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Jを目指せ! by 木次成夫

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第138回「"群雄割拠"北信越PART3 南長野での1日」
by 木次成夫

4月26日、北信越リーグ1部3節。長野県長野市の南長野運動公園総合球技場では、長野パルセイロ(昨季優勝)対ヴァリエンテ富山(同6位)、上田ジェンシャン(今季昇格)対松本山雅(昨季4位)が開催されました。

長野パルセイロ 6-0 ヴァリエンテ富山

有料(高校以上=500円、小中学生=200円、小学生未満=無料)。観衆=1338人(公式発表)。

[パルセイロの過去2節]
1節(H)対ジェンシャン=1-1
2節(A)対サウルコス福井(昨季7位)=2-1で勝利

パルセイロは予想外の苦戦続きでしたが、この試合は圧勝。“Jを目指さない”チームに戻ったヴァリエンテは、1節(A)=ツエーゲン金沢に0-2、2節(H)=山雅に0-1と連敗していたものの、数字的には健闘している感があったのですが……。山雅の吉澤英生監督いわく、「うち(山雅)の時とは、(ヴァリエンテ選手の)モチベーションが全然違いました。(記者陣に同意を求めて)ですよね?」

[得点経過]
・5分1-0
(得点=FW藤田信、アシスト=FW佐藤大典)
・27分 2-0
(得点=ボランチ大橋良隆、アシスト=佐藤←左MF高野耕平)
・35分 3-0
(得点=藤田、アシスト=大橋)
・47分 4-0
(得点=高野、アシスト=藤田)
・67分 5-0
(得点=佐藤、アシスト=高野)
・86分 6-0
(得点=トップ下・栗原明洋=交代出場、アシスト=大橋←佐藤)

最も印象的だったのは、3-4-1-2のボランチでプレーした大橋(25歳)。全国社会人選手権準決勝で山雅を下して、全国地域リーグ決勝大会出場を決めながら、会社事情で出場辞退したNECトーキンの主将を務めていた選手です。豊富な運動量、的確な状況判断、安定したボールコントロールが持ち味ですが、期待通り、攻守両面で大活躍。ちなみに大橋、トーキン加入前のベガルタ仙台所属時に、昨季だけパルセイロでプレーした丸山良明とチームメイトでした。つまり、“縁もあった”わけです。

上田ジェンシャン 1-3 松本山雅

無料。観衆=1826人(公式発表)。パルセイロ対ヴァリエンテよりも観衆が多かったのは、多数の山雅ファンが訪れたため。ちなみに2節のジェンシャン・ホーム、対ジャパン・サッカーカレッジ(以下JSCと略)戦の観衆は200人(公式発表)でした。

[ジェンシャンの過去2節]
1節(A)対パルセイロ=1-1
2節(H)対JSC(昨季2位)=1-3で敗退

[得点経過]
・28分 1-0
(得点=ジェンシャン=小倉大昌)
・65分 1-1
(得点=柿本倫明 アシスト=大西康平)
・67分 1-2
(得点=小林陽介)
・74分 1-3
(得点=木村勝太 アシスト=大西=FK)

過去2節とも先制点をあげたジェンシャンが、この試合も先制。1節にも得点を決めた小倉(26歳=今季加入、前・福島ユナイテッド←ビアンコーネ福島←フェルヴォローザ石川・白山←長野エルザ=現パルセイロ←帝京大学)が華麗なドリブル・シュートを決めました。

ゴール周辺の混戦→小倉(4-4-2の左MF)がボールを拾って、直線的ドリブルでゴール方向へ→山雅CB坂本史生をフェイクで振り切って、さらに内に切れ込み、左足でシュート→山雅は右SB、金澤慶一がスライディングでカットに入ったものの、間に合わず。いわゆる“ボールが足から離れない”ドリブルを得意にしている小倉らしいプレーでしたが、坂本の限界というよりは、他の選手の集中力欠如が失点の要因だと思います。

その後、山雅はハーフタイムにボランチ高沢尚利と交代でサイドアタッカーの今井昌太、62分には金澤に代えてサイドアタッカーの大西を投入。結果的に采配が的中。小林(25歳=今季加入、前ロアッソ)と木村(20歳=今季加入、前・甲府)はリーグ初ゴール。相対的に優れた個人能力を生かしたサッカーで勝利した点では、補強の成果が如実に出ました。

