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[総体]2点差跳ね返し延長勝利“一味違う”静学が悲願の初V王手(静岡学園vs.磐田東):静岡

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[5.30 全国高校総体静岡県予選準決勝 静岡学園 3-2 磐田東 富士総合]

 平成22年度全国高校総合体育大会「美ら島沖縄総体2010」静岡県大会準決勝が30日、富士総合運動公園陸上競技場で行われ、静岡学園と磐田東との一戦は2点ビハインドを追いついた静岡学園が延長戦の末、3-2で勝利。悲願の全国総体初出場へあと1勝とした。

 プリンスリーグ東海1部でJクラブユース勢を抑えて首位に立つ静岡学園だが、前半終了時点でのスコアは0-2。準々決勝で鎖骨骨折したエース・若松靖之不在の磐田東だったが、山田智章監督は「守備を徹底できる」と4-4-2システムから守備的な4-5-1へ変更して静学の攻撃力を削ぐことに全力を傾ける。

 ボールこそ保持していた静学だったが、プリンスリーグ東海2部、そして今大会と無失点を続けている磐田東の守備ブロックの堅さは素晴らしく、くさびのボールを出すことのできない静学はなかなかゴールへ近づくことができない。逆にMF山岡周平を中心とした磐田東の速攻に何度も背走させられてしまう。そして静学中のエースとして昨年の全国中学校大会優勝を経験している1年生FW渡辺準が放った決定的なシュートが磐田東GK大橋優喜のビッグセーブに阻まれると、完全に勢いに乗った磐田東を静学は食い止められなくなった。

 11分、相手のミスを突いた磐田東はドリブルで切れ込んだ山岡が強烈なシュート。GKとの接触を厭わず勇気を持って飛び込んだMF山崎章寛がこぼれ球をゴールへと押し込み磐田東が先制に成功する。一方、「磐田東のディフェンスが素晴らしかった」と川口修監督が振り返った静学は、バイタルエリアまではボールを運ぶものの、中途半端なドリブル、パスを繰り返し、鈴木辰主将と奥山義人の両CBを中心とした磐田東DF陣の前に沈黙してしまう。そして前半終了間際、磐田東は右サイドへ開いたMF杉沢祐一がマーカーを鮮やかに抜き去りラストパス。これをFW亀澤豪が頭で押し込み2-0とした。ベンチへ駆け寄って欠場した若松と抱き合って喜ぶ亀澤。盛り上がる磐田東に対し、一方の静学は下を向いたまま前半を終えることとなった。

 全国クラスの攻撃陣を擁して5年連続で全日本ユース選手権に出場し、全国高校選手権にも9度出場している静学だが、逆転勝ちは意外なほど少ない。特に35分ハーフと試合時間の短い総体では、失点すると焦り、逃げ切りを図る相手守備陣の前に攻めきれないままズルズルと敗れるのがこのチームの“通例”だった。理由はそれだけではないが、総体の全国大会出場は未だゼロ。“総体の呪縛”を知る関係者にとって2点差は「またか」と思わせる致命的なビハインドだった。

 ただ、この日の静学は違った。「このまま負けるか、1点取って学園らしいサッカーをするのか」と指揮官にカツを入れられたイレブンが“静学らしからぬ”勝負強さを発揮する。後半開始から「使う予定はなかった」(川口監督)という“フィジカル系”FW中西倫也とMF利根瑠偉を同時投入。攻撃のリズムをつかんだチームは連続のショートパスで磐田東DFを剥がしはじめると10分、右サイドでの崩しから10番MF大島僚太が放り込んだクロスを中西が頭で押し込み1点差へ迫る。直後にも左CKから最後はDF片井拓己が沈む磐田東をさらに落胆させる同点のヘディングシュート。あっという間に試合を振り出しへと戻した。

 一気に試合をひっくり返そうとする静学に対し、磐田東も選手交代を繰り返しながら必死の抵抗。粘り強く守り延長戦に持ち込むが、それでもその後半に力尽きた。静学は延長後半5分、大島のスルーパスで抜け出した中西が独走。GKに倒されて得たPKをFW篠原研吾が右足でゴールへ蹴り込み、熱戦に決着をつけた。

 DF金大貴主将が「昨年に比べて個がうまい訳ではないし、そこに頼ることはできない」と話すように、例年に比べて足技で目立つ選手はいない。加えて2年時から活躍していたエースFW鈴木健太と快足MF廣渡剛太がケガのため不在。タレントにボールを預けてその突破に期待することは難しいが、逆にチームで崩そうとする姿勢は近年になく強く、司令塔の大島と秋山一輝、星野有亮を中心に繰り出すパスワークが最大の特長・武器となっている。2点ビハインドだったが、自分たちの武器を貫いて逆転勝利。指揮官は「(ここ数年は)大事な試合で勝負にこだわり過ぎて、学園らしさを出せなかった。でも今年は(ショートパスとドリブルで崩す)コテコテの学園サッカー。学園らしさをテーマに決勝でも相手を圧倒するような試合がしたい」と言い切った。

 決勝は全国V4回など“夏の清商”と評されるほど総体に強い清水商に対し、過去8回総体県決勝で敗れているという静学が全国総体初出場を果たすことができるかが注目ポイント。“静学らしからぬ”逆転劇を演じた10年版静学は果たして、金主将が「新たな歴史をつくって全国へいきたい」と意気込むとおりに、県総体初Vを成し遂げて沖縄の地を踏むことができるか。

<写真>延長後半5分、静岡学園FW篠原が決勝PKを決める
(取材・文 吉田太郎)

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