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[フットサルW杯]ロシア戦で感じた日進月歩の精神[戦評]

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[10月8日 ブラジル・リオデジャネイロ]

GroupA
日本 1-9 ロシア
得)金山

「ロシアは素晴らしいチームだった。我々はカウンターからスピードをいかした攻撃をしたかったが、守備にミスが生じ、攻撃も思うようにいかず、前の試合よりもよくない部分があった。しかし、選手たちにはお疲れと言いたい。日本はよく戦った。私が日本に残るかはわからないが、今後も成長を続けてほしい」。
試合直後の日本代表サッポ監督の弁。4試合2勝2敗。勝ち点6、得点13、失点24、順位3。日本の2次リーグ進出はならなかった。

勝てば目標の2次リーグ進出。ここまで2連勝の日本。しかし、グループリーグ最終戦の相手はロシア。実質ヨーロッパNO.2と言われる実力は、日本が7-2で勝利したソロモン諸島相手に31-2というケタ外れの大差をつけたことからもうかがえる。

日本の先発はGK川原永光(浦安)、FP小宮山友祐(浦安)、藤井健太(浦安)、稲葉洸太郎(浦安)、稲田祐介(浦安)。今大会ベストゲームといっていいキューバ戦と同じだった。キューバ戦では、キックオフから気持ちを見せてペースを握った。この試合もそうしたかった。できなかった。

開始1分、プルディコフのヒールパスに反応したハマディエフがシュート、ポストを叩く。2分、左→右→中とダイレクトでつながれプルディコフがシュート。GK川原がなんとかセーブする。
体格は大きいが力みがない。決して速いわけではないが、FPが息をあわせ緩急を使い分けてボールを回す。一見、簡単にボールをつなぐように見える。よく見ると、相手陣ではゆっくりでも絶え間なく動いて日本のマークを外すから優しいパスもつながるし、トラップも乱れない。ペースをつかんだのはロシアだった。

3分、3本のダイレクトパスをつながれ、プルドニコフのシュートが決まる。7分、右CKからヒールで落としたボールにハマディエフが走りこんでのシュートが決まる。9分、前がかりになった日本を逆手にとり、カウンターからハマディエフが決めてゴール。あっという間に差は3点に。

キューバ戦では日本の気持ちがプラスに働いた。この試合では、どこかロシアにいなされているように見えた。試合巧者。日本は3失点後、守ることに精一杯で前半を終わる。

後半、日本のスターターはGK川原永光(浦安)、FP小曽戸允哉(大分)、金山友紀(町田)、木暮賢一郎(MMペレスブジャランス)、稲葉洸太郎(浦安)。負けたら全てが終わる。攻撃的布陣で点を取りにきた。だが、その目論見は後半開始わずか23秒で破綻する。プルドニコフ→ハマディエフのコンビにあっさりかわされ0-4。これでほぼ勝負はあった。

日本は後半1分でタイムアウトを取り、比嘉リカルド(名古屋)をGKの変わりに入れパワープレーに出る。しかし逆に崩されカウンターを浴び失点を重ねた。0-7となった4分、木暮が得たPKを稲田が蹴るも失敗。直後の5分、比嘉→藤井→金山と日本らしいつなぎで決めた1点がせめてもの意地だった。

日本のパワープレーでの得点は中央の比嘉から左へ振り、そこからダイレクトで速いボールをファーへ送って金山が飛び込んだもの。再三その形で攻めるも、ロシアは失点後左からのボールを切るようになった。さらに残り6分も過ぎたころから、パワープレー崩しを狙えるのに狙わず、マイボールの時間を増やして時間を使った。試合巧者の面がいくつも見えた。力の差はあったと認めざるを得ない試合だった。

今大会、日本は稲葉や小曽戸ら若い世代の成長を見せ付けてくれた。藤井ら代表歴の長い選手も要所で好プレーを見せ、チームを締めた。その成果が、史上初のW杯勝利だけでなく、2勝目も得たという結果だった。

一方で突きつけられた課題もあった。ブラジルやロシアは自陣でプレスされてもGKにバックパスをほとんどせずにつないでくる。日本の場合はGKにバックパスをし、前線へのロングボールを蹴って逃げる。Fリーグでも珍しくないプレー選択だが、世界レベルのチームではめったに見られないプレーだ。キープできる自信、万が一奪われても対処できる信頼、もちろん日本にもあるが、世界のそれはもっと大きく強いものだった。

成果は出たが課題もまだまだある。そのひとつひとつを解消し、世界との距離を縮めるにはさらなる環境の整備と経験の蓄積が必要だ。いきなり上手くはできないが、コツコツと積み上げることで結果はついてくる。功を焦らず、ゆっくりと日本フットサルを見守るたいせつさをこのW杯で教えられたような気がした。

<写真>立て続けの失点に呆然とするゴレイロ川原ら日本チーム

(文/伊藤亮)

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