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Jを目指せ! by 木次成夫

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第130回「北信越リーグ展望 1.長野パルセイロ」
by 木次成夫

 全国地域リーグ決勝大会の規定が昨季までと同様だとすると、北信越リーグ所属チームの出場枠は1チームです。V・ファーレン長崎(九州。ちなみに、Vはヴィと発音します)、ホンダロック(九州)、町田ゼルビア(関東)がJFLに昇格し、バンディオンセ加古川(関西)が経営難ゆえにリスタートすることになった今季、北信越は、いわば“最後の激戦区”。昨季以上に気になります。

 そこで、3月1日、南長野球技場で行われた長野パルセイロ(08年北信越1部優勝)とアルテ高崎(08年JFL18チーム中17位)との練習試合を見に行ってきました。合計4本(45X2、30X2)行われ、結果は4-4。両チームとも今後が期待できる内容でした。パルセイロは想定内ですが、アルテが後藤義一“新”監督のもと、パスをつなぐサッカーを目指していた点は、“嬉しい”想定外。さすがは、ジェフの中盤を支えた後藤さん、ならでは? 

 パルセイロは、この試合時点で総勢20人。主軸だったCB丸山良明(34歳)とボランチ貞富信宏(29歳)含めて6人が退団した一方で、新加入は以下の4人。

DF鈴木祐輔(26歳、前ロアッソ)
MF大橋良隆(25歳、前NECトーキン=東北1部←ベガルタ)
MF野澤健一(25歳、前・佐川印刷=JFL)
FW加藤康弘(22歳、前・浜松大学)

 つまり、昨季と比べると“2人減”。2月上旬に、エース的存在のFW勇田勇一(31歳=加入3年目、前ジェフ)が全治6カ月のケガをしたため、現実的には“3人減”です。

 昨季の主力をベースにした1本目のメンバーは以下の通り。(*印をつけた選手は、昨季最後の公式戦、全国地域リーグ決勝大会一次ラウンド3戦目、対バンディオンセ加古川戦のスタメン。+は同サブ)

GK、海野剛*(25歳=加入2年目、前FC岐阜)
右DF、土屋真+(25歳=4年目、前・浜松大学)
CB、鈴木祐輔
左DF、籾谷真弘*(27歳=3年目、前ザスパ)
右MF、野澤健一
ボランチ、土橋宏由樹*(31歳=2年目、前・松本山雅)
ボランチ、大橋良隆
左MF、高野耕平*(23歳=2年目、前・東京学芸大学)
トップ下、大塚靖治+(25歳=3年目、前バンディオンセ神戸=現・加古川)
FW佐藤大典*(26歳=4年目、前ザスパ)
FW藤田信*(24歳=2年目、前フェルヴォローザ石川・白山)

 試合を通して見た印象は、「現時点」ということを考慮すると、上々の出来。パスワークに粗さが目立ったものの、昨季と比べると、よりスピーディなパス・サッカーが期待できそうです。

 少数精鋭ながら、複数のポジションをこなす選手が多いため、全体的な層は昨季よりも厚くなりました。例えば、2本目以降、野澤、塚本翔平(25歳=加入4年目、前・中京大学)もボランチで好プレーを披露。重鎮的存在の土橋を含めて、バドゥ監督のボランチ・コンビ選択が気になります。攻守両面での安定感(勤勉性)を重視するなら、土橋を外す策もアリですが、豊富な運動量を誇る選手が“昨季以上に”揃ったからこそ、土橋のゲームメイク・センスが“より”活きる(かもしれない)とは、思いましたが……。

 近年、「人もボールも動くサッカー」というフレーズが流行していますが、根本的には「ボールが動く」ことが大事なわけで、「運動量が豊富な選手を揃えるべき」という意味では、ありません。そして、昨季のJFL以下(高校サッカーも含めて)を見る限り、フィジカル能力とテクニック面では相対的に優れた選手が増えた一方で、センスは“教えられるものではない”という印象。言い方を変えると、ワンタッチでリズムを変えられる選手の存在が“より”重要になっています。

 試合後、土橋に“良い補強ができたのでは?”と問うと、「周囲を見られる点で“気が効く”選手が揃いましたが、昨季の悔しさを経験した選手が残ったことも、大きいです」。そして、チーム全体としては、昨季以上に「連動性のあるサッカーができると思います」と――。

 土橋は07年シーズン後に松本山雅に事実上の戦力外通告をされてから、2シーズン目。去る1月に、昨季まで山雅に所属していた佐々木惇(カマタマーレ讃岐)とハワイで自主トレをした効果もあるでしょうが、コンディションは上々です。

 サッカーファンの中には「無駄に熱い北信越」という見方をしている人も多いようですが、格安かつ身近で“熱くなれる”リーグがあることは、この不況下、「無駄」どころか、「幸い」だと思います。また、観衆数では松本山雅に劣るパルセイロ(あるいは、ツエーゲン金沢)にとっては、山雅も昇格を逃したことは大チャンス。ただ、クラブ経営陣は、たとえ昇格できなくても、“これだけ多くの観衆が集まれば、効果があった”とスポンサーが満足する状況も目指すべきだとは思いますが……。

 例えば、共に協力して、シーズン早期に“未だかつてない”観客動員数を記録して、JFAに“地域決勝”特別枠を申請する策もアリです。そもそも、JFL昇格チームがあるということは、相対的強豪チーム数が減るという意味ですから、“地域決勝”決勝ラウンド進出チーム所属地域に「プラス1枠」という規定がある理由も、わかりませんし――。たとえ、申請が却下されても、話題には、なります。

 ちなみに、アルテとの練習試合も、ひとつの証ですが、近隣にライバル的存在があることは、相対的低経費で効果的な練習試合を組めるということです。強豪大学が“ない”など、練習試合相手が十分ではない地域のチームにとっては、“より”貴重な存在。つまり、ライバルは切磋琢磨して共存した方が良いということ。それは、試合を観戦するファンにとっても同様です。どうせなら、近場のアウェーも“ある程度”楽しめる状況があった方が良いのでは? 例えば、長野と高崎は新幹線でのアクセスも良い点で、やがてパルセイロがJFLに昇格した際、アルテは、最もアウェー観戦しやすいチームです。

 パルセイロ対アルテ戦は、快晴で温暖だったこともあってか、100人内外のファンが観戦に訪れていました。改めて、身近で格安な楽しみが求められる点で“不況はチャンスだ”と実感。なぜ、選手やスタッフが、チラシを配ったりして、PRしないのか? “もったいない”と思いました。北信越リーグはホーム7試合のみ。開幕前の練習試合も貴重な機会では? 

<写真>パルセイロ大塚靖治(右=前バンディオンセ)と、アルテ杉山琢也(前・岐阜)の激しい攻防

▼関連リンク
Photoニュース:パルセイロ対アルテ

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