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苦境を支える湘南の武器とベテランの存在

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[4.15 J2第8節 湘南3-2横浜FC BMWス]

 湘南ベルマーレの挙げた先制点は、彼らにとって、難しい時間帯に生まれていた。高い位置からプレッシャーをかけてボールを奪いにいく湘南の守備を警戒した横浜FCは、中盤を省略し、前線のFW大久保哲哉、FW永井雄一郎に当てる形で攻めていた。

「最近は前にシンプルにボールを入れられて、そこで起点をつくられて攻撃されることが増えています。でも、全部蹴らせないことは難しいので、蹴られたときにどうするか」を警戒していたとFW古橋達弥は言う。実際、繰り返しボールを横浜FCの最前線まで運ばれていたため、湘南の前線からのプレスは緩み始めていた。

 そんな時間帯に湘南は、左WB高山薫のシュートから、この日、2本目となるCKを獲得していた。ボールを置いた古橋は、前半22分に蹴った最初のCKの場面を振り返った。「(横浜FCは)ゾーンで守っていて、ニアに高い選手がいました。そこを越えればチャンスになるかなと思っていたのですが、1本目はファーサイドにボールを蹴ったんです」。この一本目のCKが先制点への布石になっていた。

 そこで相手がどう守るかを確認していた古橋は、「そのときに、うちはニアに1人だけ入っていたのですが、相手のDFがつられなかった。ベンチからも2本目のときは2、3人がニアに入れと指示がありました」と言う。実際にニアに2人が走り込むと、ニアポスト近くで守っていた相手選手がつられた。ボールがDFの頭を越したところに、FW馬場賢治が飛び込み、先制点が生まれた。

 この先制点を取ったことで、再び前からのプレスが機能する。「拮抗した展開のときにも点を取れたのは大きい。セットプレーは大きな武器になるので、これからも大事にやっていきたい」と古橋は言う。ゴールを奪われれば、相手チームは動揺する。それが今季勝利のないチームであれば、なおさらだ。

 湘南は後半の立ち上がり早々に失点を喫したが、同点に追いつかれても慌てることなく、追加点を挙げることができた。苦境に陥ったときでも点を取れる武器があることは、メンタル面でも大きな支えとなる。

 試合を終えて、無敗、そして首位の座を守った湘南。「まだまだ課題はありますし、首位にいても『僕たちは強い』なんて誰一人、思っていません。そもそも前線の選手は入れ替わっているので、また練習からしっかりやらないと次の試合に出られるかもわかりませんからね。若い選手が多いし、練習もハードなので、相当きついですけど、頑張りますよ」。そう苦笑する31歳の存在は、若いチームにとって大きな支えとなっている。

(取材・文 河合 拓)

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