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Jを目指せ! by 木次成夫

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第140回「JFL前期10節 町田ゼルビア対V・ファーレン長崎」
by 木次成夫

 JFLは前期9節終了時点で1位=ガイナーレ鳥取(勝ち点20)、2位=ジェフリザーブズ(同19)、3位=SAGAWA SHIGA(同18)、4位=横河武蔵野(同17)……。ガイナーレ以外のJリーグ準加盟クラブは、8位=ニュウェーブ北九州(同12)、11位=V・ファーレン長崎(同11)、13位=町田ゼルビア(同10)。そして、17位=FC琉球(同4)、18位=三菱水島FC(同4)。

 気が早いですが……、

 J参入1チームの場合=JFL17位と全国地域リーグ決勝大会3位が、入れ替え戦。

 J参入2チームの場合=JFL18位と“地域決勝”3位が、入れ替え戦。

 入れ替え戦はホーム&アウェーで、初戦がJFLチームのホーム。もし、北信越や東北のチームとFC琉球の対戦になれば、気候的にも“史上稀に見る”過酷な戦いになる可能性がある上に、ファンのアウェー観戦経費も相対的多額に、なります。

▼5月10日
町田ゼルビア1-1VV・ファーレン長崎

 晴天に恵まれたことも好影響したのでしょうが、観衆2514人。ゼルビアにとっては今季最多。ちなみにV(ヴィと発音)・ファーレンは、9節のホーム、ジェフリザーブズ戦で雨天ながらも4178人を記録。昨季の”地域決勝“が開催された石垣島でも感じたことですが、地元マスコミの報道も影響しているでしょう。この日のゼルビア戦も、長崎からの取材陣が複数いました。

[得点経過]
7分 1-0
(ゼルビア=大江勇詞)
*6分にFW山腰泰博が負傷退場し、大江(23歳=今季加入、前MIOびわこ草津、元・神戸)が交代で出場。ボランチ石堂和人(27歳、前・松本山雅)のクロスを絶妙のタイミングでヘディング・シュート。石堂の“左足の精度”が際立っているとはいえ、なぜか、石堂も大江もフリー。ちなみに大江は173㎝と小柄で、ヘディングを得意にしている選手では、ありません。V・ファーレン側から見れば、“ありえない”と言いたくなるようなシーンだったと思います。

22分 1-1
(V・ファーレン=田上 渉=PK)
*序盤から守勢だったV・ファーレンが、数少ないカウンターのチャンスにPKをとり、田上(27歳、前・大阪商業大学←国見高校=大久保嘉人らと同学年で、3年時は主将としてインターハイ、国体、全国選手権の三冠達成)が左足で落ち着いて――。

[ゼルビア総括]
 前半から優勢に進め、後半は“どちらかというと”圧倒。山腰の交代後、前線は大江、半田武嗣(168cm、23歳=今季加入、前・国士舘大学)、蒲原達也(170cm、26歳=2年目、前FC琉球=鳥栖からレンタル)、酒井良(174cm、31歳、前・草津)と、揃って、ドリブルで切れ込むプレーを持ち味にしているタイプ、かつ小柄。80分に半田と交代出場した飯田 亮(162cm、22歳=今季加入、前・新潟経営大学)も同様。チーム全体的にラストパスと“点で合わせる”動きがイマイチながら、多彩なアタックは“JFL史上随一のスペクタクル”だと思うほどでした。

[V・ファーレン総括]
 暑さ(30.8度=公式記録)による疲労が影響したというよりは、ゼルビアの戦術にハマってしまったという印象です。カウンター攻撃から得点をあげるチャンスもありましたが、試合を通して見ると、全体的に“引きすぎ”。ゼルビアがサイドの深い位置まで切れ込むため、ボールを奪っても、目指すゴールが遠い上に、攻守の切り替えも遅れ気味。東川昌典監督は試合中再三、“(DFラインを)上げろ”ら大声で指示したものの、修正できませんでした。

「前線との距離が開きすぎて、対応が難しかった。疲労という点では、2日連戦のある九州リーグの方がキツかったです」(ボランチでプレーした田上)。

 ちなみに田上、開幕からスタメン・フル出場中ですが、V・ファーレン加入5年目の今季、念願のプロ契約に至り、「コンディション調整が楽になりました」(本人)とか。銀行、保険会社勤務などを経て、プロとして“Jリーグ直前”に至れたことが“新たな”モチベーションになったのかもしれませんが、一見して明らかなほど、体型が“ひき締まり”ました。

JFLはドングリの背比べ
 例えば、V・ファーレンはガイナーレ(10節終了時点で首位)に2節で1-2、ジェフ(同2位)に9節で1-2。ともに敗れたとはいえ、接戦を演じました。7節でガイナーレに0-1、8節でホンダ(同6位ながら、昨季は優勝)に1-1のゼルビアしかり。ゼルビア戦後、V・ファーレンの東川監督いわく「要は、うちの選手が“根性無し”ということです」。厳しい言い方ですが、「頑張ればJリーガーになれるのに……」とも口にしたのが、印象的でした。同監督は64年生まれの44歳。日本リーグからJリーグへの移行を経験した“ハザマの世代”です。Jリーガーとしてプレーしたのは、ジュビロ磐田“J加入1年目”の94年シーズンだけで、その後、JFLのホンダに移籍。つまり、選手としての全盛期とJリーグ創設のタイミングが“ズレた”世代ゆえ、特別な思いがあるのかもしれません。

