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[MOM458]東京VユースFW南秀仁(3年)_「サッカーが楽しい」戻ってきたストライカーが決勝戦へ導く2発

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 日本クラブユース選手権(U-18) 東京Vユース3-1柏U-18 ニッパ球]

 戻ってきたエースストライカーが東京ヴェルディユースを決勝の舞台へ導いた。昨年末からの股関節痛の影響で約6ヵ月間に渡って、リハビリを続けていたFW南秀仁だったが、今大会直前に待望の復帰。初戦で2ゴールを決めると、決勝までの5戦で5得点の活躍。この日、行われた準決勝の柏U-18戦でも2ゴールを決め、エースFWとしての仕事を果たした。

 前半15分、柔らかなタッチのドリブルから相手GKの脇を抜く、強烈なミドルシュートを沈めた。ゴールを決めるとメインスタンドへ一直線。胸のエンブレムを握り締め、満面の笑顔で高々と人差し指を突き上げた。「ケガしていたときも、いつもずっと応援してくれているので」。ユースを応援してくれているサポーターの方へ向けて、咄嗟に思いついた“感謝”のゴールパフォーマンスだった。そして前半23分にも自らのシュートのこぼれを押し込み、追加点を決めると、後半38分にはMF中島翔哉のゴールをアシスト。「まだまだ3割くらい」と話すコンディションながら、能力の高さを見せつけた。

 しかし試合後のロッカールームではチームスタッフから雷を落とされた。「お前がのらりくらりやっているサッカーはトップがやっているサッカーと違う」。2点を決めた南へ厳しい一言が浴びせられた。だが、それも期待の高さからくるもの。楠瀬直木監督は「確かに2点を決めたけど、毎試合取っている訳じゃない。FW宇佐美貴史(バイエルン)とかは同年代の試合だと毎試合取っていた。このくらいでお山の大将になっているんだったら、日本を代表するストライカーになれない」と話す。南に求められているのは高校生年代での圧倒的な活躍ではなく、その先での活躍を見据えてのものなのだ。

 また、故障前と現在ではプレースタイルが変化し、以前のような反転しての技ありシュートやパワフルなドリブルからのシュートは少なくなった。それでも「6ヵ月サッカーをやってなかったら、元に戻るのには1年はかかるはず。今はとにかくサッカーが楽しい」と本人は気丈に話す。強引に体を張ってのポストプレーが少なくなった分、逆に視野が広がり、無意識のうちに簡単にはたいて周囲を使うプレーが身についた。完全復活を果たしたとき、両方のプレーができるようになれば、故障中の経験がプラスに働くはず。耐え続けたリハビリ期間を無駄にするわけにはいかない。

 今後は故障前に招集されていたU-18代表候補に呼ばれる可能性もあるが、本人は「代表よりも今はとにかくユースで頑張りたい」と力を込める。さらには昨夏にはJデビュー戦でゴールを決めているため、トップチームでの出場も期待されるが「まずは、この(ユースの)メンバーとやりたい」と苦楽をともにしてきた仲間たちと、共にプレーすることを強く希望する。今季は故障で出遅れたが本人は先を急ぐつもりはない。6ヵ月で失ったものを一つずつ取り戻し、かつての自分に追いつき、追い越していくつもりだ。そのためにも、まずは決勝戦で再び日本一のタイトルを手に入れるだけでなく、昨年は決められなかった自らのゴールでチームを勝利に導き、昨夏の自分を超えたいところだ。

(取材・文 片岡涼)
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