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[北京への道(15)]DF水本裕貴(京都)

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[7.12 第16節 東京V0-1京都 味スタ]

 京都サンガF.C.のDF水本裕貴が、G大阪からの電撃加入後3試合目でうれしい初勝利を手にした。チームは公式戦7試合ぶりの無失点&勝ち点3。その立役者が、背番号8を付けた水本だった。4バックのラインコントロールでは大声で指示を飛ばし、東京Vの攻撃を組織的な守備でシャットアウト。後半5分にはスライディングタックルでFWフッキからボールを奪うなど、東京Vの個人突破にも体を張って対応した。持ち味の1対1の強さも蘇ってきた。
 今季、4シーズン所属した千葉を離れ、さらなるチャレンジのためにG大阪に移籍した。しかし、2月の東アジア選手権などで日本代表に長期間拘束され、新チームに溶け込む時間のないまま開幕を迎えた。大阪市内に部屋を借りる時間もなく、開幕当初はホテル住まいだった。千葉時代に慣れ親しんだ3バックではなく、新たな4バックへの戸惑いもあった。スタメンで迎えた千葉との開幕戦は0-0の無失点に貢献したが、その後はACLとの連戦の中、失点に直結するミスを連発。気がつけばDF中澤聡太にポジションを明け渡していた。
 G大阪に残って、定位置を奪回したい思いもあった。しかし、今年は北京五輪イヤー。ベンチを温め続ける中、「北京に行けないかもしれない」と危機感を強めていった。そして7試合出場(うち先発2試合)で迎えた中断期間、移籍の決断を下す。代理人を通じて獲得に動いてくれるクラブからの連絡を待った。高額な移籍金は交渉を難航させると思われた。その中でまっ先に手を上げてくれたのが京都だった。
 自信を失っていた水本に、加藤久監督は「自分の持っているものを出せばいいんだ」と諭した。「監督は自由にやらせてくれる。結果が出なくても“我慢だ”と言ってくれて、考え込まずに試合に臨めるようになった」と水本は言う。G大阪では試合に出られない苦しみを味わい、京都に新天地を求めてからも電撃移籍に対する周囲の非難の声が耳に入った。苦悩に苦悩を重ねてきた水本にとって加藤監督の声は温かく、優しく響いた。
 シーズン途中の移籍とあり、またしても引っ越しをする時間がなかった。今も大阪市内の自宅から車で高速を飛ばして京都の練習場に通っている。「片道40分から50分ぐらいですかね。(引っ越しは)五輪に選ばれれば、それが終わってからになるかな」と笑った。
 14日、運命の北京五輪メンバー発表を迎える。アジア最終予選の主将も、決してメンバー入りが安泰なわけではない。しかし、復活の兆しを見せつつある今の水本なら、必ず反町ジャパンの力になるだろう。「このクラブに、加藤監督に恩返しがしたい」。北京への切符を勝ち取ることが、その第一歩となる。

(取材・文 西山紘平)

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