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F東京vs川崎F 試合後の城福監督会見&コメント

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[11.3 ナビスコ杯決勝 F東京2-0川崎F 国立]

 ナビスコ杯は3日、東京・国立競技場で決勝を行い、FC東京川崎フロンターレが激突した。前半22分、ニューヒーロー賞を獲得したMF米本拓司の強烈ミドルでF東京が先制すると、後半15分にもFW平山相太が追加点を決め、2-0で快勝。04年大会以来5年ぶり2度目の栄冠に輝いた。
以下、試合後のF東京・城福浩監督会見要旨と囲み取材でのコメント


城福浩監督
「戦前の予想では我々が苦しくなると言われていたが、ケガ人の状況や個の能力、選手層の厚さを考えると、それはフェアな見方だったと思う。しかし、ケガ人やベンチに入れなかった選手、今日ピッチに立てなかった選手の無念さが力となり、全員で勝ち獲った決勝の勝利だと思う。ファンの方も待ちわびていたと思うし、腰を引かずに真っ向から川崎Fと戦って勝てたことは自信につながるし、リーグで2敗した課題に向き合って取り組んできたことの証明ができたと思う。今日の優勝をきっかけにステップアップしたいし、しなければならないと思う。両チームのサポーター全員の力で素晴らしい決勝になったことをうれしく、誇りに思うし、選手、スタッフと戦えたことを誇りに思う」

―ハーフタイムに指示にあった「我慢」の意味は?
「2つあります。1つは、ボールを回されたときに食い付きにいきたくなるが、川崎Fの強力なFW陣に対して穴を開けたら、そこでボールを取れなかったときに、空いたスペースから決定的な形をつくられる。インターセプトができれば一番いいが、そうではないときも3ラインをいかに保つか、いかにコンパクトにするか。それが我慢が1つ。
 もう1つは、自分たちの時間を長くすることが大事で、センターバックとボランチを中心にボールを回しながら、相手にできたギャップを突く。前に急ぎたくなるところで我慢してつなぎ直す。そういう両方の意味があった」

―2点目を取った直後に長友を入れたが?
「長友は2回決定的なチャンスをつくっていた。彼を入れることは決して守備的ではなく、相手が前がかりになったところで、飛び出ていける。森選手が上がり気味でクロスを上げられていたので、そこも押さえたかった。2点目を取る前から考えていて、2点目が入らなくても使っていたと思う。あとの選手交代は、戦況を見ながら、どこを押さえたらいいのか。相手が背の高い選手を入れるのか。ドリブルが上手い選手を入れるのか。相手を気にしながらカードを切っていった」

―先制点を取るまでは苦しい時間もあったが?
「我々は今シーズン、川崎Fと天皇杯で当たる可能性もあるので、あまり詳しく話せないが、前半少し苦しい時間が続いて、何がいけないのか気を付けて見極めようとしていた。大崩れしているというより、守備のアグレッシブさとセーフティーの狭間のギリギリの判断のところでやられていた。そこはハーフタイムに修正した。意図的にボールをつながれているというより、自分たちのアグレッシブさが表裏一体になってピンチを招いていたと思う」

―リーグ戦2敗の川崎Fに対し無失点で抑えたが?
「権田の好セーブに救われたシーンもあったし、彼はハイボールでほとんど勝っていた。ただ、前線からチェイシングして、どういう風にボールを回させながら奪うかが大事で、前線からのハードワーク、コンパクトさを保ち、カバーしながらというのを全員で準備してきた。3度同じ轍は踏まないと心に強く思いながらやった。ボールを回されてクロスを入れられる場面もあったが、相手に余裕を与えた場面はほとんどなかったと思う。競り合いながら、プレッシャーをかけられていた。マイボールになったとき、攻め急がず、自分たちの時間をつくりながら休めたことも大きな要因だと思っている」

―米本の成長ぶりへの評価は?
「個人の評価は極力避けているので、ぼやけた言い方になるが、若い選手はシビアな局面を経験すると、吸収力が高いというのは実感している。ただ、彼がいいパフォーマンスができたのも、小平の練習で素晴らしい姿勢を見せていても試合に出られない選手がいて、そういう選手の姿勢を感じながらやれたからだと思う。それは小平でやっていない選手は感じられない。18歳の選手に感じさせられる選手がいたことが重要だと思う」

―自分たちのサッカーをできたか?
「自分たちのサッカーをやって勝ったと言えるかは……。満足はしていない。ケガ人がいるとかもあるが、自分たちのスキルを考えれば、もっとできるはず。相手を動かす、振り回すことがもっとできるはず。それを次につなげたい。石川直だけでなく、茂庭もケガしているし、長友もケガを抱えていた。カボレの移籍もあった。いろんなアクシデントがあったが、チーム全員が立ち直ってきた実感はある。やり続けることの大事さが苦境を切り抜ける力になる。彼らがピッチに立てないことも力になったが、全員で乗り越えられたことが大きい。ただ、ここが最終目標ではない。1つのステップにして、次につなげたい。今日の内容に決して満足していない」

