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城西国際大、終盤に2得点と猛追も…自動昇格が消滅。最終戦で入れ替え戦の可能性がある3位を目指す!

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[10.30 千葉県大学リーグ2部秋期第8節 東京理科大3-2城西国際大 千葉商科大G]

 千葉県大学リーグ2部秋期の第8節が各地で行われ、昨年の南アフリカW杯で日本代表のチームコーディネーターを務めた小山哲司監督が率いる4位の城西国際大は、2位の東京理科大と対戦し2-3で敗れた。0-3から終盤に猛烈な追い上げを見せて1点差に迫ったが、勝利にはあと一歩、届かなかった。

 この敗戦で1部に自動昇格できる2位以内が消滅した。ただ、千葉県1部を制した明海大が第44回関東大学サッカー大会を制して関東大学リーグ2部に昇格した場合、2部の3位チームは1部の6位チームと入れ替え戦を行う。城西国際大は最終戦の千葉商科大に勝利すれば3位となり、入れ替え戦参加の権利が得られる。

 1部に自動昇格できる2位以内に向け、勝たなければいけない2位・東京理科大戦。城西国際大イレブンは強い気持ちで大一番に挑んだ。システムは4-4-2でGKは海上久斗(2年=保善高)、DFラインは右から坂本駿(2年=茂原北陵高)、長野雄三(1年=明聖高)、主将の鈴木晃大(4年=水戸葵陵高)、田邉一晃(2年=千葉北高)。ダブルボランチは大貫健晴(4年=常磐大学高)と松本圭佑(1年=敬愛学園高)が組み、右MFは廣瀬走流(2年=明秀学園日立高)、左MFはMF及川雅登(1年=光星学院高)が入った。2トップは湯本直矢(2年=東京都市大学塩尻高)と鈴木翔伍(4年=水戸葵陵高)が組んだ。

 勝利への強い気持ちがいきなりプレーに現れる。開始7分、城西国際大がチャンスを作った。松本のパスを受けた廣瀬がPA右付近から右足でシュート。GKにセーブされたが、積極的な姿勢を見せた。だが、地力に勝る東京理科大が少しずつ主導権を握り始める。それでも、城西国際大イレブンはチーム一丸で守り、何とか失点を防いでいた。

 相手のキーマンは背番号10で、ここを封じるため、この日は本来はボランチの坂本が右SBに抜擢された。「夏のキャンプでSBをやっていた。それで、監督からやってくれないかと言われた。体を張ってパスコースを消すとか、守備が得意」という坂本は、押し込まれながらも何とか耐えてた。

 守備陣の頑張りに応えるべく、カウンターから何度かチャンスを作った。前半14分には松本のパスに背番号10の鈴木が抜け出しGKと1対1になった。抜きにかかったが、交わしきれずに決めることは出来なかった。相手に押し込まれ、苦しい時間が続いたが、鈴木翔と湯本の2トップに集めて何とか打開を図ろうとした。

 しかし前半19分、一瞬の隙をつかれて先制点を許した。城西国際大にとって、自陣近い右サイドで与えたスローイン。そこから渡ったボールでミドルシュートを決められてしまった。これには経験が少ない1、2年生が多いチームの脆さが出た。この日の試合会場のピッチは通常より一回り小さく、いつもと感覚が違った。

「ピッチの横幅が通常のピッチより狭いというのもあって、相手のシュートが違うタイミングできた。戸惑ったところがある」と坂本は明かした。主将の鈴木晃も「監督にも言われていたが、ここのグラウンドはピッチが小さいので、自分たちが考えている以上にシュートエリアが広かった。普通のピッチだと、シュートエリアにならないゾーンでもシュートゾーンになった」という。

 ピッチの狭さは、あらゆる面で影響した。「監督から言われてわかっていたが、いざゲームが始まったら、自分たちのサッカーできなかった。ピッチが少し狭いので、プレッシャーがなくてもスペースがないと感じ、慌てて蹴ってしまった」と鈴木晃は言う。もちろん、条件は東京理科大も同じだが、相手は1部経験チームと言わば格上。チャレンジャーの立場の城西国際大のほうに、より悪影響となった。

 不用意な失点で焦りが生まれ、攻守全体で少しバランスを崩してしまった。その後、城西国際大はカウンターでゴールを目指すが、なかなかうまくいかない。前半42分にはDFラインの背後にロングボールを入れられ、処理がうまくいかずに失点。結局、前半を0-2で折り返すことになった。

「ここで負けたら、2位以内がなくなるのはわかっていた。意地でも逆転しないといけないと思っていた。失点に気をつけながらも、3点入れないといけない状況だったので、チームでリスクを背負って攻めに行こうと話した」

 ハーフタイム。主将の鈴木晃は仲間に激を飛ばした。小山監督は「もう少し、中盤、ボランチが高い地位でFWのサポートをしようと伝えました。あと、右サイドにノブを入れたので、ノブに当てて、周りがサポートしようと。それと、クロスボールに対して2、3人が中にはいって行こうと話しました。ある程度のリスクを冒さないといけない状態でしたからね」。

