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[プリンスリーグ]復活のエース田中CK弾!“街クラブ”養和旋風今年も

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[4.11 JFAプリンスリーグ関東1部第1節 三菱養和SCユース 3-1 市立船橋高 日産フィールド小机]

 JFAプリンスリーグ(U-18)関東1部開幕戦で昨年の全日本ユース(U-18)選手権4強の三菱養和SCユース(東京)が高校サッカーの名門・市立船橋高(千葉)と激突。復活を目指すエースFW田中輝希がCKを直接ねじ込むなど3-1で強豪対決を制した。

 昨年、Jクラブの下部組織ではない、「街クラブの星」として全国で旋風を巻き起こした三菱養和。その風は今年も止みそうにない。まさかの2部落ちから1年で1部復帰した07年王者・市船橋との開幕戦。ともに今春名古屋グランパスへ練習参加している田中と田鍋陵太を先発させる4-1-2-3システムで試合に臨んだ三菱養和は、序盤から圧倒的にボールを支配する。
 
 だが、4-4-2システムの市船橋は養和対策として練ってきた、「スペースを消して、ミドルシュートを狙う」(石渡靖之監督)サッカーを徹底する。田中を狙ってくさびを入れようとする相手のパスに狙いを定め、これを次々とカット。そこから速攻を繰り出すと遠目の位置からでも積極的にミドルシュートへ持ち込んだ。三菱養和は平尾優頼と山野辺大樹の両CBを中心に全く隙を見せない市船橋の好守の前に、ボールを持ちながら全くPAへ入り込むことができない。
 
 それでも18分、三菱養和は個の力で先制点を奪う。決めたのは昨春、浦和レッズのキャンプに参加し関係者から高評価を得ながら股関節痛のため、その後1年間ほとんど公式戦出場をすることのできなかった大型FW田中だ。右CKのキッカーを務めた田中は「コーナーフラッグ(の旗)が風でゴールの方へ揺れていた。それで蹴る前から狙おうと決めていた」とCKから直接ゴールを狙う。
 すると低い弾道にも関わらず強烈なスピンがかかったボールは、急激に変化しながらGKの手を弾き、そのままゴールへと吸い込まれた。「練習試合でも決めているんで。でも公式戦では初めてですね」と淡々と振り返った“脅威の”武器。これが自らのペースへ持ち込んでいた市船橋守備陣に穴を開けた。

 それでも市船橋はSB大柴理とのコンビから右MF石原幸治がPAへ迫りシュートを放つなど反撃。そして「(10日のF東京戦で興梠のゴールに結びついた)鹿島の、小笠原のシュートのように」(石渡監督)狙っていたミドルシュートが市船橋にゴールをもたらす。37分だ。市船橋はカウンターからボランチの今瀬淳也が強烈なミドルシュート。頭上を狙われた三菱養和GK野村祐太は何とか触るが、クロスバーの跳ね返りにいち早く反応した市船橋FW川村翔矢が相手DFのファウルを誘いPKを獲得した。市船橋はこれを今瀬が右足でゴール右へと沈めて1-1。選手たちはガッツポーズで同点劇を喜んだ。

 だが、その喜びは一瞬でかき消される。三菱養和は39分、田中を起点に右サイドでボールを持ったMF佐藤聖がPAへスルーパス。タッチライン際からマークを外してPAへ侵入してきたMF近藤貴司が強烈な右足シュートでゴールを破り、再びリードを奪う。左右の攻撃的MFの位置を担う佐藤と近藤は試合を通して、相手DFをかく乱する動きを繰り返していたが、この場面ではともに右サイドへ張り付いて市船橋の守備は混乱。ほぼ完璧な守備を見せていた市船橋はこの試合唯一ともいえるポジショニングの乱れから、勝ち越しゴールを献上してしまった。

 期待のMF藤橋優樹を欠く市船橋は後半11分に10番の関東選抜FW水谷達也を投入。その後、山野辺のヘディングシュートや途中出場の松野央資のラストパスから川村が決定的なシュートを放つなど何とか同点に追いつこうとする。だが、後半右サイドから左へポジションを変えた三菱養和・田鍋にDF2人が振り切られるなど、守勢に回り、思うような攻撃をすることができない。

 三菱養和も決定的なシュートを相手守備陣にブロックされるなど、主導権を握りながらもゴールが遠い。ただ、試合終了間際の43分、田中が相手CBのマークを豪快な突破で剥がすと、右サイドからの折り返しを佐藤が沈めて3-1。粘る市船橋を振り切り、勝ち点3を獲得した。

 三菱養和はジェフユナイテッド千葉のヘッドコーチへ転身した斉藤和夫前監督に代わり、今季から生方修司監督が指揮を執る。プリンスリーグ初陣を飾った生方監督は「今日は個人のところで勝っただけ。緊張もあったと思いますが、チームとしてやってきたことができなかった。それでも個人の部分は自分たちのストロングポイントなので、そこを活かして勝てたことはよかった」と納得の表情。昨年から全て入れ替わった守備陣も1点に封じ、勝利に貢献した。

 三菱養和に昨年の快進撃による満足感は全くなく、MF加藤大(現新潟)らが見せた質の高い個を活かしたサッカーは今年も健在。生方監督から「2人マークがいようとぶち抜け」と送り出された田鍋が後半抜群の存在感を示すなど、攻撃力はJクラブにも負けない力がある。昨年のプリンスリーグでは横浜FMユースと浦和ユースからそれぞれ5点を奪って一蹴するなど全国最激戦区で2位。ただ、試合終了間際の失点でのドローや逆転優勝のかかった最終戦で敗れるなど悔しい2位だった。だからこそ田鍋が「昨年みたいな悔しい思いはしたくない。優勝できるように練習から頑張っていきたい」と誓うなど「街クラブの星」は今年、昨年越え、そしてタイトル奪取を本気で狙っている。

<写真>前半18分、CKを直接ねじ込んだ田中中心に喜ぶ三菱養和イレブン
(取材・文 吉田太郎)

特設:プリンスリーグ関東
[高校サッカー]

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