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Jを知る慶大・中町&早大・富山弾、早慶戦は譲らずドロー

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[5.3 関東大学サッカー1部第5節 早稲田大 1-1 慶應義塾大 西が丘]

 JR東日本カップ2009 第83回関東大学サッカーリーグ1部は3日、第5節1日目の2試合を行い、早稲田大と慶應義塾大との「早慶戦」が数年ぶりに1部で実現。前・湘南ベルマーレのMF中町公祐(高崎高)のゴールで慶大が先制した試合は後半、昨季ベガルタ仙台の特別指定選手だった早大の1年生FW富山貴光(矢板中央高)が同点弾を決めて1-1で引き分けた。
<出場メンバー>

 日本代表・岡田武史監督も視察に訪れた早慶戦(早大は大学選手権優勝11回=最多、慶大も同優勝3回の名門対決)。慶大が7年ぶりに1部復帰したことで4年ぶりに実現したリーグ戦での対決(05年は両チーム2部)は決着がつかず、ドローで幕が下りた。相手を上回るシュート13本を放つなど押し気味に試合を進めていたリーグ2位・慶大、そして相手を上回る闘志をピッチでぶつけた3位・早大。それぞれ持ち味も発揮したが、無敗の王者・流通経済大などと首位争いを演じている両チームはともに「勝ちたかった」だけに、試合終了の笛が鳴ると互いの選手たちはがっくりとピッチに腰を落としていた。

 1部復帰1年目ながら大学最高のレベルにある中町、MF織茂敦(4年=國學院久我山高)、MF河井陽介(2年=藤枝東高)の中盤のトライアングルを軸にサイドで数的優位をつくった慶大に対し、早大は縦に速い攻撃から中川翔平(4年=国見高)と富山の2トップがゴールへと迫った。先にチャンスをつくったのは攻撃の核・松本怜(4年=青森山田高)を負傷で欠く早大。7分、セットプレーからゴール前にこぼれたボールを富山が左足で狙い、9分には相手最終ラインの裏を突いた中川翔が左足シュートへ持ち込んだ。対して慶大は12分に右MF中川靖章主将(4年=静岡高)が抜群のボディバランスを生かした中央突破から河井へラストパス。15分には中町、河井とのパスワークから織茂が鋭く左足を振りぬいた。

 ただ、この日の慶大は人、ボールともに動きが少なく、ボールを支配こそしているものの、相手DFをあざ笑うかのように1タッチ、2タッチパスを回すいつものキレがない。前半は攻撃の工夫もなかった。ただ、先制ゴールを奪ったのはその慶大だった。37分、左FKから河井が絶妙なクロスボールを中央へ入れると、反応したのは10番の中町。かつて湘南の司令塔を務めていた経歴を持つ174cmのMFは、驚異的な跳躍から強烈なヘッドをゴールへ突き刺した。
 1点をリードされたまま前半を終えた早大だが、後半開始直後に同点に追いつく。相手の連係ミスからPA付近でボールを奪うと中川翔のラストパスから富山が右足で豪快に決めた。重苦しい空気を振り払った早大は攻守に激しさが増し、一気に活性化。それでも、リーグトップの14得点(4試合)を奪っている慶大攻撃陣はここから立て続けに決定機をつくり出した。11分、河井の右クロスをファーサイドの中町が折り返すとDF笠松亮太(2年=東京Vユース)が渾身のヘディングシュート。14分には右スローインからPAへ切れ込んだ中川靖の折り返しにFW甲斐悠佑(4年=慶應義塾湘南藤沢高)が反応する。さらに18、19分にも立て続けに勝ち越しのチャンスをつかんだ。だが、好守を連発する早大の守護神・菅野一弘(3年=早稲田実高)の牙城は崩れない。そのスーパーセーブが早大を勇気付けていた。

 この後、選手交代で逆にペースダウンしてしまった慶大に対し、早大はカウンターからあわやの場面をつくり出す。現4年生が入学した06年以降、早慶戦(定期戦)で一度も負けたことがなかった早大。中盤を中心にタレント揃う慶大の方が前評判が上だったことは確かだが、DF中川裕平主将(4年=四日市中央工高)が「相手に対するところは普段の試合と変わらないけど、慶應には負けられないプライドがあった」と振り返るように、チーム一丸となって戦い抜いた。
 結果、「向こうの方が上手だった」(中川裕主将)慶大にも勝ち越しゴールを与えず。勝ち点3を得ることはできなかったが、相手にも勝ち点3を与えなかった。一方の慶大・中川靖主将は「(早大の)攻守の切り替えが速く、いつも相手の方が先に動いているようだった。ウチは本来“気持ちのチーム”。ここで勝てていなかったし、チームとして危機感がなかったと思う」と悔しがっていた。

 結果次第ではともに暫定首位に立つ可能性があったが順位は変わらなかった。ただ、実力は大学トップレベル。昨年、最終節に何とか1部残留を果たした早大と、7シーズンぶりに1部復帰したばかりの慶大だが、今年の大学サッカー界の中心になれるだけのものがある。早大・中川裕主将は「(10位に終わった)昨年よりも精神的に強くなった。出ていない選手にも一体感があるし、(一度負けても)崩れないチームになった」。また慶大・中川靖主将は「(復帰1年目の1部でも)全然戦えていると思うし、特別なことをやらなくても勝てる。でも1部のチームは経験があるし、これから成長してくる。今のままではこれに飲み込まれてしまう。負けられない」。
 大学サッカー界の主役復帰を狙う名門たちは、今季どこまでチームを向上させていくか。そして関東、全国で結果を出すことができるか。直接対決にも注目が集まるライバル同士が再び対戦するのは、6月28日の第60回早慶サッカー定期戦(国立)だ。

<出場メンバー>
[早稲田大]
▽GK
菅野一弘(3年=早稲田実高)
▽DF
野田明弘(3年=広島ユース)
岡根直哉(3年=初芝橋本高)
服部大樹(4年=桐蔭学園高)
中川裕平(4年=四日市中央工高)
▽MF
山中真(2年=柏U-18)
89分→大畑将徹(4年=星稜高)
菅田恭介(4年=多々良学園高)
中野大輔(4年=桐蔭学園高)
74分→幸田一亮(3年=横浜FMユース)
奥井諒(2年=履正社高)
▽FW
中川翔平(4年=国見高)
89分→反町一輝(4年=前橋育英高)
富山貴光(1年=矢板中央高)

[慶應義塾大]
▽GK
中川翔太(2年=國學院久我山高)
▽DF
黄大城(2年=桐生一高)
笠松亮太(2年=東京Vユース)
三上佳貴(3年=藤枝東高)
田中奏一(2年=F東京U-18)
▽MF
織茂敦(4年=國學院久我山高)
中町公祐(4年=高崎高)
深澤良(3年=清水東高)
57分→横川達郎(3年=渋谷幕張高)
河井陽介(2年=藤枝東高)
89分→大塚尚毅(2年=滝川二高)
中川靖章(4年=静岡高)
▽FW
甲斐悠佑(4年=慶應義塾湘南藤沢高)
75分→風間荘志(2年=暁星高)

<写真>激しい戦いを見せた早稲田大(エンジ)と慶應義塾大(黄)。早大・富山(左)は貴重な同点ゴールを決めた
(取材・文 吉田太郎)

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