 後半開始から、まだ左太もも裏の肉離れが完治していない田中を右MFで投入。城西国際大は勝負に出た。田中は「先週の試合の後に悪化して、水曜日まで練習出が来なかった。木曜日に復帰したばかりだけど調子が良くて、試合ができた。この日の試合は4年間一緒にやっていた同期のメンバーの卒業生が応援に来てくれた。自分は薬学部で5年生ということで、まだプレーできるんですが、同期や先輩の悔しい思いを知っているので、プレーで気持ちを伝えようと思った」。

 そんな田中に引っ張られる形で、城西国際大イレブンは失点覚悟で攻勢に出た。開始5分、湯本のパスから鈴木翔がシュート。決めきれなかったが、一瞬の隙を突いていく。田中も右サイドでスピードを活かして打開を狙った。後半も地力で上回る東京理科大のペースで進んだが、少ないチャンスをモノにしようと、城西国際大イレブンは好機を伺う。

 後半9分には鈴木翔がポストプレーからPA内左に走り込んだ及川に通したが、これは惜しくもオフサイドになった。同15分にはGK海上のパントキックが左サイドの及川につながり、最後はPA内左から湯本がシュート。これはGKにセーブされたが、攻撃に少しずつリズムが生まれていた。

 しかし、後半25分、再び痛い失点を喫した。スローインの流れから持ち込まれ、45度の角度からシュートを打たれて0-3とされてしまった。1部自動昇格が大きく遠のく3失点目。ここで小山監督が動いた。CBで主将の鈴木晃を前線に上げ、パワプレーで狙う作戦を敢行した。

 ここから、城西国際大が粘りを見せる。ジリジリと相手を苦しめ、後半37分に1点を返すことに成功した。左サイドを攻略し、最後は及川のクロスに、田中が飛び込んでヘディングシュート。鈴木晃が中央で潰れる形でゴールが生まれた。まさに小山監督の采配が当たった形だ。

 アシストをした及川は「もう、キャプテン(鈴木晃)が前線に上がったので、そこを目掛けて放り込んだら、入ったという形です。誰を目掛けてとかではないです。とにかく、ゴールになれと思って入れました。低めの良いボール? 練習してたので、その成果が出たと思います」。指揮官の期待に応えた田中は「監督から、サイド攻撃の時は、どんどん中に入っていけと言われていた。自分は良いボールがきたので、入れるだけでした。来るコースは読んでいました。いいところに来て良かった」。

 終了の笛がなるまで、諦めない。その後も城西国際大イレブンは走り続けた。守る時間が長かったが、体を張り、歯を食いしばってボールを追いかけた。そして後半45分、さらに1点を返した。左サイドで得たFKのチャンス。キッカーは湯本が務めた。「狙いはキャプテンの鈴木さんと翔吾さん(10番)だった。とにかく、入ればいいなと思って蹴った。それしか考えなかった」。

 思いが通じる。魂の込められたボールは、背番号10の鈴木翔の頭にピタリとあい、ゴールネットに突き刺さった。ここでも鈴木晃をおとりに、背後からうまく飛び込んで決めた。鈴木翔は「FKからでしたけど、湯本から良いボールが来た。あと、晃大が相手DFを潰してくれたので、フリーでいけた」と振り返った。

 ここ2試合、強敵の強固な守備ラインを崩せずにいたエースだが、ようやく結果を出した。ハーフタイムには小山監督から「4点取ってこい!」と言われ、「3点決められたら、4点取り返してやろうと思っていた」と燃えていた背番号10。諦めない姿勢が土壇場で2-3とするゴールに繋がった。

 試合はその直後に終了のホイッスルが鳴り、城西国際大は残念ながら2-3で敗戦となった。2位以内は消滅したが、まだ3位以内に入れば、1部の明海大の結果次第とはいえ、1部への入れ替え戦に参戦できるチャンスはある。選手は試合後、涙を流す者もいたが、すぐに11月6日の千葉商科大戦に切り替えた。勝てば、3位となる最後の大一番だ。

 主将の鈴木晃は「可能性は0ではない。自分たちは、そこに懸けるしかない。自分たちは自力昇格はなくなったけど、しっかりと3位になるしかない。明海大が関東2部に昇格することを信じて準備したい」と言葉に力を込めた。怪我で後半からの出場だった田中も「来週は1試合いけると思うので、ゴールを決めたい。いままで怪我で休んだ分、プレーでみせたい」と強い決意を語った。

「おい、まだ終わりじゃないぞ! 3位になれば入れ替え戦がある。この1週間、しっかり準備しよう。3位になって、入れ替え戦を待とう!」。小山監督は試合後のミーティングで選手を鼓舞した。他力だが、最終戦に勝って3位になれば、入れ替え戦に回れる可能性がある。残り1試合。城西国際大イレブンは、気持ちを切らさずに万全の準備する。

[写真]悔しい表情の城西国際大イレブン。しかしすぐさま、最終戦の勝利に向けて気持ちを切り替えた

(取材・文 近藤安弘)

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