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[全日本ユース(U-18)選手権]東京Vユース「マリノスは強かった」、横浜FMユースが豪快“倍返し”で連覇前進

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[9.20 全日本ユース選手権決勝T1回戦 横浜FMユース 4-0 東京Vユース ひたちなか]

 高校年代の日本一を争う高円宮杯第21回全日本ユース(U-18)選手権は20日、16強による決勝トーナメントへ突入。1回戦8試合が行われた。ひたちなか市総合運動公園陸上競技場(茨城)の第1試合では昨年優勝の横浜F・マリノスユース(神奈川)と日本クラブユース選手権(U-18)大会優勝の東京ヴェルディユース(東京)が対戦し、横浜FMユースが4-0で快勝した。横浜FMユースは10月3日の準々決勝で静岡学園高(静岡)と対戦する。

 7月の日本クラブユース選手権(U-18)準決勝の再戦。前回2-0で勝者となった東京Vユースの楠瀬直木監督が「完敗。マリノスさんは強かった」と語り、その言葉を受けた横浜FMユースの松橋力蔵監督は「それでは、完勝と。あそこ(ヴェルディ)にここまでやって、できて、勝てたのは胸を張っていいと思う」と誇らしげだった。

 雪辱に燃える横浜FMユースは立ち上がりから圧倒的な闘争心で相手に襲い掛かった。保田隆介主将と宮本和輝の両CBの安定感の高さに後押しされた中盤が、東京Vユースとの間隔を思い切って詰め、くさびに入ってくるボール、ドリブルを次々と引っ掛けていく。そしてボールを奪うと意識は常にゴール。サイドへ逃げることなく、縦へ縦へとボールを推し進め、ワンツー、スルーパスで裏を取った。

 松本が「クラブユースで負けたけど、高円宮までに変われる自信があった。この相手にリベンジできるか証明したかった」と語ったように、闘争心を前面に出したサッカーであっという間にターゲットを飲み込んだ横浜FMユースは17分、ドリブルでPAまで持ち込んだMF高橋健哉がDFに囲まれかけながらも粘って相手SBの後方へスルーパス。走りこんだSB木村魁人が右サイドをえぐって折り返すと、ゴール前へ詰めたMF松本翔がスライディングで押し込み先制した。
 さらに36分、前半18分に投入されたMF星広太とのワンツーで左サイドを破ったMF後藤拓斗のラストパスをファーサイドで受けた松本が冷静にゴールへと沈めてリードを広げた。

 U-19日本代表のMF小林祐希とDFキローラン木鈴主将、すでにJ2デビューし、ゴールまで挙げているFW南秀仁・・・・・・。一人ひとりのスキルだけを比較すれば東京Vユースに分があったかもしれない。クラブユース選手権で優勝し、天皇杯東京都予選を高校生チームとして史上初めて突破したことでつかんだ彼らの経験値も計り知れない。ただ横浜FMユースは1ヵ月半前に対戦した相手とは違っていた。小林が「相手がどんな気持ちで練習してきたのかよく分かった。相手のリベンジしたいという気持ちが伝わってきたし、向こうの方が勝ちにこだわっていた」とため息をついた闘争心の差。優勝候補は相手が見せる攻守両面での迫力に完全に飲み込まれてしまった。

 ただ、東京Vユースにもチャンスはあった。2点目を失う直前の34分、小林が放ったミドルシュートのこぼれ球に反応したMF杉本竜士がGKと交錯しながら詰める。だが、ゆっくりとゴールへと向かったボールはポストを弾き、相手DFがクリア。後半は相手のプレッシャーを上回るパスワークと杉本のドリブル突破、小林の無回転FKがゴールを襲う。後半27分には小林のFKのこぼれ球に決定的な形でFW相馬将夏が詰めた。相手DFを剥がすことに成功していたこの時間帯に次の1点を先に取っていれば流れは変わっていたかもしれない。

 ただ、「ボールを持てばできたけれど、ボールを持たれてからは(今大会)ベスト4のレベルに達していなかった」と指揮官が悔やんだ甘い守備が東京Vユースを崩壊させる。30分、その隙を突いた横浜FMユースが勝負を決定付ける3点目を奪う。U-17日本代表MF熊谷アンドリューの展開から右サイドの松本が中央へラストパス。星広のシュートは一度DFにブロックされたが、直ぐさまボールに反応した星広の右足シュートがゴールを破り、決定的な3点目が入った。そして、後半ロスタイムには左スローインを途中出場のMF鈴木雄斗が折り返し、最後は後方から走りこんだ星広が0-2で敗れたクラセンの“倍返し”となる4点目をゴールへ押し込んだ。

 「過信していた面があるかなぁ」と振り返った東京Vユースに対して、横浜FMユース・松本は「自分たちがチャンピオンだなんて思っていない。自分たちはチャレンジャー」。勝ち続けてきた東京Vユースとの差を敗戦後に貪欲に詰めてきた王者が、連覇への大きな関門を越えた。

(取材・文 吉田太郎)

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