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[戦評]「一発狙い」で沈んだスペインと「第3世界」トップの力を示したアメリカ

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[6.24 コンフェデ杯準決勝 スペイン 0-2 アメリカ]

田村修一の「視点」

 国際試合15連勝、35戦不敗の記録を続けていたスペインが欧州でも、南米でもないサッカー界では“第3世界”のアメリカに負けた。 

 欧州の厳しいシーズンを終えたばかりということで、コンディションが整っていなかった部分は確かにある。だが、スペインには相手を甘く見ていた部分とモチベーションの低さが大会を通して出ていたと思う。プレーが雑でひとりよがりな強引なところも目立っていた。
 また、今大会を通して感じたのは、アラゴネス監督が指揮して優勝したEURO2008からチームのプレースタイルが変わったことだ。アラゴネス監督の時のスペインは、小さなスペースを見つけてはパスで切り崩していくサッカーだった。だが、アメリカ戦のサッカーは4-4-2システムの相手のDFブロックと中盤のブロックの間に1本目のパスは入るのだが、その後が単発。パスを受けた選手と同じスペースに入っていく選手がいなかった。前の選手を追い越していく動きもないし、結局はタテ、タテと単調な、「一発狙い」の攻撃となってしまい、堅い守備のアメリカに跳ね返されてしまった。

 今大会を欠場したイニエスタやセナがいればまた違うのかもしれないが、現在のデルボスケ監督と前任のアラゴネス監督とでは選手に求めているものも違うのではないか。右SBのセルヒオ・ラモスはEUROの時は中盤の組み立てに参加していたと思うが、今大会はライン際でのプレーばかりだった。どちらかというと、シンプルに相手の裏やサイドをとるというスタイル。デルボスケ監督が目指すサッカーがいい、悪いという判断はまだできないが、圧倒的な強さを誇ったEUROの時とは別のチームとなっていくと考えた方がいいだろう。

 アメリカに関してはコレクティブでディシプリン(規律)があって、技術はなくてもフィジカルの強さを武器に90分間同じレベルのサッカーを続けることのできるよさを出していた。組織で守る守備は堅く、攻撃に関してはほぼドノバンら3人だけで攻めていたが、得点場面はいずれも個の強さも出したものだった。
 大会当初はエジプトにも勝てないかと思っていたアメリカだが、自力の高さを見せた。今回の勝利は欧州、南米に続く“第3世界”のトップチームでも、相手の内容がちょっとでも悪ければ欧州トップのチームに勝つことができることを示したと思う。

(取材 フットボールアナリスト田村修一)
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