―川崎Fの中村憲剛は右サイドに入っていたが?
「中村憲剛とレナチーニョはフレキシブルに動く。どちらかのサイドに張り付くことはないし、どちらかのサイドにいくことが多いぐらいの認識だった。どちらにきても、彼のスルーパスは全員が意識していた。谷口は2列目から出てくるのが持ち味。クラスからファーに入ってきたり、セカンドボールに飛び込んできたりする。前線の選手を信じて上がってくる。今日はそれプラス、追い越してスルーパスをもらう動きがあって、そこに付いていけなかった。そこで失点しなくてよかった。それ以降はボールの出どころと彼へのマークはケアできていたと思う」

―試合内容にある程度は満足している?
「やろうとした姿勢は評価したいし、それが結果に出たことが大事。ただ、やられたなと目をつむったシーンも3、4回あった。今日のような攻撃では、次やったら絶対に勝てるかというと、それは難しいと思う。崩され方というか、相手にシュートまでいかれてる場面も、紐解けば4つ5つ前の自分たちの問題。自分たちでこうしようとしている中でのミス。ステイして守るのか、アグレッシブに奪いに行くのか。シチュエーションによって変えないといけないし、それをグループで考えないといけない。前線も後ろも意識を一致させないといけない。そこの判断は難しいが、合わせていきたいと思っている」

―ジュニーニョをスピードに乗らせなかったが?
「ジュニーニョは素晴らしい選手で、自分でも行けるし、人も使える。シュートも持っている。彼にボールが収まる回数が多ければ多いほど、我々は苦しくなる。彼にボールが収まる回数が少なかったかというと、もっと少なくできたと思う。スピードに乗る回数が少なかったのは全員が意識していたから」

―6月から7月にかけてリーグ戦で5連勝した当時と比べると?
「今はカボレがいないし、石川直もいない。ただ、彼らがいたときも、選手には“ボールを持っている選手が選択肢を持てるサポートをしよう”と言っていた。選択肢を持たせた上で、その選手がドリブルが得意なのか、スルーパスが得意なのか。選択肢を持たせることで、その良さも生きる。だれが出ても、そういう選択肢をつくれる状況をつくることが大事。(鈴木)達也には達也の特徴、羽生には羽生の特徴、石川直には石川直の特徴がある。選択は本人がすること。ただ、チームとして選択肢をつくってあげる。そのやり方は変わっていない」

―それほど喜んでないように見えるが?
「喜びというか、安堵。僕は勝ったときはホッとすることの方が多い。僕らは今、リーグ戦では優勝争いという単語が使えるか微妙な状況にいる。カップ戦ならいつもベスト4に行けるクラブ、リーグ戦なら最終節まで優勝争いという単語が使えるクラブを目指している。先発の平均年齢はたぶんリーグでも一番若いと思うし、外国人選手も少ない。こういう試合が経験にならないはずがない。このステージが普通になる。そういう意識に持っていかないといけない。優勝という大変な栄冠を勝ち取って、自信にもなる。チームとしてやることがブレなければ、チームの特徴は出せる。それを刻み続けたい」

―平山のこの1年の成長については?
「彼はあるタイミングから明らかにサッカーに対する姿勢が変わった。これは彼自身の問題。24時間でファーストプライオリティーを置いているのがサッカーであり、1週間でファーストプライオリティーを置いているのがサッカーになった。目に見えることだけでなく、課題に取り組む姿勢なども日々目の当たりにしている。彼自身が自分を変えようとしている。それがすごく大事。走る量も明らかに増えた。それは顕著。だから十分かというと、そんなことはないし、今のパフォーマンスに満足しているわけでもない」

―2-0は一番危険なスコアと言われるが?
「崩されてはいないという認識はあった。ただ、FK、CKが多くて、間違ってやられると、バタバタするかなと。自分たちの時間が少ないと、ああなる。そういう時間を減らす努力をしないといけない。ただ、足元で崩されているわけではなかったので、選手もクロスに慣れてきているというのはあったと思う」

―自分のキャリアにとって、この優勝の意味は?
「冷静には捉えられないが、ここから後戻りはしたくない。一息ついて、達成感に包まれると後戻りする。そうはなりたくないと思っている」

―川崎Fの選手はみんな「うちの一番悪い形でやられた」と話していたが?
「天皇杯で当たる可能性もあるので……。たまたま点が入りました、ということにしておいてください(笑)」

―米本のシュートについては?
「あれぐらいのシュート力は付いているので、まったく驚かない。チームでも3本の指に入るシュート力を付けている」

―ジュニーニョや鄭大世に対して常に数的優位をつくっていたが?
「数的優位をつくるのは簡単ではない。なぜならどこかが数的不利になっているから。全体のコンパクトな守備、連動性がないと、数的優位はつくれない。その賜物だと思う。守備にもいろんなやり方がある。ボールを奪うのが一番いい守備で、次はスペースを埋めること。相反することについていつも練習している。ボールを奪ったあとに自分たちの攻撃ができる。そのために、どうやって奪うのか。奪ってからがスタート。そこから逆算して、たまたまブロックをつくっているというのが僕の認識。鹿島からも、清水からも学んでいる。なぜ守備が堅いのか、なぜ崩れないのか。自分たちの基軸は置きながら、取り入れられるものは取り入れている。僕は、自分たちの時間を長くして、ボールをつないでいくことが勝利への近道だと信じている指導者で、そういうスタイル。勝つために一番近いと信じているからやっている」

<写真>F東京の城福監督
(取材・文 西山紘平)

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