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[高校総体]市立船橋「一番」の出来で難敵破る(市立船橋vs作陽)

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[8.02 全国高校総体サッカー競技準々決勝 市立船橋 4-0 作陽 埼玉スタジアム第2G]

 王者が今季最高とも言えるパフォーマンスで難敵・作陽を突破した。昨年度の全国総体優勝校・市立船橋と一昨年度の全国高校選手権準優勝の作陽(岡山)が激突した準々決勝の最注目カードは1点を争う好勝負が予想されたが、試合は意外にも前回王者の圧勝に終わった。
 試合の行方は市立船橋がシュート3本で3点を奪った前半で大勢が決した。市立船橋は前半18分、中盤で相手MFにプレッシャーをかけたMF笈川大樹(3年)がボールを奪取。そのままドリブルで独走するとマークに来たCBもかわして右足で鮮やかに先制ゴールを決める。さらに21分には左サイドからドリブルで仕掛けた中村の鋭いクロスが相手DFのオウンゴールを誘い、リードを2点へと広げた。大きなリスクを負わず、シンプルに2トップとサイドアタッカーにボールを預けて攻めていた市立船橋だったが、29分にも中村のスルーパスで抜け出した笈川が右足でゴールを破り、前半だけで3点のリードを奪った。
 「前半で3点獲ってくれて落ち着いて試合ができた」と石渡靖之監督。後半にも中村が個人技でゴールを破ると、守備陣もGK若尾直道とDF青木將英(ともに3年)を中心に相手をノーゴールに抑えた。交代枠もフルに使って準決勝へ向けた選手の体力維持に努めることもできた市立船橋。中村は「(今大会で)一番良かった」と笑顔で快勝を喜んだ。
 不安視されたチーム力を自らのプレーで覆した。今年は連覇のかかったJFAプリンスリーグ(U-18)関東1部で10位。終盤は4連敗して2部降格の屈辱を味わった。ただ、苦しい試合が続いたものの、収穫はあった。プリンスリーグ終盤から起用されてきた2年生のMF鈴木宏樹は、抜群のスピードとテクニック、そして左足からの精度の高いキックで今や市立船橋のサイド攻撃に欠かせない存在となった。またMF馬渡和彰、MF蒲真之介の両2年生MFも完全にレギュラーへ定着した。そして最終ラインではCBの青木將英(3年)が守備の柱へと成長。浦和ユース、FC東京U-18などJユース勢を交えた厳しい戦いを経て、チームは確実に成長してきた。石渡監督は「攻撃の中村と守備の青木、攻守にわたって柱が立てたのは大きい」と表情を緩めた。
 「(勝てない時期もあったが)今はひとりひとりの意識がプリンス(リーグ)の時とは違う」と青木は胸を張る。この日3得点に絡んだ中村は「守備から攻撃の切り替えは速くなったけど、攻撃から守備への切り替えはまだ遅い。ボールを見ながら動いている選手がいる」と苦言を呈しながらも「今は全員が高い位置から相手を潰しにいけているし、全体としては良くなっていると思う。自信もついてきている」とチームの成長を口にした。全国総体に照準を合わせたように明らかに変わってきた王者。勢いに乗る市立船橋の連覇を阻止するチームが現れるか、注目が集まる。

<写真>1ボランチを務める蒲(右)らのハイプレッシャーで市立船橋は作陽の攻撃を沈黙させた
(取材・文 吉田太郎)

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