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Jを目指せ! by 木次成夫

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第141回「「信州ダービー 長野パルセイロ対松本山雅」
by 木次成夫

5月17日
北信越リーグ5節
長野パルセイロ 2-2 松本山雅

 観客数、1990人(公式発表)。雨天に加え、スタンドに屋根がないことと、長野県内のCATVネットワークで試合中継があったことも影響したのでしょうが、予想外の少なさ。一見して、パルセイロ・ファン席に“空き”が目立ちました。

 ちなみに、昨季のパルセイロ・ホームでの同ダービーは、最終14節(9月7日)に開催され、観客数、3385人(天候=曇り)。結果は1-0でパルセイロが勝利。“勝てば、優勝”という状況も、多くのファンを惹きつけた要因でしょうが……。

 ただ、先週末に各地で行われた試合と比べると、“さすがは、信州ダービー”というべきなのかもしれません。チケット代が様々ゆえ、一概に比較はできませんが、例えば―ー。

JFL前期11節(17日)
[滋賀ダービー]
MIOびわこ草津 3-2 SAGAWA SHIGA FC
(観客=1283人、天候=雨)
*大津市(皇子山)開催。SAGAWAの本拠は守山市。MIOは4月のジェフ・リザーブズ戦で見た際、「パス&ラン」の魅力的サッカーをしていたのが印象的でした。関西ではトップの“Jを目指す”クラブチームという点でも期待しているのですが……。


ガイナーレ鳥取 0-0 ニューウェーブ北九州
(観客=1438人、天候=雨時々曇り)
*ガイナーレは首位。つまりJリーグ参入目前。その割には……。


中国リーグ7節(17日)
[山口ダービー]
レノファ山口 1-3 FC宇部ヤーマン
(観客=600人、天候=雨)
*昨季11勝5分けで優勝を飾ったレノファは、3勝2敗1分(勝ち点10、1試合未消化)の大苦戦中で、4位。首位=NTN岡山(勝ち点16)で、2位=佐川急便中国(同13)、3位=ヤーマン(同13)。

J2=15節(17日)
栃木SC 1-1 ロアッソ熊本
(観客=2349人、天候=曇り)
ファジアーノ岡山 1-3 愛媛FC
(観客=3233人、天候=雨)

[南長野運動公園]
 日本は、なぜか、公園の一部分としての競技場が多いのですが、パルセイロ・ホームの南長野運動公園総合球技場も同様です。長野五輪の開閉会式会場を改修した野球場(オリンピック・スタジアム)の他、体育館、テニス・コートなど体育施設に加え、人口池など“公園らしい”環境も充実しています。自然に恵まれた地域に、あえて“人工の自然を造る”意図がイマイチ理解できませんし、そもそも、単体の競技場だけ造って、周囲に商業施設を誘致した方がコストパフォーマンス的にも良いと思うのですが……。

 総合球技場は、スタンドに屋根がないだけでなく、雨合羽などの着替えや、応援用横断幕を用意(片付け)する際に“あったら嬉しい”軒下も、ありません。つまり、夏の日差しを避ける場も“ない”わけです。運営関係者用のテントはあったものの、記者用はナシ。字が雨で滲んだらどうするのかと思いきや、とある記者は、大きめのビニール袋にノートを入れて、メモをとる際には手を入れていました。“頭が良い”とは思いましたが……。

[4節終了時点]
1位=山雅(勝ち点12=4勝)
2位=ジャパン・サッカーカレッジ(同12)
3位=パルセイロ(同10=3勝1分け)
4位=ツエーゲン金沢(同9=3勝=1試合未消化)

[得点経過]
 パルセイロは「パス&ラン」で“つなぐ”普段のサッカー。対する山雅はボランチの斎藤智閣、サイドアタッカーの今井昌太を今季初スタメンで起用するなど、一見して守備重視のカウンター狙い。パルセイロは先制するなど優勢に試合を進めたものの、後半、退場者が出たことが影響して、勝ちきれず。

41分 1-0
(得点=パルセイロ=PK、MF土橋宏由樹=元・甲府)
*あっけない“ありがち”なシーンでした。足元でつなげば、パルセイロの追加点も“ありえる”と思ったほど。

57分 パルセイロ・ボランチ、大橋良隆(今季加入=前NECトーキン)が2枚目の“イエロー”で退場。攻守の中心的存在ゆえ、影響は多大でした。

75分 1-1
(得点=山雅、CF柿本倫明=前・湘南)
*CK後、ゴール前の混戦で“こぼれた”ボールを豪快にシュート。

79分 2-1
(得点=パルセイロ、FW藤田 信)
*ファウルの判定への異議などで集中力を欠いた状況下、CB籾谷真弘(前・ザスパ)のFKに藤田(前フェルヴォローザ石川・白山)が合わせた、絶妙かつ巧妙な得点。

