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[プレミアリーグイースト]暫定3位・青森山田、F東京U-18からも勝ち点奪取

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高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグ イースト
[8・23 高円宮杯プレミアリーグイースト第1節 F東京U-18 1-1 青森山田高 深川]

 高校年代の全国リーグ、高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグイーストは23日、東日本大震災の影響で延期されていた第1節のFC東京U-18(東京)対青森山田高(青森)を東京ガス深川グラウンドで行い、1-1で引き分けた。

 浦和レッズユースを3-1で撃破するなど消化試合が2試合少ない状況ながらも7戦1敗で3位につける青森山田が、F東京からも勝ち点1をもぎ取った。前半、ボールを支配したのはF東京U-18。3分にMF伊藤裕也がゴールを破った左足シュートはオフサイドの判定によってゴールを取り消されたものの、U-17W杯日本代表MF野沢拓也がディフェンスラインまで下がってボールを引き出すと、自陣からボールを動かしながら青森山田の守りのギャップを狙おうとする。

 だが、徹底された守備組織が隙を見せない青森山田は、相手を網の中に入りこませない。じっくりと攻めるF東京U-18はボールを動かすことで相手を走らせて体力を消耗させるが、攻撃をスピードアップするまでには至らず。何とかくさびを入れてサイドへ展開するものの、青森山田は鋭い寄せで相手のミスを誘い、苦し紛れのパスを難なくカットしていた。

 F東京はこの日ドイツ1部の1860ミュンヘンへ約20日間の練習参加をしていたMF岩木慎也が帰国直後ということもあり欠場。加えてU-18日本代表MF橋本拳人がトップチームへ合流(現在はU-18代表カタール遠征中)し、守備の柱のCB小林聖弥が負傷欠場、また好調のMF福森健太が出場停止と主力半数が不在という状況だった。ただ伊藤やSB青木啓輔ら1年生3人が先発しながらも、倉又寿雄監督が「ポジションを実力で勝ち取っている。伸びてきている」と評価する彼らは物怖じせずに戦い、時間が進むにつれて、青森山田の堅守を振り切る場面も増やし出す。それでも、互いに致命的なミスを犯さず、決定機は生まれない。ひとつのミスが命取りとなりそうなじりじりとした展開の中、攻めるF東京、守ってからのカウンターを狙う青森山田の構図は変わらず、前半は両チーム合わせてシュート3本で終了した。

 前半は決定的な場面を作らせなかったものの、相手のパスワークの前に走らされてしまった青森山田。ただ後半は「前から行くときはチャンス、決定機になった」(黒田剛監督)と意識を前へと傾ける。これに伴って生まれだしたスペースを突いて両チームともに決定機をつくり出した。

 後半5分にはF東京U-18MF冷岡幸輝が右足シュートへ持ち込み、青森山田もFW林雄紀の右足シュートがゴールを襲う。そして後半10分、先に試合を動かしたのは青森山田だった。MF差波優人主将の左CKからDFのマークを外したCB舛沢樹がヘディングシュート。これがゴールを破り、先制に成功した。だがF東京U-18は直後の14分、MF二瓶翼の右CKを中央のFWブーゾ・アモスが頭で押し込んで同点に追いつく。

 点の取り合いから勢いに乗ったのはF東京U-18。左サイドのドリブラー、二瓶が個人で相手の網に穴を開けたほか、16分には野沢のスルーパスからシュートへ持ち込む。さらに20分には二瓶とのワンツーから今度は野沢がGKと1対1に。だが流れのいい時間帯に勝ち越すことのできなかったF東京を今度は青森山田が飲み込む。F東京U-18の野沢が「自分が低いポジションからボールを回していたけれど、相手がCBにもプレッシャーをかけてきてはまってしまった」と振り返ったように、相手のプレッシングの前にビルドアップの起点を封じられたF東京U-18は攻撃が縦、縦と単調になってしまい、ボールを奪われると青森山田の素早いパスと選手の動きに危険なシーンを作られてしまった。

 後半19分からドリブルで勝負することのできるMF高橋晃司を投入した青森山田は縦へのスピードが加速。相手の背後へボールを狙い続ける。そして試合終盤にビッグチャンスをつくり出した。44分、U-17W杯日本代表SB室屋成の縦パスから右サイドを抜け出した差波主将が中央へ絶妙なラストパス。これで林がフリーで抜け出すが、相手DFに距離を詰められてしまい、シュートにまで持ち込むことができない。セットプレーを除くと互いに失点につながるようなミスを犯さなかった両チームの「我慢比べ」は1-1の引き分けで90分間を終えた。

 MF柴崎岳、GK櫛引政敏ら3年生レギュラー9人が抜けて大きくメンバーの入れ替わった青森山田。チーム力の低下が囁かれたが、黒田監督も「よくやっている。彼らにも意地があったと思う」と目を細めるチームは静岡学園や流通経済大柏から勝利し、Jユース勢からも3試合連続で勝ち点を獲得するなど優勝争いに食い込む好成績を残している。ただ6年ぶりの日本一を期待された全国高校総体はまさかの初戦敗退。「おとなしい」チームは厳しい試合でチームメートを動かすほどの声、姿勢を出すことができていなかった。

「(主将の)差波におんぶに抱っこになっていた。だから差波をBチームに移して、自発的にもっとできるように1週間選手だけで練習をさせました。10kmや20km走っていたようです」と黒田監督。この日も「しゃべられないのは『思いがないから』だ」と厳しく指摘されていた選手たちだが、それでも少しずつ向上している「勝ちたい」という思い。この日は先発候補のFWを欠く中でJユースを代表する強豪と引き分ける結果を残したが、それでも悔し涙する選手もいた。中3日で行われる2位・東京Vユース戦(27日)を挟んだ後、9月4日には「9年間負けなし」という絶対的自信を持つ青森山田高グラウンドでのF東京U-18との再戦。厳しい戦いを経験してより勝利へどん欲となった「北の雄」が勝ち点を重ねて頂点を狙う。

(取材・文 吉田太郎)

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