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Jを目指せ! by 木次成夫

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第139回「東北1部 福島ユナイテッド対NECトーキンFC」
by 木次成夫

 東北リーグ1部は3節を終えた時点で、グルージャ盛岡(昨季優勝)、NECトーキンFC(同2位=当時はNECトーキン・サッカー部)、そして福島ユナイテッド(今季昇格。以下、福島Uと略)の3チームが3連勝で並んでいました。

5月3日
福島U 2-0 NECトーキン

 福島Uは昨季に続いて、今季も大補強を敢行しました。新加入選手、18人。トップチーム登録31人中、元Jリーガーは11人。今や、豪華な布陣という点では、日本各地の地域リーグ所属クラブ随一です。

 クラブ代表を務める横田篤氏らが“Jリーグクラブを作る”任意団体として「福島夢集団」を作って以来、8年目。大企業や自治体のトップダウンではなく、ゼロからのボトムアップ・ムーブメントとして現在に至っています。文字通り“夢集団”です。

05年=新生チーム、ユンカースとして県3部リーグ参加(西ブロック優勝)
06年=県2部2位(県1部昇格)
07年=東北2部所属ペラーダ福島の運営を引き継ぎ、2部2位(優勝はビアンコーネ福島)
08年=福島ユナイテッドFCに改称。夜間練習から昼間練習に移行。東北2部南ブロック優勝。

 ちなみに、06年シーズン終了時点で“Jを目指す”クラブとして勢いがあったビアンコーネ福島は昨季開幕前に運営会社が経営破たん。設立直後のバリエンテ郡山との合併を画策したものの、結果的に、“Jを目指さない”一般的アマチュア・チームとしてリスタートしました。そして、東北1部昇格1シーズンで2部降格。また、バリエンテ郡山はチーム存続しているものの、発足当初の勢いは、ありません。

 福島Uのトーキン戦メンバーは、以下の通り(*印は今季加入選手)。フォーメーションは、公式記録では4-4-2ながら、実質的には4-3-3でした。

[スタメン]
*GK、内藤友康(22歳、前・山形)
右SB、小田切啓(23歳=2年目、前・古河千葉)
CB、青柳雅信(23歳=2年目、前・ガイナーレ←湘南)
CB、時崎 悠(29歳、前・水戸)
左SB、金 基洙(26歳=2年目、前・水戸)
*MF、清水純(23歳、前・バンディオンセ加古川=昨季関西1部優勝)
*MF、片原 潤(23歳、前・バンディ←ジェフ)
*MF、金 功青(22歳、前・流通経済大学)
*右FW、深澤幸次(24歳、前・栃木SC)、
CF、時崎 塁(26歳、前・ラスティング郡山)
*左FW、村瀬和隆(23歳、前MIOびわこ草津←V神戸)

[サブ]
GK、清野雄大(24歳=2年目、前ガンジュ岩手)
*DF、吉渓 亘(22歳=前・流通経済大学)
MF、桑原 剛(23歳=2年目、前・札幌)
MF、間下浩延(23歳=2年目、前・作新学院大学)
*MF、金生谷 仁(23歳=前ザスパ、浦和Y出身)
*FW、角田充弘(23歳、前NECトーキン)
*FW、山下亮介(23歳、前・町田ゼルビア)

[得点経過]
1分 1-0
得点=時崎悠。FK→ヘディング

53分 2-0
得点=村瀬。右サイドから深澤がドリブルで内に切れ込み、左サイドから内に入ってきた村瀬にパス→右足ダイレクト・シュート

 トーキン戦は今季初ホーム。観衆は1118人(公式発表)。無料とはいえ、「多くて驚きました」と横田代表に言うと、「僕もです」という返事。子供向けサッカースクールなど下部組織整備を進めつつ、トップチーム選手とファンが交流できる場を積極的に作ってきた成果が出てきたという感じです。

 例えば、この日――、

 キックオフは13時半。試合後、選手たちはユニフォームのまま、スタンド裏に移動して観客の見送り。その後、休む暇もなく、“ファンとのつどい”と題したイベントのために、再びピッチへ。選手に関する質問にファンが答える○×ゲームの後に、選手と子供でミニサッカー。最後は記念撮影、サイン、会話など。そして、夕方5時近くに、いわば“お開き”。

 選手たちが総じてニコヤカかつ真剣だったのが印象的でした。当然、子供ファンも、その親も満足げ。中でも小田切が子供を抱いて走り出した際(文頭の写真)は、“この親しさは何?”という感じ。「週1回、下部組織のスクールでコーチをしています」(横田氏)とはいえ……。

 ちなみに福島U、元Jリーガーは多いものの、下部組織の常勤コーチを務める時崎悠、青柳、桑原、金(基)以外は、全員が一般的な仕事とサッカーを両立させています。例えば、新加入の村瀬は「スーパーマーケットで働いています」(横田氏)とか。

 相対的に大規模な補強はしたものの、運営資金が潤沢というわけではないようです。その証が、胸スポンサー部分がテープ状に修正されたユニフォーム。青柳いわく「昨季のスポンサーを隠すためなんです」。つまり、現状では胸スポンサーが“ない”上に、昨季と同じユニフォームを使っているということです。

 とはいえ、そんな状況でも青柳は不満を口にするどころか、「できるだけ長く、ここ(福島U)にいたい」と意欲満々でした。筑陽学園(福岡県)時代に同級生の桑原らと共に全国高校選手権準優勝を達成してから、6年目。サッカーで“上のカテゴリーを目指す”だけでなく、例えば接客業のように、個人レベルの反応が直に伝わってくる点に“新たな”魅力を感じているのでしょうか。実際、サインが一段落した後も、ピッチを去るのではなく、暇そうなファンを探して、話しかける様を見て、自覚の高さを実感しました。

 ところで、肝心の試合ですが……、

 新戦力の活躍で勝利し、グルージャ盛岡と得失点差で首位にたったものの、元Jリーガーを多数擁する割には、期待はずれの内容でした。全国地域リーグ決勝大会出場を目指すチームとしては、例えば、1週間前に見た長野パルセイロに比べると、選手の状況判断が“かなり”遅い上に、人とボールの動きが“はるかに”単調。NECトーキン・サッカー部の休部後、一般クラブとしてリスタートした“新生”トーキンが善戦したともいえますが、福島Uのチーム熟成が遅れているのは明らか。銀行員ゆえに「土日しか練習に出られない」時崎塁(悠の弟)が今季初スタメン出場を果たし、健闘した点に驚きつつ、“喜んでいる場合ではない”とも――。

 ちなみに時崎弟、DFもこなせますが、「(スポーツ推薦ではなく)指定校推薦で大学に入学して、体育会サッカー部にも入ったんですが、遠征費など経費的な事情で退部しました。その後は、サークルでプレーしましたが、(現在に至る過程では)サッカーから離れていた時期もあります」(本人)。

 つまり、銀行員をしつつ、選手として成長してきたわけで……、凄すぎ!です。

▼Jリーグを目指すクラブの動向

・東北リーグ1部
4節(3日)

グルージャ盛岡(昨季優勝) 4-3 盛岡ゼブラ

・関西リーグ1部
4節(5日)

ASラランジャ京都 0-2 バンディオンセ加古川(昨季優勝) 

・中国リーグ
4節(3日)

マツダSC 0-2レノファ山口(昨季優勝) 

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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