82分 2-2
(得点=山雅、FW小林陽介=今季加入、前ロアッソ)
*CKキック→後半途中出場の小林がヘディング・シュート。

[山雅総括]
 試合後、山雅の吉澤英生監督は、満足げな表情でした。「最低でも勝ち点1を狙ったゲームプラン」(同監督)を達成できたからでしょう。実際、選手交代を含めた采配は、大当たり。ただ、ボールと人の動きが相対的に単調な点は、相変わらず。今井や大西康平らが個人能力で相手をかわして、決定的チャンスを演出する“メイン・パターン”は、昨季と同じ。守る側からすれば、ボールの動きが予想しやすいサッカーです。今井と大西のキレが良かったゆえに、もし、2人が昨季同様に過労で負傷したら……、チーム全体でカバーするイメージが沸きません。

[パルセイロ総括]
 試合後、大橋いわく「(退場になった)僕の責任です。すみません」。とはいえ、現時点の実力では“JFLに最も近い”チームだと思います。

「他のチームに行きたいと考えたことは、ありません。みんな、このチームで上に行きたいと思っています」(主将の籾谷=加入3年目)

「勝てる試合だったので残念ですが、(パルセイロは)プレーしていて、楽しいです」(右MF野澤健一=今季加入、前・佐川印刷)

 今後の課題は、いかにファンを増やせるか。言い方を変えると、相対的に強い上に、魅力的なサッカーをしている状況にも関わらず、なぜ、人気が高まらないのか、不思議です。

[試合後の松本駅付近]
 試合後の夜、松本市に寄り、繁華街を歩きました。“アフター・サッカー”の盛り上がりに期待したのですが、閑散とした光景に、唖然。一般的に、日曜日は早めに帰宅する習慣の人が多い地域性なのかもしれませんが……。

 例えば、10年以上前、Jクラブのある町で、勝てば“祝杯”、負ければ“ヤケ酒”、いずれにせよビールなど1杯無料というサービスをしている飲み屋を多数発見し、地域密着を感じたことがあります。試合結果をチェックした後に店頭で告知する点も、“さすが”という感じ。せっかく、地域リーグ随一のファン数を誇るまでに至ったのですから、松本も、そんなノリになってほしいと思います。例えば、「松本名物、Jリーグを目指す松本山雅の試合放映中」という店があれば、立ち寄りたかったです。

 また、山雅運営関係者も、現状以上に“できること”があるのではないか、とも思いました。例えば、山雅のポスターを貼ってくれている居酒屋で、スタッフも参加する祝勝会(勉強会? 意見交換会)を“割り勘で”開催するとか……。Jリーグという“大きな”夢に向けて、目先の“小さな”利益を日常的に得られる方が飲食業関係者も嬉しいし、クラブを応援するモチベーションが高まるのではないでしょうか。

▼その他、Jリーグを目指すクラブの主な動向

・北信越1部
5節(17日)

ジャパン・サッカーカレッジ(JSC) 1-1 ツエーゲン金沢
グランセナ新潟 2-1 上田ジェンシャン
ヴァリエンテ富山 0-2 サウルコス福井 [順位]
1位
松本山雅(勝ち点13)4勝1分(+11)
2位
JSC(同13)4勝1分(+6)
3位
パルセイロ(同11)3勝2分
4位
ツエーゲン金沢(同10)3勝1分=1試合未消化
5位
サウルコス福井(同3)1勝3敗=1試合未消化
6位
グランセナ新潟(同3)1勝4敗
7位
上田ジェンシャン(同1)1分4敗
8位
ヴァリエンテ富山(同0)5敗

・北信越2部
5節(17日)
ゴールズFC 0-1アンテロープ塩尻
*アンテは4勝1敗。得失点差でテイヘンズに次ぐ2位。

・東北リーグ1部
5節(17日)
グルージャ盛岡 2-2 福島ユナイテッド
(観客=1000人、天候=雨)
*首位=福島U(4勝1分け、得失点差+10)、2位=グルージャ(4勝1分け、同+6)

・関西リーグ1部
6節(16日)
三洋電機洲本 1-0 バンディオンセ加古川(昨季優勝)  
*バンディは4勝2敗で2位。首位は5勝1敗のASラランジャ京都

・四国リーグ
5節(17日)
南国高知FC 0-2 カマタマーレ讃岐(昨季優勝) 
*首位=カマタマーレ(5勝)。南国高知は1勝2敗2分けの5位

・九州リーグ
6週(17日)
ヴァンクール熊本 1-2 沖縄かりゆしFC(昨季優勝)
*首位=新日鐵大分(勝ち点15、5勝1敗)、2位=ヴォルカ鹿児島(同15、5勝0敗=1試合未消化)。3位=かりゆし(同12、4勝1敗=1試合未消化) 

<写真>先制のPKを決めて歓喜するパルセイロMF土橋宏由樹(右側、31歳=加入2年目、前・山雅)と、土橋を祝福するボランチ塚本翔平(25歳=加入4年目、前・中京大学)

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連Photoニュース
5/16パルセイロvs.松本山雅
5/16パルセイロvs.松本山雅雑感

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JFL2009
紹介クラブリスト09
紹介クラブリスト08年以前

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