beacon

[プレミアリーグイースト]1、2年生先発9人での再始動、クラセン王者・東京Vユースが青森山田撃破

このエントリーをはてなブックマークに追加

高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグ イースト
[8・27 高円宮杯プレミアリーグイースト第2節 東京Vユース3-1青森山田高 ヴェルディG]

 クラセン日本一の東京ヴェルディユースが快勝で新たなスタートを切った。高校年代の全国リーグ、高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグイーストは26日、東日本大震災の影響で延期されていた第2節の2位・東京ヴェルディユース(東京)対3位・青森山田高(青森)戦を行い、東京VユースがMF杉本竜士主将の先制ゴールなどにより3-1で勝った。東京Vユースは首位のコンサドーレ札幌U-18との勝ち点差を2へ詰め、首位取りを射程圏内に定めた。

 7月31日の日本クラブユース選手権(U-18)大会優勝から27日。日本一達成後初の公式戦に臨んだ東京Vユースの先発に名を連ねた3年生は杉本主将とGK中村一貴のふたりだけ。同大会得点王のFW南秀仁はU-18日本代表のカタール遠征中で、DFリーダーの長田海人ら3年生の主力メンバーは怪我によりピッチに立つことができなかった。それでも楠瀬直木監督が「どんな相手でも同じリズムでサッカーをしなければいけない。クラブユース選手権の準決勝、決勝は会場の雰囲気、相手が勝手にモチベーションを上げてくれる。それが環境が悪くなっても同じ気持ちでできるか。アンテナを張り巡らせながらしっかりと準備をして常に先手、先手を打つこと。気持ち、運動量で上回って、相手のやろうとしていることを上からやって行かなければならない」と語り、U-17W杯日本代表MF中島翔哉が「誰が出るとか関係ない。誰が出ても同じ質でボール動かして取られないサッカーをやらなければいけない」と話したように、高いモチベーションで試合に臨んだ東京Vユースはフルスロットルで青森山田を飲み込みにかかった。

「コンディションがバラバラで気になっていた。全員にとって難しいメンタルだったと思う。でも最初から行けるところまで行こうと」と振り返った杉本主将が1、2年生中心となったチームを鼓舞するかのように先頭に立ってボールを追い回すと、中村は最後方から声でチームを盛り上げる。2人の3年生中心に素晴らしい試合の入りをした東京Vユースは、展開を落ち着かせることなく立ち上がりからどんどん前へ出てゴールを狙った。4分、5分にはMF山口陽一朗と中島が相手ディフェンスラインのギャップを突くスルーパスでビッグチャンス。さらに杉本主将や中島がドリブルで仕掛けて相手守備網に穴を開けると、テンポのいいパスワークから青森山田を切り崩した。

 ボールを失っても強烈なプレッシャーをかける東京Vユースの前に攻守両面で劣勢だった青森山田。ただ、高校チームながらここまでの8試合でわずか1敗で3位につけるチームは、非常にコンパクトなディフェンスブロックで相手アタッカーを挟み込み、またGK野坂浩亮のビッグセーブでゴールを守ると、8分には敵陣でのインターセプトからMF石井大樹が決定的な左足シュートへ持ち込むなど対抗する。ともにゴールへ向かう強い姿勢を見せ合うハイテンポな試合展開。ただ、青森山田は不運な判定から相手に差をつけられてしまった。

 22分、GK野坂が不意にオーバータイムの反則を取られてPA内ゴール正面左寄りの位置での間接FKを献上。東京Vユースはこれを中島が動かすと、飛び出してくる壁の動きのズレを見極めた杉本主将が中央へ右足シュートを通して先制する。リードを奪った東京Vユースはさらに34分、中島が中央のバイタルエリアをドリブルで突くと左前方の杉本主将へスルーパス。これを杉本がダイレクトで中央へ折り返すと、後方から走りこんだU-17W杯日本代表FW高木大輔が右足ダイレクトでゴールへと押し込んだ。

 東京Vユースは右MF前田直輝や左SB安在和樹らの突破も含めてどこからでも攻撃を仕掛けて決定機をつくり出してくる。一人ひとりがハードワークしていた青森山田を攻撃力で上回ると、後半11分には右サイドで前田からパスを受けた中島が縦に仕掛けてPAへ侵入。そのまま右足で二アサイドのゴールを破り、3-0へ突き放した。

 微妙なポジショニングのミスなどが失点につながった青森山田だったが、それでも終盤にチーム力の高さを示す。相手の2人目、3人目の動きを読んでボールを奪う回数を激増させると、人数をかけた高速カウンターは確実に相手の脅威に。MF椎名政志が積極的にミドルシュートを放ち、16分には右CKからのサインプレーで完全に相手を崩してMF差波優人主将が決定的な右足シュートを放った。わずかなパスのズレによってチャンスを失う場面もあり、黒田剛監督は「雑になっていたところがあった。一つひとつの技術とかやるべきことは多いですよ」と厳しかったが、後半ロスタイムにはMF高橋晃司とのワンツーから差波主将がゴールを破り、一矢報いた。

 快勝した東京Vユースは昨年の反省を活かす勝利だった。日本クラブユース選手権を制し、高校年代のチームとして初めて東京都予選を突破して天皇杯にも出場した昨年は、実力を擁しながらも9月をピークにその後は継続して結果を残すことができなかった。杉本主将は「昨年があるから選手みんなが分かっている。あんなに強かったチームでもそこから落ちると分かっているから、中だるみすることはないです」。杉本主将がトップチームに帯同し、中島も30日からの予定でトップチームに練習参加するなど、個人個人に新たなモチベーションもある。そして危機感を持って戦ったことが勝利につながった。

 気持ちを切らすことなく白星でリスタートを切ったチームには指揮官も「子供たちが一度終えて、気持ちが切れていないか観察している状況です。でも慢心せずに地に足をつけてやることがまあまあできていた」と合格点を与えていた。主力不在をものともせずに強豪に勝利。昨年と違う姿を示した東京Vユースはそれぞれがトップチーム昇格という個人の目標を見据えつつ、チームとして高いモチベーションを維持して初代プレミアリーグ王者、そしてJユースカップ獲得という3冠奪取を目指す。

(取材・文 吉田太郎)

TOP