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[フットサルW杯]日本世界初勝利の重み[戦評]

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[10月4日 ブラジル・ブラジリア]

GroupA
日本 7-2 ソロモン諸島
得)金山、木暮、小宮山、藤井、小曽戸2、稲田

対キューバに2-10、対ブラジルに0-21。今大会GroupAにおいて力が落ちると見られていたソロモン諸島のここまでの戦績。日本としては、ワールドカップ初勝利を挙げる大チャンスだった。

日本はブラジル戦とスタメンを変えた。GK川原永光(浦安)、FP小宮山友祐(浦安)、金山友紀(町田)、藤井健太(浦安)、稲田祐介(浦安)とほとんどをFリーグ、浦安のメンバーで固めてきた。ブラジル戦で負傷したピヴォ・小野(浦安)の代わりは、ケガで代表辞退した高橋(カハ・セゴビア)の影響で追加召集された稲田だった。

相手のレベルが日本に劣るということは、試合開始直後に確信できた。ミスを頻発するソロモン諸島に対し、ブラジル戦ではできなかったショートパスの連係からフィニッシュという、日本の本来の形ができていた。自分たちのプレーができていることを示すように、3分金山、10分木暮賢一郎、12分小宮山のゴールで3点リードを奪う。

しかし。順調に進んでいた試合が突如狂う。18分に前田喜史(浦安)が自陣ゴール前の混戦を切ろうとクリアしたキックが日本ゴールに。オウンゴールで1点を許すと、1分後にはジニオに強引に押し込まれ、瞬く間に1点差に。現地のブラジル人たちは、同点を狙うソロモン諸島の積極的な姿勢に対し、前半を1点リードで終わらせようと時間稼ぎをする日本のプレーに最後はブーイングを浴びせた。

嫌な空気で折り返した後半。不安を一掃したのは代表歴が10年を越えるキャプテンの藤井だった。3分、GK川原からのクリアランスをそのままゴールに流し込み貴重な4点目。その後はソロモン諸島のミスと消耗に助けられながら要所で加点し、念願の初勝利を挙げた。

一方、ソロモン諸島はチーム平均年齢が18と若い。若さを武器にコートを走り回る運動量で、前半こそカウンターから日本を追い詰めたが、後半も中盤から運動量が落ち、ミスも際立って目立つように。残り7分の時点でGKをFPに変えるパワープレーに出るも、5人で攻めたてる場面は2度しかなく、トレーニング不足を露見した。

試合後、藤井が語った。「厳しかったが1勝できてうれしい。前半、いい形で追われるところが、“1勝の重み”からか失点した。後半立て直そうと話して、その役割を自分が果たせたのはよかった。この1勝の重みを噛み締めて、次の試合にいかしたい。グループリーグを勝ち抜けることを考えているので」。

5点差の勝利にも「厳しい」と発言したのは、決して自分たちのプレーが誉められたものでないと感じる部分もあったからだろう。特に試合終盤は、「コンディション不足か?」と思わせるほど選手たちの足が止まりミスを連発。ミスを続けるソロモン諸島とミスの応酬のようになってしまった。
2失点ですんだのも、相手に助けられた部分が大きい。他の国が相手であったら…と思うと、初勝利の喜びとともに不安も生まれてしまう。

この試合、日本は世界の舞台で初めて「挑戦者」の意気込みが薄れていたのではないか。確実に行こうとする気持ちがプレーを消極的にしている面が、なかったといえば嘘になるだろう。
祝福すべき1勝を挙げた試合。そしてグループリーグ突破を目指すこれからの戦い。フットサル日本代表は未踏の領域に進んだ。また「挑戦者」の気持ちが戻りさえすれば、今日の試合の不安は消える。そう期待したい。

(文/伊藤亮)

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