beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第146回「JFL前期16節 横河vs.MIO&TDKvs.ゼルビア」
by 木次成夫

 サッカー・クラブは、地味ながらも長らく地域に根ざした名産品のような存在に“なりえる”素材だと再認識した週末でした。ホーム・チームのファンにとって、JFL以下は、身近な「B級グルメ」。実際、現在のJFLは、牛丼チェーンの“かつての”フレーズ風に評するなら、相対的に「(選手たちが)上手い、(プレーが)速い、(チケットが)安い」。

 その上、今季は大混戦。前期15節終了時点で
1位=SAGAWA SHIGA(勝ち点30)
2位=ガイナーレ鳥取(同30)
3位=横河武蔵野FC(同30)
……
6位=ニューウェーブ北九州(同25)
……
10位=MIOびわこ草津(同19)
……
13位=TDK(同18)
14位=町田ゼルビア(同17)
15位=V・ファーレン長崎(同16)
……

 言うまでもなく、JFL以下は“チェーン店ではない”ので、それぞれに独自の個性がある点も魅力(のハズ)です。

6月20日
JFL第16節
横河武蔵野 1-3 MIOびわこ草津

[得点経過]
15分 0-1(MIO=田中大輔)
67分 1-1(横河=左SB斎藤広野、22歳=今季加入、前・中央大学)
82分 1-2(MIO=木下真吾)
83分 1-3(MIO=アラン)

[試合総括]
 観客=722人(公式発表)。混戦模様のリーグを象徴する内容と結果でした。共にパスを“つなぐ”スタイルですが、横河は“なぜか”序盤から、“つなげる”であろう状況でのクリアや大雑把なパスなど、“らしくない”プレーが散見。対するMIOは、中盤でのスピーディなパス交換をベースに、状況に応じて長短のパスを使い分けて、サイドを深く、かつ広く使うサッカーを展開。後半、横河はリズムを取り戻し、貫禄を見せつつあったものの……、最終的には集中力、スタミナ共にMIOが勝りました。

[観て、楽しいMIOのサッカー]
 横河もMIOも練習は平日夜間。横河は、横河電機社員と一般アマチュアの混成チーム(MIO戦のスタメン中、4人が一般アマチュア)。対するMIOは、ブラジル人FWのアラン(20歳=2年目、前・日本航空第二高校)とV・神戸からレンタル中のCB石澤典明(24歳)以外は、全員が一般アマチュア。経費削減のため、東京までの移動はチャーターしたバスを利用。昨季と変わったことは、「試合前夜に、みんな一緒に夕食を食べられるホテルに泊まるようになった」(MIO関係者)程度だとか。ちなみに、昨季までは経費削減策の一環か、選手に“外食用”食事手当てを支給していました。

 そんなMIOが「観て、楽しい」パス・サッカーを展開しているのですから……、夢を感じます。改めて、関西地域の“選手の受け皿”、あるいは“再チャレンジの場”として貴重な存在だとも実感しました。

 今季も新加入選手が効いています。例えば――、

ボランチ、中濱雅之(23歳、前・阪南大←C大阪U-18)
左MF、安里晃一(22歳、前・大阪産業大←V・神戸ユース)
FW、木下真吾(21歳、前・TDK←V・神戸←V・神戸ユース))

 また、横河戦はチーム随一の“ファンタジスタ系”田中大輔(26歳=2年目、前・FC岐阜←徳島ヴォルティス/大塚製薬←清水エスパルス←野洲高校、滋賀県栗東市出身)の巧さも際立っていました。昨季終盤の負傷からスタメン復帰、3試合目。本来のMFではなく、FWでの起用。今や死語になった“ゲームメーカー”という表現がピッタリ。センスに長けた選手が1人加わるだけで、チームは劇的に好転することが、よくわかりました。

[横河武蔵野FCも資金難?]
 試合当日、スタンド裏で「1口 1000円」の募金活動をしていました。横河武蔵野FCはNPO法人の運営です。プロ0人(監督も横河電機社員)のアマチュア・チームゆえ、運営費は相対的に低いハズにも関わらず……。

6月21日
JFL前期16節
TDK 1-3 町田ゼルビア 

[得点経過]
36分 0-1(ゼルビア=MF柳崎祥兵、25歳、前・駒澤大学)
55分 0-2(ゼルビア=FW酒井 良、31歳、前・ザスパ)
60分 1-2(TDK=CB小沢征敏、30歳、前・法政大学)
86分 1-3(ゼルビア=柳崎)

