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柏は代役CBコンビが奮闘。10人で完封し増嶋「“やった感”がある」、安「山場を乗り越える力がある」

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[10.2 J1第28節 鹿島0-1柏 カシマ]

 まさに持てるすべてを出し尽くした。試合終了の笛が鳴ると、柏レイソルイレブンはうれしさと共に、ぐったりと疲れきった表情も見せた。DF増嶋竜也はピッチ上で大の字に寝転がり、天を見上げた。前半42分にDFパク・ドンヒョクが2枚目のイエローカードを受けて退場してからロスタイムを含めて約55分間、10人で耐え抜いた。

「マジでしんどかった。1人少ない状況になったけど、一人ひとりが役割をこなしてくれたので、隙はなかったと思う。鹿島相手に1人少ない状態で、しっかりと守りきってチャンスの時は攻められた。“やった感”があります。自分としては、こうしてチャンスをもらったので、どうにかして結果を出したいと思っていた」

 リーグ戦12戦目にして初めての、ナビスコ杯を含めても04年以来7年ぶり2度目のカシマスタジアムでの勝利となったが、代役CBコンビが奮闘した。この日、DF近藤直也が出場停止で欠場し、代わりに増嶋が2試合ぶりに先発復帰した。増嶋はCBの3番手で、近藤とパクが怪我や出場停止で出られないときに出番が回ってくる。ネルシーニョ監督の評価を変えるためにも気合が入っていた。

 前半31分に先制に成功したが、このあと悪夢が待っていた。同42分にパクが退場し、一人少ない状況となった。チームの勝利を、そして自身のアピールをと考えていた増嶋にとっては、辛い状態に立たされた。その2分後、北朝鮮代表MF安英学がFW田中順也に代わって緊急出場。本来はボランチだがCBに入り、増嶋とコンビを組んだ。安にとっては8月24日のG大阪戦(0-2)以来6試合ぶりで、今季リーグ戦2試合目の出場だった。

 いきなり、厳しい状況の中で投入された形だったが、「ウォーミングアップは十分ではなかったけど、こういう時に備えて準備をしていたつもり。(アップは不十分でも)何とかチームの勝利に貢献したいという気持ちが上回った」と安。増嶋とコミュニケーションを取りながら必死に守った。安も今年で33歳になるベテランとして、どんな状況でもチームに貢献できるところをアピールしたい思いがあった。

 それでも、気持ちだけでは勝てないのがサッカー。そこは、経験豊富な2人。集中力などメンタル面で負けないことはもちろんのこと、緻密な守備を繰り広げた。特に鹿島は後半、3トップにしてきたことで、余計に大変な状態となったが、ひるまなかった。

「なるべくラインを高くするようにした。田代さん(FW田代有三)とかに助走を付けさせないようにしようと思って。リスクがあってもちょっと上げて、田代さんとかにヘディングをさせないようにしようと、後ろの4人は話し合ってやった。引いたら引いた分だけ、守る方は楽になるけど、その分、相手が出てくる。だからできるだけ、上げました」と増嶋は様々な思考を巡らせながら守備をしていたことを明かした。

 この日はボランチのMF栗澤僚一が今季公式戦で初めて欠場したが、今の柏には誰が出てもチーム一丸で戦い抜く強さがある。「ピンチのシーンもみんなでカバーできた。こういうのが、レイソルの快進撃につながっているんだなと思った。みんなが勝利に向かって同じ方向を向いている。サポーターも一つになって一緒に戦っている」と安。安は出番が少なくいつも外で試合を見ることが多いが、この日久しぶりにピッチに立って、柏の強さの根源を感じ取ったという。

 鬼門を破って2位に浮上。G大阪とは勝ち点1差で食らいついている。鹿島からの勝利だけに、一層、チームに自信になる。安は「勢いがあると思いますし、我々は連敗をしていない。相手も強いチームで、それもアウェーで難しい試合だったけど、山場を乗り越える力が今のレイソルにはあると思う」と力強く言い切った。

 増嶋は「どの試合も大事だけど、アウェーで鹿島を相手に勝つことができた。今後の勢いもそうだし、優勝するうえで大事な一戦だったので、かなりデカイ1勝になった」と言う。増嶋は次節16日の山形戦も先発が濃厚だ。逆転優勝へ向け、代役も先発も関係ない。まさにチーム一丸となり、一つ一つ“Vへの階段”を登って行く。

[写真]完封に貢献したDF増嶋(右)。北嶋や水野(左)に賛えられた

(取材・文 近藤安弘)

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