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16年ぶりにW杯に帰ってきたマラドーナ、試合中も試合後も"独壇場"

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[6.12 W杯グループリーグB組 アルゼンチン1-0ナイジェリア エリスパーク]

 ドーピング違反により大会途中で追放された94年のアメリカ大会から16年。ディエゴ・マラドーナがW杯の舞台に帰ってきた。当時よりもさらにお腹はぽっこりと突き出し、口元にはたっぷりとひげを伸ばした姿。それでも、マラドーナはやはりマラドーナだった。

 ピッチ上とは別の“もう1つの戦い”。ベンチ前のテクニカルエリアをうろうろと歩き続け、お構いなしにタッチライン際まで飛び出して選手に指示を送るマラドーナ監督は何度となく第4の審判員から注意を受けた。前半36分、ナイジェリアの選手が痛んでいたためアルゼンチンがボールを外に出した場面では、ナイジェリアの選手のボールの返し方が気に食わなかったのか、身振り手振りで第4の審判員に抗議。選手同様、マラドーナ監督も戦っていた。

 試合後、リンゴを手に持って記者会見場に現れたアルゼンチンの英雄は「ナイジェリアのGKにおめでとうと言いたい。とても攻撃的で、もっと点を取れたと思うが、これもサッカーだ。初戦に勝って大会を始めることができてよかった」と話し、リンゴをかじった。

 FWリオネル・メッシ、FWカルロス・テベス、FWゴンサロ・イグアインを同時起用した超攻撃的布陣はチャンスを量産したが、そのたびにナイジェリアのGKビンセント・エニェアマが立ちはだかった。

 4-4-2でイグアインと縦関係の2トップを組んだメッシはほとんどトップ下のようにプレーしていた。前線でも中盤でも面白いようにボールを引き出し、ボールを持つと、一直線にゴールを目指した。ナイジェリアのDFはまったく対応できず、ずたずたに切り裂かれた。エニェアマがいなかったら、何点取られていたかは分からない。アルゼンチンにとっても、点差は1-0だったが、今後につながる試合になったのは間違いない。

 「メッシにたくさんボールに触ってほしいから、あの形を取った」と説明したマラドーナ監督は「メッシからボールを奪うのは、子供からチョコレートを取り上げるぐらい難しいよ」と不敵に笑った。自ら後継者と認める背番号10への絶大な信頼だった。

 主将としてW杯を制覇し、監督としても頂点に立てば、ドイツのフランツ・ベッケンバウアー氏以来、史上2人目の快挙となる。「オレとベッケンバウアーでは、顔が全然似てないな」。まだ、1勝を挙げただけ。「アルゼンチンからたくさんのサポーターが来てくれて、スタジアムはエモーションだった。ビューティフルでワンダフルなゲームができた」。新たなマラドーナ伝説の幕が開いた。

<写真>アルゼンチン代表マラドーナ監督
(取材・文 西山紘平)

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