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[MOM383]室蘭大谷MF石川勝智(3年)_予選決勝“ロングOG”の汚名晴らす豪快ミドル

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 室蘭大谷2-0四日市中央工 柏の葉]

 名誉挽回の一撃だった。前半18分、MF石川勝智(3年)が約30mの距離から思い切りよく放ったミドルシュートが豪快にゴールネットに突き刺さる。度肝を抜く圧巻ミドルで室蘭大谷(北海道)が勢い付いた。

 「石川は道大会の決勝であのぐらいの距離からオウンゴールしているから」。及川真行監督は冗談交じりに貴重な先制点を称えた。

 選手権道大会決勝・帯広北戦。それまで無失点で勝ち上がってきた室蘭大谷の初失点は思わぬ形で生まれた。ハーフウェーライン付近で味方からのスローインを受けた石川がGKまで長いバックパス。これがGKの頭上を越え、まさかのオウンゴールとなった。

 その後PKで2失点目を喫したチームは結局、後半に3点を奪って3-2の逆転勝ちをおさめたが、石川にとっては「監督とかチームメイトが声をかけてくれて後半は気持ちを切り替えられたけど、そのときはつらかった」という忘れられない苦い記憶だった。

 そんな汚名を晴らす弾丸ミドル。「シュートを打とうという意識は常に持っている。フリーになって前を向いたらだれもいなかったので、シュートを打とうと思った」。小学生時代はFW、中学時代はトップ下、高校1年はFW、高校2年はサイドハーフと、常に攻撃的なポジションを任されてきた石川がボランチに転向したのは高校3年になってから。それでも、今も居残りのシュート特訓を欠かしたことはない。

 背番号もシュートへの意識を高めている。高校1年から10番を任されている石川は「室蘭大谷の10番は重い」と言う。自分の前に10番を背負っていたのはコンサドーレ札幌でも10番を任されているMF宮澤裕樹。小学校時代はチームメイトだったという3学年上の先輩に「今は(宮澤の)ポジションが変わって、同じボランチですけど、室蘭大谷の10番はエースストライカー。常にゴールを決める意識を持っている」と、たとえボランチであっても試合を決めるゴールを狙い続けてきた。

 5月にはDF櫛引一紀(3年)とともに札幌の練習に参加した。しかし、櫛引がその後も2度練習に呼ばれたのに対し、自分には声がかからなかった。内定が出たのは櫛引のみ。「自分もプロになりたかった。『なんであいつが』と考えたこともあった」と正直な思いも口にした。

 それでも「今は素直に頑張ってほしいと思っている」と、チーム一丸となって選手権に臨んでいる。卒業後は大学に進学せず、地元企業に就職する。社会人でサッカーは続けるが、同世代の仲間とサッカーができるのも今大会が最後。室蘭大谷の伝統の10番は、学生最後の大会で思い残すことなく暴れ回るつもりだ。

[写真]前半18分に豪快なミドルシュートを決めたMF石川勝智

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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