ゼルビア魅力“追加”その1
スタジアムグルメ

 ゼルビアは町田市営陸上競技場でホーム試合開催をする際、スタジアム外での飲食品販売にも気を配っています。ビールなど毎試合販売しているものもある上に、いわば、“日替わり”グルメも、あるのです。初ホームの2節まで振り返ると、例えば、トルコのケバブ、ギリシャのスブラキ(要は、焼肉)、イタリアのピザ、そしてV・ファーレン戦はドイツ風ソーセージ。いわば、世界旅行気分も味わえる上に、CWC(クラブワールドカップ)出場の夢も高まるかもしれません。

「業者に頼んで、試合後ごとに多少、店を変えています。そうした方が観客に喜んでもらえると思って――」(ゼルビア企画営業部、大友健寿氏)とか。試合後、タイミング良く到着したゴミ収集車に試合告知(文頭の写真)が記されていた点を含めて、素晴らしい策だと思いました。

ゼルビアの魅力“追加”その2
ツヴァイテ(2軍)

 V・ファーレン戦後、夜7時から、隣の相模原市にある相模原北公園内多目的広場で、町田ゼルビア・ツヴァイテと神奈川県1部所属の「さがみ大沢FC」の練習試合がありました。ツヴァイテは、いわば2軍で、東京都3部に所属。ジェフリザーブズのような“若手中心のトップ予備軍”ではなく、監督兼選手の大友氏(ゼルビア企画営業部)を含めて元トップ経験者が多いのが特徴です。今季は、加賀山 慎(現・企画営業部、JFL実行委員代理)、竹中 穣(現・トップチーム・コーチ)ら昨季までトップ所属だった”大物“が多数加入しました。クラブを離れて、外部の仕事に専念する道を選んだ選手も「仕事に慣れた時に戻ってくれば良いと思って登録しました。ただ、現状としては、参加できない選手も多いですが……」(大友氏)とか。

 この日は、竹中コーチが不参加だったものの、大友、加賀山両氏は、運営業務を終えた後に合流。練習不足と蓄積疲労が明らかでしたが、随所に全盛期の片鱗を感じさせるプレーを披露。ちなみにツヴァイテのユニフォームはトップチームが昨季使用していた「“お下がり”です」(大友氏)。昨季後にトップチームを去ったDF小池央祐、FW中村友昭らが、相対的にキレ味の良いプレーをしていた点も印象的でした。

 試合が終わったのは夜9時すぎ。“Jを目指す”過程で関わった選手が、プレーを続けられる環境があること自体、素晴らしいことだと思いました。是非、日本全国の“Jを目指すクラブ”には、スタジアム・グルメを含めて、パクってほしいものです。

▼Jリーグを目指すクラブの動向

・北信越リーグ1部
4節(10日)
グランセナ新潟 2-15 長野パルセイロ
ヴァリエンテ富山 0-1 ジャパンサッカーカレッジ
上田ジェンシャン 0-8 ツエーゲン金沢
サウルコス福井 1-5 松本山雅
*山雅とジャパンSCが4連勝。パルセイロ=3勝1分け。ツエーゲン=3連勝(1試合延期中)。次節(17日)はパルセイロ対山雅の信州ダービーと、ジャパンSC対ツエーゲンなど。いよいよ、上位どうしの“つぶしあい”が始まります。

・北信越リーグ2部
4節(10日)
丸岡フェニックス 1-2 アンテロープ塩尻

・関西リーグ1部
5節(10日)
バンディオンセ加古川(昨季優勝) 3-2 阪南大クラブ 
*バンディは4勝1敗。得失点差でASラランジャ京都に次ぐ2位
 
・四国リーグ
4節(10日)
カマタマーレ讃岐(昨季優勝) 9-0 三洋電機徳島(観衆2202人)
南国高知FC 1-1 南クラブ
*カマタマーレ4連勝。ヴォルティス・セカンドと得失点差で首位。南国高知は1勝2分け1敗で5位

・中国リーグ
6節(10日)
レノファ山口(昨季優勝) 0-2 デッツォーラ島根
*連覇を狙うレノファは、想定外の3位。デッツォ=5位、首位=NTN岡山

・九州リーグ
5週(10日)
九州INAX 1-2沖縄かりゆし(昨季優勝)
ヴォルカ鹿児島 3-2 海邦銀行
*首位=ヴォルカ(5連勝)。かりゆし“まさかの”敗退で、通算3勝1敗(1試合未消化=暫定3位

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
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5/10 [JFL]町田ゼルビアvsV・長崎
1/2/3/雑感

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