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Jを目指せ! by 木次成夫

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第133回「JFL前期2節 町田ゼルビア対ニューウェーブ北九州」
by 木次成夫

 ニューウェーブ北九州監督に与那城ジョージ氏が就任してから、3シーズン目。JFL昇格1年目の昨季は10位ながら、J準加盟チームとしては今や、ガイナーレ鳥取(昨季5位)に続く2番手。つまり、今季はJ参入に大手を賭けてしかるべきシーズンです。

 今季加入選手は、以下の7人。
DF、伊藤琢矢(34歳、前ファジアーノ岡山)
DF、重光貴葵(25歳、前ファジアーノ岡山←東京V)
DF、片野寛理(26歳、前・佐川印刷←栃木SC)
DF、川鍋良祐(23歳、前・栃木SC)
MF、久保田勲(25歳、前・栃木SC)
MF、関光輝(26歳、前ロアッソ熊本)
FW、長谷川太郎(29歳、前・横浜FC)

 一見して地味な補強ですが、4位以内を目指すには、昨季のチームをベースに即戦力を揃えた方が適策なのかもしれないという印象も――。そんな観点で、昨季のチームをベースにしつつも、対照的なチーム作りをしているゼルビアと対戦する2節は注目のカードでした。

3月22日
JFL前期2節
町田ゼルビア 0-2 ニューウェーブ北九州(昨季10位、以下NWと略)

 スタメン平均年齢はNW28,6歳に対して、ゼルビア24,2歳。NWは新加入選手を含めた全員がJFL以上でのプレー経験があるのに対して、ゼルビアのスタメンでJFL以上のクラブに所属した経験のある選手は4人だけ。両チームに共通しているのは、スタメンのうち半数以上(NW7人、ゼルビア8人)が昨季も在籍していた選手だということくらい。

 結果として、勝敗を左右したのは、選手個人レベルでも、チーム全体としても「経験の差」だったと思います。

 ゼルビア戦のNWメンバーは、以下の通り。
[スタメン]
フォーメーションは4-4-2
GK、水原大樹(34歳=3年目、前・東京V)
右SB、佐藤真也(30歳=2年目、前FC琉球)
CB、伊藤琢矢
CB、川鍋良祐
左SB、片野寛理
右MF、冨士祐樹(27歳=2年目、前・徳島ヴォルティス)
ボランチ、桑原裕義(37歳=4年目、前・ファジアーノ、元・広島など)
左MF、久保田勲
トップ下、佐野裕哉(写真=26歳=2年目、前V・長崎←湘南←東京V)
FW、宮川大輔(29歳=4年目、前・ザスパ)
FW、中嶋雄大(24歳=3年目、前・福岡教育大学)

[サブ]
GK、船津祐也(25歳=4年目、前ロッソ熊本=現ロアッソ)
DF、永野 諒(24歳=3年目、前・福岡教育大学)
MF、日高智樹(28歳=7年目、前・福岡教育大学)=89分に冨士と交代出場
FW、河内勇太(23歳=2年目、前・福岡教育大学)=73分に中嶋と交代出場
FW、長谷川太郎

 対するゼルビアは、試合前の練習で負傷したFW奨・津季23歳、前・桐蔭横浜大学)の代役で急遽、FW柏木翔一(23歳、前・帝京高校)が起用された以外は、1節の佐川印刷戦(0対1で勝利)と同様の布陣でした。

[得点経過]
16分 0-1
得点=宮川大輔
風上のNWが持ち前のプレッシング・サッカーで序盤から優勢に進め、先制。佐野のスルーパスに合わせて走りこんだ宮川が、ゼルビアCB中川勇人(25歳、前・神奈川大学)の裏をとり、GK修行智仁(24歳=今季加入、前ガイナーレ)が“前に出る”動きを見て、冷静にシュート(写真ニュース)。

64分 0-2
得点=佐野裕哉
後半、風上から攻勢を続けていたゼルビアにとっては、一瞬の隙。右サイド、佐藤真也がフリーで放ったクロスを、ゴール前に走りこんだ佐野がフリーで豪快にヘディング・シュート。

 シュート本数はゼルビア12本(前半5本、後半7本)に対して、NW8本(前半6本、後半2本)。佐野のゴールが値千金だったことがわかる数字ですが、フィジカル能力が相対的に高い選手が揃ったからこそ、佐野のセンスが“より”活きたと言えるでしょう。ただ、シーズン最終節(11月29日)の「2戦目」まで優位性を保てるほどの差が両チームにあるとまでは感じませんでしたが……。

 少なくとも着実(微妙、意外)な選手の成長(限界、衰え)を感じることができるのは、大補強を敢行するチームでは味わえない“サッカーの醍醐味”だとは、思います。

 ところで、この試合はゼルビアにとって、JFL初ホームでした。1節の勝利が“追い風”になったはずですが、観衆1713人(公式発表)。入場料無料とはいえ、昨季の関東リーグでは約2800人を集めた実績のあるチームとしては、意外な少なさ。結果的に「曇り」だったとはいえ、「曇り時々雨」という天気予報(実際、試合前に雨が降った時間帯があった)と、町田市立陸上競技場はメインスタンドの一部にしか屋根がないことも、客足に影響したのでしょうが……。

 開幕前、全18チームの監督が集った会見で、戸塚哲也監督は「敗れても、面白かったといってもらえる試合をしたい」と言いましたが、実際、NW戦でも何度かゼルビアらしいパスワークが見られました。

 試合後、ゼルビア選手たちは即座に気持ちを切り替えて、子供たちとの“ふれあいサッカー”を、こなしました。サッカー(ボール遊び)を楽しむ定番イベントですが、トップチーム選手数人が下部組織のコーチをしている影響か、総じて、子供たちとの接し方が巧い点がゼルビアの特徴です。つまり、“ふれあい”レベルが高いわけです。先発フル出場した選手ですら溌剌と指導する姿を見て、改めて“ゼルビア選手は異例だ”と感じたほど。もちろん、中には戸惑っている新加入選手もいましたが……。

“スタジアム・グルメ”も一見 (一食)の価値があると思います。少なくとも、昨季開幕当時のカターレ富山や栃木SCとは比較にならないほど多彩です。

 ちなみに、ゼルビアと同じくJFL初ホームだったV・ファーレン長崎はガイナーレ鳥取と対戦し、観衆2382人(雨のち曇り、試合結果は1-2)。共にJリーグ参入条件の平均3000人には、程遠い数字です。

 試合結果以上に、観客数での躍進を期待したいです。

<写真説明>試合後、笑顔を見せる。NWのMF佐野裕哉(26歳、元・東京Vなど)

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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