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[プリンスリーグ関西1部]履正社vs京都橘は0-0ドロー。苦戦が続く中、ともに前向きな内容の好バトルに

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京都橘高FW増井那月(左)と履正社高MF井上太智。ともに存在感のある動きを見せた2人がボールを奪い合う。

[5.6 プリンスリーグ関西1部第5節 履正社高 0-0 京都橘高 J-GREEN堺S4]

 強豪校対決はともに前向きな内容のドロー――。6日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2024 関西1部で履正社高(大阪)と京都橘高(京都)が対戦。0-0で引き分けた。

 ここまで1勝3敗の履正社と、開幕4連敗中の京都橘。結果の出ていない両校の戦いだったが、ともに今後への巻き返しが期待されるような内容のゲームだった。履正社は5月1日付けで元ラージョヘッドコーチのスペイン人指導者、リノ・ロベルトテクニカルアドバイザーが就任。平野直樹監督は「もっとスピーディーに、もっとアグレッシブにサッカーができないといけない」と説明する。

 その履正社は立ち上がり、ビルドアップで慣れない部分もあったか、京都橘のコンパクトな守備網にかかってしまうシーンが散見された。京都橘は決め切るまでには至らなかったものの、183cmFW伊藤湊太(2年)が最前線で怖さのある動きを連発。また、初めて左SBとして起用された吉野歩夢(3年)の突破から、FW増井那月(3年)が左足シュートへ持ち込む。

京都橘のスケール感大きな2年生ストライカー、FW伊藤湊太がしなやかな動きからシュート

京都橘の左SB吉野歩夢が突破を図る

 履正社は立ち上がりに呑まれかけたものの、無失点で立て直す。そして、ショートパス、サイドチェンジも多用する攻撃を見せた。14分、MF桐畑優由介(3年)の展開から、この日攻守両面でスピードを発揮していた右SB上野朔(3年)がワンツーでPAへ侵入。また、前半、止まらない存在になっていた桐畑が縦突破からのクロスや中盤でのDF3人を外す動きでゴール裏のチームメートたちを沸かせる。

履正社の右SB上野朔は攻守両面でスピードを発揮

 また、MF井上太智(3年)、MF大重健二朗(2年)、MF堀江純之介(2年)の中盤トリオもテクニックやモビリティを発揮してチームを活性化。対する京都橘も、高速ドリブラーの左SH秋保宏樹(2年)と右SH増井が個の力でシュートまで持ち込む。だが、互いに相手ゴールを脅かしながら、得点を奪えずに前半を折り返した。

 後半2分、京都橘は相手のミスを突く形で秋保がスルーパス。これにU-17日本高校選抜FW宮地陸翔主将(3年)が反応するが、履正社の1年生GK新宮尋大が飛び出して足でストップする。

履正社の1年生GK新宮尋大は安定感の高い動き

 履正社は京都橘の鋭い攻撃の前にピンチもあったが、対人守備、カバーリングが一際光るCB伊藤大成(3年)が幾度も立ちはだかっていた。また、1年生GK新宮も安定。そして、後半はU-17日本高校選抜でも10番を背負うエースMF木村有磨(3年)が存在感を放った。

 18分、左サイドでのワンツーから、ゴールライン際まで潜り込んでラストパス。これを大重が1タッチで狙うがボールはクロスバーを叩いた。履正社は20分にも井上が抜け出すも、京都橘GK平誠都(2年)がストップ。履正社は35分にも木村の突破からチャンスを迎えたが、決め切ることができない。

履正社の10番MF木村有磨は後半に存在感を増し、決定機を創出した

 京都橘の米澤一成監督は「悪くない。でも、もつれたゲームで負けている。最後のクオリティがまだまだです」と指摘する。ここまでの4試合はチャンスを活かせず、結果、DFラインが耐えられなくなって失点しての敗戦。だが、この日は指揮官も評価したように、CB上田慶輔(3年)とCB福田悠人(3年)が中心となって我慢強く守り続けた。

 そして、終盤に最大のチャンス。45+3分、左サイドを秋保が突破し、折り返しが宮地へ届く。宮地が間髪入れずに左足を鋭く振り抜くが、ボールはクロスバーをヒット。勝ち切ることはできなかったものの、米澤監督が「気が利く。SBから動かせる」と評した吉野が左SBで好プレーを見せたほか、ゲームメーク、崩しなど多くのタスクをこなす大黒柱・宮地や活動量を増やしたMF谷田伎倖杜(3年)らも奮闘し、今後に繋がる勝ち点1獲得となった。

後半45+3分、京都橘は連続シュートでゴールに迫るも履正社DF陣が執念の守備

 京都橘は前節から今節までの間に山口遠征を実施。強豪・米子北高(鳥取)に勝利したことで、気持ちの面で変われたことも大きかったようだ。宮地は「遠征行って、自分たちの自信をつけれたっていうのが、今日勝ててはないですけど、ゼロで抑えてっていうのに繋がったかなと思います」。この後、京都橘はインターハイ予選へ突入。選手たちはこの日のように粘り強さも発揮し。白星を一つ一つ積み重ねていく意気込みだ。

 一方の履正社・平野監督は。「課題は明確になってきている」。ラストのところで崩し切れなかったものの、交代組も攻撃力を発揮するなど、選手層の厚さも感じさせる戦いだった。伊藤は「(リノテクニカルアドバイザーの指導の下、)初めてのチャレンジとしてはチーム全体では上手くいけたかなと思います。(ただし、)今日は勝たないといけない内容だった。こういう試合を勝っていかないと、まだ上に上がれないと思う。でも、いい感じでは来てると思うんで、(次節、またインターハイ予選で)しっかり勝ちにこだわってやりたいです」と力を込めた。ともに前向きなドロー。課題を少しでも改善し、次戦に臨む。

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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