beacon

右足小指骨折から復活の岩渕が今季初ゴール。「ロンドンは目指さないといけない場所」

このエントリーをはてなブックマークに追加
[4.22 なでしこ第2節 日テレ3-0AS狭山 駒沢]

 鮮やかな、そして、類まれなるポテンシャルをあらためて感じさせる復活劇だった。なでしこリーグ第2節。日テレ・ベレーザとAS狭山FCの試合は駒沢オリンピック公園陸上競技場で行われ、日テレが岩渕真奈のゴールなどでAS狭山FCを3-0で下し、開幕2連勝を飾った。

 狭山の固い守備に苦しみ、0-0のまま進行していた前半45分だった。このままハーフタイムに入ろうかというそのとき、日本の女子サッカー界が誇るタレントが実力を示した。小林弥生のスルーパスに合わせ、155センチメートルの小さな体がDFラインの裏へと抜け出した。

「今日の相手はラインが高かったので裏を狙っていた。弥生さんからいいボールが来たので、決めるだけだった」

岩渕は笑みを浮かべた。

 不安をぬぐい去るゴールだった。昨年から痛みを感じていた右足小指の疲労骨折が1月に判明し、同13日に手術した。既にロンドン五輪イヤーに入ってからの手術で、診断は全治3か月。五輪本番を目指すうえで、厳しいメンバー争いを乗り越えるためにはギリギリのタイミングだったが、岩渕自身は「ロンドンを目指す」という強い決意で手術を受けた。

 とはいえ復帰までの道のりは決して平坦ではなかった。リハビリを経て3月最終週にチームに合流してからは、手術で患部に埋め込んだボルトがなじむ際に起きる激痛に悩まされ、練習を途中で切り上げざるを得ない日もあった。

 「ああ見えて責任感が強い」と岩渕の性格を表する野田朱美監督は、「今季はチームの副キャプテンに任命したが、練習ができないということで体よりも精神的に大変だったと思う」とねぎらい、「これで完全復活と言っていいでしょう」と目を細めた。

「ゴールを決めたのはうれしいけど、先週、レッズ(浦和レディース)が5-0で勝った相手に3-0なのでまだまだです。自分もチャンスがあったのであと3点は取りたかった」

 岩渕がそう話す通り、最大の持ち味であるキレの部分は、やはりまだもの足りない。本調子になるにはもう少し時間がかかりそうだ。だが、ロンドン五輪を見据える目には輝きと強さがあふれている。

「ロンドンは(行きたいというより)どちらかというと、行かないとまずい。目指さないといけない場所。その思いは変わりません」

 ロンドン五輪の代表枠はW杯より3人少ない18人。激化するメンバー争いに割って入るには、まずはなでしこリーグでの活躍が必要だ。

「このところ代表の試合に行っていないので出遅れているということは分かっている。今日のゴールは少しはプラスになったかな」

 以前はどこかはかなげだった取材対応の声が確実に大きくなっている岩渕。豊かな才能を持つ19歳がさらに進化して五輪に臨むことになれば、なでしこジャパンは金メダルへ向けて大きな武器を手にすることになる。

(取材・文 矢内由美子)

▼関連リンク
なでしこリーグ2012特集ページ

TOP