりやれ』と」と普段からの独特の言葉について説明していたが、風間監督は自分たちで崩れて隙を与えてしまっていたチームに指摘。これで頭の中を切り替えて自らを取り戻した曽我が後半、抜群のスピードを活かして個人で相手ディフェンスに穴を開け、大型ボランチ谷口彰悟(2年=大津高)が中盤で攻守に存在感を示す。相手の付け入る隙を消したチームは試合をひっくり返した。

 まずは後半10分、左サイドでMF玉城峻吾(2年=三菱養和SCユース)からのパスを受けた曽我がゴールライン際を持ち味のスピードで打開。ほとんど角度のない位置から選択したのはパスではなくシュートだった。左足でそのままゴールを破り、同点に追いつくと、14分には相手SBのミスパスをインターセプトして独走。GKとの1対1を制して右足で決勝ゴールを流し込んだ。
 
「相手を外す」「CBを攻撃する」「(プレー中)身体が休んでいても常に考えておくこと」。筑波大の選手は風間監督独特の言葉、練習方法の中で自分自身が戦う術を見出していく。就任当初は戦う術を発見し、表現できている選手は2、3人だったというが、年々その数は増えてきた。以前は大量得点を奪いながら、技術ミスや判断力の欠如によってそれ以上に失点してしまうような大味な試合もあったが、その数は減少。「相手を圧倒して勝つ。どの大学も真似できない崩しが出来る」と言い切る八反田を筆頭にMF上村岬(2年=磐田ユース)、玉城らの技巧、FW赤崎秀平(2年=佐賀東高)やFW瀬沼優司(3年=桐光学園高)の爆発的な得点力ももちろん魅力だが、加えて入学当初から風間監督の下でプレーしている選手たちが最上級生となった今年は安定した、勝負強いチームにもなりつつある。この日も左SB山越享太郎(3年=東京Vユース)がその技術で展開を落ち着かせ、CB車屋紳太郎(1年=大津高)のオーバーラップやSB石神幸征(4年=藤枝東高)のハードマークなどそれぞれの持ち味と勝負強さを発揮して勝利した。

 07年U-17W杯を経験している八反田が「技術の向上は中学生までと言うけれどそんなことはない。サッカー人生で一番成長できている」と自信を見せる毎日を送っているという筑波大。積み上げられてきた技術、判断力で成長する選手たちは、04年以来の関東タイトル獲得も果たす。

(取材・文 吉田太郎)

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