[ジェンシャンの魅力]
アマチュアチームで練習は週3回の夜間のみ。近年は、パルセイロから移籍する選手が増えています。パルセイロが「Jを目指す」クラブとして昼間練習移行などチーム強化する過程で、仕事との兼ね合いなどから移籍を選択した選手が“いた”ということです。つまり“選手の受け皿”としての存在価値が高まっているという見方もできます。フェルヴォローザで“プロ”という夢を叶えたものの、クラブ経営難を理由に、シーズン途中で報酬未払いの末に解雇されるなど、様々な経験をしてきた小倉が、古巣の近隣に戻ったのも、象徴的。ちなみに小倉、「エルザ時代に、お世話になった会社で働いています」(本人)とか。

山雅戦は下部組織の子供たちだけでなく、上田西高校サッカー部員が観戦していたのが印象的でした。「選手の1人が(上田西の)講師をしている」(北信越リーグ実行委員会・委員長も務めているジェンシャンの磯谷正人氏)そうです。

「アマチュアでも、ここまでできるということを見せたい」(磯谷氏)。

実際、疲労などの影響で後半は運動量が落ちたものの、試合を通して見れば、大健闘。相手との力関係を考慮した上で得点を狙う形があった点は、感動的驚き。相対的に細身な小倉が華麗なゴールを決めたことを含めて、子供たちにとっては“絶好の見本(目標)”になったと思います。

[山雅vs.パルセイロ]
例えば、高野が「昨季からやってきたことですが、3人目の動きを意識しています」と語るように、パルセイロはパス&ランのコンビネーション重視。対する山雅は、1節同様、個人の能力を生かしたシンプル(停滞した状況下では、“単調”という表現が適切)なプレーが目立ちました。監督の志向性も違うのかもしれませんが、いずれにせよ、プレースタイルの違いという点でも、5月17日、パルセイロ・ホームの直接対決「信州ダービー」が楽しみです。

パルセイロが試合直後に場外で選手のサイン会を実施していた点にも、独自性を感じました。ファン数では山雅に“かなり”劣るパルセイロの起死回生策になるでしょうか――。少なくとも、HPなどで大々的にPRしないのは“もったいない”と思うほど、選手もファンも楽しげでした。

その一方で、山雅ファンに関しては、磯谷氏から「アマチュアとして頑張っている選手に罵詈雑言を浴びせるような応援は、子供たちへ教育上も良くない」という趣旨の意見を聞きました。今まで、主にゴール裏で取材しつつ、小気味良いタイコのリズムを楽しんでいたので、そういうファンが山雅に“いる”ことすら気づきませんでしたが……。

北信越リーグ1部の他2試合は、

ツエーゲン金沢(昨季3位)=荒天延期=サウルコス福井
JSC 2-1 グランセナ新潟(同5位)

3節を終えて、山雅とJSCが3連勝で、パルセイロは2勝1分け、ツエーゲンは2戦2勝。今季も、激しい覇権争いになりそうです。

<写真説明>試合後、即席サイン会で、ファンとの記念写真に応じるパルセイロの高野耕平


■Jリーグを目指すクラブの動向

▼東北リーグ1部
3節(26日)
仙台中田SC 0-3 グルージャ盛岡(昨季優勝)
塩釜FCヴィーゼ 0-6 福島ユナイテッド(今季昇格)
NECトーキン 3-0 FCプリメーロ 
*グルージャ、福島U、トーキンが3連勝。5月3日、福島U対トーキンは、福島U今季初ホームという点でも注目のカード。

▼北信越リーグ2部
3節(26日)
アンテロープ塩尻(昨季2部4位) 3-2 テイヘンズ 

▼関西リーグ1部
3節(25日)
バンディオンセ加古川(昨季優勝) 3-0 FC京都BAMB 

▼中国リーグ
2節(26日)
新日本石油精製水島 2-3レノファ山口(昨季優勝) 
JFE西日本 4-1 デッツォーラ島根

▼九州リーグ
4週(26日)
三菱重工長崎 0-1 沖縄かりゆしFC(昨季優勝)
ヴァンクール熊本 0-5ヴォルカ鹿児島 
*ヴォルカ4連勝、かりゆし3戦3連勝。

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
Photoニュース
4/26長野パルセイロ-1(vs.ヴァリエンテ) 2
4/26松本山雅(vs.上田ジェンシャン)


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