[試合総括]
 観客=624人(公式発表)。ゼルビアは、流れの中で3得点。やっと潜在能力を発揮したという感じですが、“楽勝しそうで、できない”点は相変わらず。

 試合後、GK三栗寛士(24歳=今季加入、前・松本山雅←駒澤大学)が“ひと際”安堵していたのが印象的でした。前節のホンダロック戦で初スタメン出場を果たしたものの、チームは敗戦。「勝って、良かったです。これが最後のチャンスだと思っていましたから」(三栗)。

[TDKの“気になる”今後]
 TDKサッカー部は今季を最後に、企業サッカー部から“Jを目指す”クラブに移行する方向で動いています。“TDK SCクラブ化実行委員会”という組織が、「8月にクラブチームの母体になる法人組織の設立を目指しています」(サポータークラブBLUE LARKS製作の“ブルーラークス通信”誌より抜粋)。

 07年のJFL昇格当時から、「上位を目指す」というよりは「限られた予算の中でベストを尽くす」という印象のチーム構成でした。例えば、ゼルビア戦スタメンのうち6人は、06年の“地域決勝”経験者。今季の登録選手数はJFL最少の20人で、TDK社員とプロの混成。ちなみに、佐々木寿生監督はTDK社員です。

 今回、TDK“ホーム”に興味を持った理由は、来季以降に向けた動きでした。しかし、現状としては、例えば、TDKが資本参加して運営会社を作るのか、スポンサーの“ひとつ”として関わるかも含めて「具体的なことは、決まっていません」(TDKサッカー部関係者)。つまり、社員選手(監督)の“今後のサッカー人生”も未定ということ。

[秋田県にかほ市]
 TDKサッカー部の本拠は、秋田市ではなく、にかほ市です。いわば、TDKの企業城下町で、山形県境に位置しています。今季のホーム17試合中、半数以上は仁賀保運動公園多目的広場で開催。秋田市での開催は4試合のみ。ちなみに、自治体は「にかほ」で、JR鉄道駅は「仁賀保」。

 例えば、鉄道料金は、秋田→仁賀保=950円で、酒田(山形県)→仁賀保=820円。つまり、TDKの現状は、山形県の酒田方面に住んでいるファンにとっては、モンテディオ山形よりも相対的アクセス面で身近です。果たして、過去の例を踏襲して、“県民の夢”などの名目で、いわば全県区のJリーグ・クラブを作ることが良いのかどうか? そもそも、明治時代の廃藩置県をベースにした「都道府県の現状」にも疑問を感じますが……。

 Jリーグを頂点にしたサッカーが“地域密着文化”であるなら、異なった都道府県の自治体をホームタウンにしたクラブがあっても、しかるべきだと思います。新潟以北の日本海沿いに位置する“JFL以上の”クラブはTDKだけですし――。

<写真>ゴールを決めて歓喜するゼルビア主将の酒井 良(31歳、前・ザスパ)

▼Jリーグを目指すクラブの動向

・東北リーグ1部
8節(6月21日)

グルージャ盛岡(昨季優勝)5-1塩釜FCヴィーゼ
福島ユナイテッド(今季昇格)3-0 FCプリメーロ

*首位=福島U(勝ち点22、7勝1分)、2位=グルージャ(同20、6勝2分)、3位=トーキン(同19、6勝1分1敗)。

・北信越1部
9節
(20日)

松本山雅 8-0 ヴァリエンテ富山(観客=3742人)
(21日)
長野パルセイロ 9-1 サウルコス福井(観客=1214人)
ジャパン・サッカーカレッジ 2-1 上田ジェンシャン
ツエーゲン金沢 10-1 グランセナ新潟(観客=2036人)

9節終了時点の順位
首位=ジャパン・サッカーカレッジ(勝ち点23)
2位=山雅(同22)
3位=パルセイロ(同21)
4位=ツエーゲン(同19)
5位=サウルコス(同9)
6位=グランセナ(同6)
7位=ジェンシャン(同4)
8位=ヴァリエンテ(同0)

・関西1部
10節(20日)

FC京都BAMB 1-4 バンディオセンセ加古川(昨季優勝) 

*首位=バンディ(勝ち点21)、2位=アイン食品(同18)

・中国
12 節(21日)

JFE西日本 2-5 レノファ山口(昨季優勝) 

*首位=佐川急便中国(勝ち点29)、2位=NTN岡山(同28)、3位=宇部ヤーマン(同22)
4位=レノファ(勝ち点22、7勝1分3敗=1試合未消化)。

・九州10&11週
(20日)
九州総合スポーツカレッジ 2-2(PK4-2) ヴォルカ鹿児島 

(21日)
沖縄かりゆしFC 7-1 川副クラブ
ヴォルカ鹿児島 4-1 三菱重工長崎
*首位=ヴォルカ(勝ち点26)、2位=かりゆし(同23)、3位=新日鐵大分(同17)


※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
JFL2009
紹介クラブリスト09
紹介クラブリスト08年以前

TOP