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日本vs北朝鮮 試合後のザッケローニ監督会見要旨

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[9.2 W杯アジア3次予選 日本1-0北朝鮮 埼玉]

 日本代表は2日、埼玉スタジアムで北朝鮮代表と対戦し、1-0で競り勝った。0-0で迎えた後半49分にDF吉田麻也(VVV)が劇的な決勝点。W杯アジア3次予選初戦で勝ち点3を手にし、14年のブラジルW杯へ白星スタートを切った。
以下、試合後の監督会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「イタリアの地方に、1滴1滴が海になる、小さいものでもたまっていけば大きな海になるという格言がある。試合内容に関しては、データを見れば分かるが、日本が66%ボールをキープして、シュートも20本以上打ち、相手は5本に終わった。
 外から見ていただいたとおり、難しい試合になった。北朝鮮の試合は何試合も見ていたが、今日の彼らのパフォーマンスはとてもよかったと思う。非常に組織化されていて、集中力を高く保っていて、気持ちの準備ができていたチームだなと思った。彼らは引いてコンパクトにして、入ってきたボールに対してはアグレッシブにいくという戦い方を選んできた。かなりまとまったチームだった。
 そういった戦い方をされた中で我々に必要だったのは我慢しながら戦うこと、冷静さを失わないことだった。我慢してボールを回して、中であったりワイドであったりを突いていこうとしたが、精度とスピードのところでやや物足りなかったかなとも思う。
 ボールポゼッションを高めた中で、そのリズムを保つのは難しかったと思うし、実際に後半のところでほころびが出た。最後の最後までなかなかボールがゴールに入ってくれなくて非常に我慢を強いられた。日本が勝って当然の結果だと、この試合を見れば言えると思う。ずっと私たちが攻めていた」

―「1滴1滴」というのは選手の頑張りか、我慢か?
「我々の海というのは順位表の中の順位であって、1滴は勝ち点と言える。今日の試合も我慢しながら一致団結して、そのタイミングを待つといううちの強みが出たと思うし、後半から入った選手がすぐに活躍してくれた。これは団結力のあるチームでないとできないと思う」

―台風で風も強い中での試合だったが? コイントスで風下を取ったのは?
「それはキャプテンに確認してみます(笑)。私自身、海辺の近くの出身で、海辺の近くに住んでいて、そういった意味では風には慣れているはずだが、この種類の風にはあまり慣れていない。風が強いときのセオリーとしてはボールをグラウンダーで動かすというのがある」

―精度とスピードに問題があったと言ったが、本田がいない影響を感じたのか?
「あとから入った選手がよくやってくれたが、彼らがよくできた理由は、前半からうちがボールを支配したことで相手がだんだん疲労し、ほころびが出てから、あとから入った選手にスペースが生まれ、チャンスが出たと思う。そういった意味では最初からプレーした選手たちも称賛を送らないといけない」

―本田と長友の欠場はどれだけチームに響いたか?
「2人と同じ選手はいないのは確かだし、同じ選手は存在しない。代わりに入った選手と比較するのは難しい。戦い方も変わる。ただ、本田、長友の代わりに入った選手にも100%満足している」

―ハーフナーを投入して機能したように見えたが、チームとしてオプションになるか?
「同じストーリーのゲームはないと思っている。このゲームに関しては、相手がかなり引いてきた。李と違うタイプのFWがベンチにいたので投入しようと思った。李は素早い動きで攻撃を活性化する役割をしてくれるが、今日の状況にはハーフナーが適していると思った。違うタイプの選手が入ったことで、対戦相手も精神的に影響があったのかなと思う」

―ハーフナーを入れてもロングボールをどんどん入れることはしなかったが?
「日本はグラウンダーでつないで速いコンビネーション、そこから裏を取るという攻撃をしてきたし、そういったスタイルにも慣れている。そのスタイルから新しいスタイルに急激に変えるのは難しい。ああいう戦い方には慣れていないのかなとは思う。狭いスペースで相手が詰めてきたこともあり、コンビネーションを発揮できなかった。その中で違うオプションを使ったほうがいいのかなと頭をよぎり、ハーフナーを投入した。相手の選手はメンタル的にやられているなという印象を受けた」

―前半は選手の動きが重かったように見えたが、初戦の重圧からか、それともピッチが影響したのか?
「どちらでもないと思う。北朝鮮の戦い方をほめるべきで、相手がよかったと素直に言うべきだと思う。なかなかスペースを与えてくれず、コンパクトに後ろで守って、中盤もアグレッシブにやってきて、センターフォワードから守備に参加してくる戦い方をしてきた。我々としてはやるべきことをやったが、唯一足りなかったのはサイドのところでもう少しオフザボールの動きだった。ただ、北朝鮮も90分間、あのリズムでアグレッシブに守るのは簡単ではないなと思っていた。あえて課題を挙げるとすれば、普段よりパスミスが多かったと思うが、それも説明がつく話で、相手がスペースを閉じてきて、狭いスペースの中でスピードを上げて崩していかないといけなかった。スピードを上がればミスの確率は上がる」

―初めてW杯予選を経験して、初戦を終えてどう思ったか?
「厳しい戦いになるのは想定内だった。アジアチャンピオンである日本に対して、どこのチームも最高のパフォーマンスを見せ、ベストの試合をしてくるのは想定内。当然、日本はそういう役割を担っていかないといけないし、個人的にもそういう役割を担うことは嫌いではない。困難があるのは想定内だった。当然、90分間で勝ち点3を取りたいと思っていたし、選手にも我慢が必要だという指示は出していた。今後の試合に関しても、対戦相手が今日のようにまとまってくるのは想定している。ただ、我々は志の高い集団なので、引いてくる相手にも、オープンにやってくる相手に対しても戦い方を覚えないといけない」

―我慢していれば必ず勝てるという確信があったのか?
「我々は90分の間に相手より確実にチャンスを多くつくるチームだし、今日も実際にそうだった。攻守ともにチームとしてもうちの方が上だと思っていた。いつか来るだろうという思いはあった。ボールがゴールに入る確信はないが、そこまでのチャンスをつくる確信は持っている。チームには『最初の数分はアグレッシブにいって、数分たってからはいつも通りの戦いで相手を引き出していこう』と指示していたが、北朝鮮の方が引いたまま、表に出てこなかった」

(取材・文 西山紘平)

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