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槙野がアウォーズで“サンフレ劇場”!大演説やパフォーマンス失敗で魅了

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 MVPや優勝チームを差し置いて目立っていた。厳粛なアウォ-ズの舞台でさえ“サンフレ劇場”に変えてしまった。サンフレッチェ広島のDF槙野智章は共に初となるベストイレブンとフェアープレー個人賞を受賞したが、いきなりの“大演説&パフォーマンス失敗”で魅せた。今季ピッチ上で見せた数々のパフォーマンス同様、集まったサポーターやテレビの前のファンを楽しませた。

 今季全34試合出場しながら警告が0とクリーンな守備が評価されてフェアープレー賞を受賞した。ベストイレブンより先に行われた表彰で、司会者に感想を求められると「前もってJリーグの方からチームのスタッフに『期待してます』という連絡が入ってた」という槙野は、用意していた大演説に突入した。「僕の目標は2つあり、1つは2014年のワールドカップで日本が優勝すること、もう1つがサッカー文化を起こし、子供たちに夢を与えることです」と切り出すと、異例のロングスピーチを展開した。

 「僕は今、得点後のパフォーマンスを繰り返し行っています。それは、スタジアムで試合を見てくれる人、テレビで応援してくれる人たちにも、少しでもサッカーを楽しんでいただけるように、そういう思いでやっています。サッカーファン以外の人にもサッカー好きになってほしいし、これからサッカーを好きになっていく子供たちにも、もっとサッカーを好きになってほしいという一心でやらせてもらっています。時にはみなさんに不快な思いをさせてしまう時もありましたが、温かい心で受け止めてください。来年は、ぜひもっといろいろなパフォーマンスを、いろいろなチームの方にやっていただきたいと思います」

 賞の話題にはほとんど触れることなく、熱く語った。メモを見ることもなく、思いをぶつけた。今季は様々なゴールパフォーマンスを披露し、10月31日の横浜FM戦では、やる直前に主審に制止されて激怒するなど物議をかもした。槙野はアウォーズという大注目の場であえて、時には批判されながらもパフォーマンスを続けている理由を明かし、他クラブの選手にもゴールパフォーマンスをするように訴えかけた。

 それだけでは終わらなかった。ひと段落し“演説”も終了かと思われた中、どっきり発言も飛び出した。槙野は名古屋から獲得のオファーを受けているのに、「最後に名古屋グランパスのみなさん、優勝おめでとうございます。背の高い選手やカタカナ名の選手と、すごくウチに欲しい選手がたくさんいます。本当に羨ましいです」と意味深な発言。そのほかJ1に復帰する柏、甲府、福岡の選手に向かって「みなさんJ1昇格おめでとうございます。1年でJ2に戻らないように頑張りましょう」と挑発? までして会場を沸かせた。

 ここまでは“格好いい槙野”を印象付けたが、しっかりと“オチ”も付けて笑いを誘った。ベストイレブンの表彰で登壇した際、司会者から「パフォーマンスは……」と振られると、「闘莉王さんとヤットさん(遠藤)も交えていいですか?」といい、先輩2人を中央に呼び寄せた。ここまでは威勢が良かったが、結局は遠藤が渋ったために実行できず……。槙野は困惑顔だったが、これには式典後、「遠藤さんにはめられました!」と弁解した。

 実は登壇する前に、遠藤から「パフォーマンスやる?」と話を持ちかけられたという。闘莉王も交えて相談した末、何選手かを呼んで今季のJリーグでも見せた『ボーリング』のパフォーマンスをやることに決めたが、土壇場で遠藤に裏切られたのだ。槙野は「遠藤さんから言ってきたんですよ。僕は岡ちゃん(清水・岡崎)も呼ぼうと言ってて、遠藤さんは『今ちゃん(F東京・今野)を呼びたい』って言ってたんです。ほんとはめられました」と顔を赤らめた。

 パフォーマンスについては表彰式後の囲み取材でも、「今年、何人かの選手と一緒にインタビューを受けたんですが、ほんとはみんなパフォーマンスをやりたいみたい。やはり来年はACLに出るセレッソやガンバもやってほしい。(笑いが本場の)関西なんだから、できるはずです。広島ができてるんですから」と止まらなかった。

 もちろん“笑い”だけでJリーグを盛り上げるわけではない。この日、2014年のW杯優勝を宣言したが、プレーでもサポーターを喜ばせる。「チームの結果が7位という中位で終わっていますし、僕自身も昨年よりはゴール数は減っている。満足していません。まだまだ成長しないといけない」と向上心をのぞかせた。

 気になる去就については、横浜FMと柏に断わりを入れ、広島残留か名古屋、そして第一希望としてる欧州クラブか迷っている。「2014年のブラジルW杯は選ばれるだけじゃなくて、選ばれて試合に出て、活躍しないといけない。そういう意味でも、どこのチームでプレーしたらいいのか考える」と明かした。ザックジャパンには常連となりつつあるが、さらなる飛躍のために一体どんな選択をするのか。いずれにせよ来季も、プレーにパフォーマンスにと槙野から目が離せない。

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(取材・文 近藤安弘)

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