beacon

【特集】09年J1ニューフェイスの決意(第11回、清水・永井雄一郎)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 今オフ、最大の衝撃となったのが清水エスパルスのFW永井雄一郎(29)獲得だ。浦和の象徴的存在でもあった「9番」の流出。浦和サポーターならずとも驚きを隠せないサプライズ移籍だった。

 伏線はあった。07年にACLでMVPを獲得し、赤い悪魔のアジア制覇に大きく貢献しながら、昨季はゲルト・エンゲルス前監督の下で出場機会に恵まれなかった。試合に出てもトップ下やサイドでのプレーを強いられ、起用法への不満を募らせた。ACL準決勝敗退後には首脳陣を痛烈に批判。一時はベンチからも外され、結局、昨季リーグ戦は26試合出場5得点にとどまった。オフの契約更改交渉でダウン提示を受けると、心は完全に浦和から離れて行った。

 03年から福田正博氏の背番号9を受け継いだ。“ミスターレッズ”の後継者として浦和ファンから期待され、愛されてきた。それでも移籍の決意は固かった。2月には30歳になる。このままくすぶっているわけにもいかなかった。「エスパルスに来ることができて本当にうれしく思う」。23日の入団会見では、まるで新人のようなすがすがしい表情を見せた。

 清水にとっても、これ以上ない最高の補強になった。就任5年目を迎えた長谷川健太監督だが、タイトルにはあと一歩のところで届いていない。過去3シーズンのリーグ戦は4位、4位、5位。05年度の天皇杯、昨季のナビスコ杯も決勝で敗れ、準優勝に泣いた。早川巌社長が課題に挙げる「勝負強さ」を克服するためにも、優勝経験豊富な選手、大舞台で力を発揮できるメンタリティーを持った選手、試合を決定づけるゴールを決められる選手――が何よりも必要だった。

 そのすべてを満たす永井は、まさに“意中の人”だった。03年のナビスコ杯、04年のJ1第2ステージ、05年度の天皇杯、06年度のリーグ&天皇杯、07年のACL。5シーズン連続で計6個のタイトルを獲得してきた“優勝請負人”の存在は、チームに大きな力を与えてくれるはずだ。

 「少しでも早くチームの環境に慣れて、チームメイトとの関係を上手く築き上げていければ、結果を出していくことができると思う。早くピッチに立って、それを表現したい」。赤の9番からオレンジの9番へ。長谷川監督も現役時代に背負ったエースナンバーを託された永井が、8シーズンぶりのタイトル奪取を狙う清水の命運を握っている。


▼関連リンク
第10回(鹿島・大迫勇也)
第9回(川崎F・登里亨平)
第8回(広島・原裕太郎)
第7回(F東京・中村北斗)
第6回(新潟・大島秀夫)
第5回(神戸・我那覇和樹)
第4回(浦和・山田直輝)
第3回(柏・仙石廉)
第2回(大宮・藤田祥史)
第1回(横浜FM・渡邉千真)

TOP