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FW森本貴幸がゲキサカに語る!_第1回技術編

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 08-09年シーズンのイタリア・セリエA、当時20歳の日本人ストライカーが衝撃を与えた。カターニアFW森本貴幸は08年12月21日のローマ戦で5連勝中と好調だったローマから2発。さらに2月にはリーグ最多優勝を誇る名門・ユベントスからゴールを決めた。そして3月には同じシチリア島のライバル、パレルモのゴールも破ると、シーズンラスト3試合では3連発。ほとんど後半戦だけで挙げた7発は06年W杯優勝国のイタリアでも高い評価を受けた。
 同じイタリアの名門・ミランに所属する19歳のブラジル代表FWアレシャンドレ・パトは、今季最も興味深かった若手としてリーグ優勝したインテルで8ゴールを挙げたFWマリオ・バロテッリを差し置いて「(今季の若手№1は)カターニアの日本人、モリモトだ」と語ったほど。ゲキサカが行った緊急アンケート「W杯本大会に向けて日本代表に新たに招集してほしい選手は」ではユーザーの4人に1人以上が「森本貴幸」の名前を挙げた。

 国内外で注目の高まっているストライカー、森本貴幸。彼のように海外でゴールを量産することを夢見る中高生も多い。ゲキサカでは6月某日、その森本のインタビューに成功。FWとしての心構えや、技術について、そして「慎重に選んでいるという」スパイクについて、オフのリラックス法や来シーズンへ向けた意気込みを聞いた。4回予定の連載、第1回の今回は技術編だ。


 08-09年シーズン、世界最高峰のDF揃うイタリア・セリエAでリーグ戦7ゴールを決めた森本貴幸。08年12月21日のローマ戦では、自陣からの縦パスに反応すると相手DFラインの裏のスペースへ飛び出し、右足でのトラップから左足でゴールを決めた。このように昨シーズンの森本は絶妙なタイミングでDFラインの裏のスペースへ抜け出す場面が目立った。
本人もこの部分での成長を認めている。「裏に抜ける部分とか、相手より先にニアで触る部分とか感覚的に分かってきた。チームメイトと話して、パスを引き出す部分もできたと思う」。

 加速度的に成長を遂げている森本だが、中高生をはじめとしたプレーヤーが森本に近づくためにはどのような点を意識すればいいのか。何から真似すればゴールを決めることができる選手になれるのか。
 森本の持っているFWとしての心構え。それはやはり「点を取ること」にある。「いいFWを知りたいならプレーをしている試合を見なくてもいいと思っている。試合後のスコア表だけ見ればいい。得点者の欄に名前が出ている選手がいいFWだと思うから。数字を残しているFWがいいストライカーだと思います」。結果を出すこと。ゴールを決めるかどうかで評価が左右される世界で生きている森本はゴールの数こそが自分をはじめとしたFWの能力を評価する唯一無二のものだと考えている。

 環境面がもたらす影響も大きい。昨シーズン、森本が大きな成長を遂げた理由のひとつが、強靭な欧州の選手たちと激しい練習をしていることが挙げられる。彼は本番並みの厳しいプレッシャーの中で毎日を過ごすことによりプレーの速度を上げてきた。ボールを取られない選手へと進化を遂げた。
 森本自身もプレー速度を上げるための秘訣として「敵とぶつかる経験をいっぱい積んでいくことが一番。それが感覚をつかむためには最も速いと思う。実戦練習あるのみですね」と話す。イタリアという世界的にも高いリーグの中に身を置いてきた森本は、その環境の中で当たり負けをしない工夫もしてきた。「普通に真正面からぶつかっても、パワーでは負けるから、DFに対して体を上手く当てたり、抜け目なくやったりということを考えながらやっている」。
森本といえば、東京ヴェルディ時代の04年5月に15歳11ヵ月でJ初ゴールを決め、その年のJリーグ最優秀新人にも輝いた。その勢いは10歳以上年上の経験豊富な選手たちにも止める事ができなかった。だが、今の森本は勢いだけでゴールを重ねている訳ではない。

 見逃すことができないのは、森本が持っている相手DFの特徴を見抜く洞察力だ。「FWは相手CBとの戦いだから、敵のCBがどこにいるのかとか常に見て、ここにボールを置いたらどう足が出てくるんだろうとか、予測しながらやっていけば大丈夫。キープする時や裏に抜けるタイミングにしても、自分のプレーレベルを上げることはもちろんだけど、ゴールを決めるためには相手のCBのことを知ることも重要」。相手のCBを分析することで、より可能性の高いプレーを選択することができる。これは中高生プレーヤーにとっても試合で結果を残すための重要なポイントになりそうだ。

 イタリア移籍から3年間。厳しい環境の中でもまれながら、若手FWのひとりから突き抜ける存在へと成長を遂げた。若い選手が大きく成長するためには彼のように海外移籍は必要なのか。ただ、森本はその意見を否定する。「日本で成長している選手もいるし、外で成長できる選手もいる。その選手が何を考えて、どうしたいのか、全てはその子次第だと思います」と語った。海外に行くだけで上手くなれるほどサッカーは甘くない。問題はどれだけ上手くなりたいという気持ちを持ち続けられるか。そのために必死になれるかなのだ。森本は上手くなるためのことを常に考えている。

(文 吉田太郎)

インタビュー写真は最新PHOTONEWS
※連載の次回は7月30日に更新予定。
連載の最後には森本選手からのプレゼントも?

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