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Jを目指せ! by 木次成夫

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第134回「JFL前期3節 V・長崎&ゼルビア“健闘中”」
by 木次成夫

3節を終えて全勝はガイナーレ鳥取(昨季5位)だけ。その一方で全敗もFC琉球(同16位)だけ。アルテ高崎(同17位)は、ダントツの最下位だった一昨季と“すでに”並ぶ、勝ち点7の3位。不況ゆえに大補強できなかったチームが多いという要因が大きいのでしょうが、拮抗した競り合いはサッカー(など、相手と競り合うチーム競技)の醍醐味です。つまり、クラブ側にとっては、ファンを増やすチャンス到来ということでは?

3月29日
Honda FC 2-1 V・ファーレン長崎

昨季優勝のHondaに対して、V・ファーレン長崎(Vはヴィと発音)は今季昇格。1節は流通経済大学(昨季6位)にアウェーで0-0、2節はガイナーレ鳥取(昨季5位)に1-2で敗退。昨季所属メンバーが多いことを考慮すると、“健闘している“という印象でした。また、だからこそHonda戦が気になったのですが……。

Honda戦の長崎メンバーは、以下の通り。
[スタメン]
フォーメーションは4-4-2
GK、近藤健一(25歳=4年目、前・FC東京←国見高)
右SB、隅田 航(20歳=2年目、前・京都)
CB、久留貴昭(26歳=4年目、前・佐川急便大阪)
CB、加藤寿一(27歳=4年目、前・三菱水島FC、元・福岡など)
左SB、田上 渉(26歳=5年目、大商大←国見高)
右MF、神崎大輔(24歳=今季加入、前・甲府)
ボランチ、原田武男(37歳=5年目、元・横浜Fなど)
ボランチ、竹村栄哉(35歳=3年目、前・鳥栖)
左MF、山城純也(23歳=今季加入、前・鳥栖)
FW、有光亮太(27歳=3年目、前・福岡)
FW、宮尾勇輝(22歳=今季加入、前・立命館大)

[サブ]
GK、福田 涼(20歳=3年目、前・熊本国府高)
DF、佐藤由紀彦(32歳=今季加入、前・仙台)
MF、大塚和征(26歳=2年目、前・福岡)=78分に原田と交代出場
MF、川崎元気(30歳=2年目、前・バンディオンセ神戸=現・加古川、元・鳥栖など)=54分に宮尾と交代出場
FW、平田翔太(22歳=今季加入、前・三菱重工長崎)
FW、福嶋 洋(26歳=3年目、前・福岡)
FW、阿部博一(23歳=2年目、前・道都大学)=69分に神崎と交代出場

今季加入選手は8人ながら、主力は昨季同様。「コンディションの良い選手を選んだ」(東川昌典監督)結果、3戦連続スタメンは6人(近藤、久留、加藤、原田、田上、有光)。彼らは、07年に「九州リーグ3位」という屈辱を経験しています。近藤を除く5人は、同年の全国地域リーグ決勝大会進出を逃した全国社会人選手権準決勝、MIOびわこ草津戦のスタメン。当時を振り返ると、“その約1年半後”に、前年度JFL王者に守備が“かなり”機能した上に、流れの中で得点できたことが、信じられないほど。結果的に敗れたとはいえ、“ここまでできる”という点で、可能性を感じられる試合内容でした。

[得点経過]
21分 1-0
(Honda得点=新田純也、30歳、08年JFL最優秀選手&得点王、前・清水商高)
体を張ってカットしようとした久留の手に、シュート(あるいはラストパス)が当たり、PK。明らかに意図的ではないプレー。つまり、判定は疑問。

67分 1-1
(長崎得点=有光)
相手陣内の深い位置で川崎からのパスを受けた隅田がセンタリング→有光がヘディング・シュート。スピーディなボールな流れに、Honda守備陣は反応できず。“やれば、できる”見本のようなゴール。

76分 2-1
(Honda得点=牧野泰直、24歳、前・静岡産業大)
左SB牧野がトップの新田を“くさび”にしたワンツーからシュート。「同点に追いついた後、うちの選手の動きが止まってしまった」(東川監督)。

シュート本数はHonda7本(前半3本、後半4本)に対して、長崎8本(前後半各4本)。積極的に走り、的確につなぐHondaの「パス&ゴー(go)」サッカーは完成度が高く、プレーの連動性という点で、大きな差を感じました。さすがは伝統のある企業サッカー部であり、サッカー王国=静岡県のチーム――。

ただ、個人能力差というよりは、気持ちと“慣れ”の問題だとも思いました。なぜなら長崎は、例えば、同点に追いつく前にも何度かサイドからチャンスを作れましたから。また、1失点目は事故みたいなもの。試合後、東川監督インタビューの際、取材陣は悲観的トーンでしたが、“なぜ?”という感じです。

そもそも、長崎は昨季の九州リーグ2位(優勝は沖縄かりゆし、3位はホンダロック)で、全国地域リーグ決勝大会2位(優勝は町田ゼルビアで、3位はホンダロック)。JFL昇格3チーム中2番手。つまりJFL18チーム中、下から2番目。順調にいけば、17位が妥当であり、それ以上であれば、健闘なのです。

また、日本代表を含めて、すべてのチームに言えることですが、勝利は様々な課題(問題、欠点)を忘れさせる“きっかけ”に、なりえます。戦争、あるいはバブル経済(相対的な好景気)しかり。その一方で、敗退(不景気)は将来の糧に、なりえるのでは?

3月28日
ソニー仙台 2-0 町田ゼルビア

ソニー仙台は昨季9位。ゼルビアの2失点とも、1対1のスピードで振り切られた末でした。個々の能力差というよりは、地域リーグではカットできたり、相手がシュートミスをしていたゆえに、チーム全体としての“寄せ”が緩い(JFLレベルのサッカーに対応しきれていない=慣れていない)という印象。つまり、長崎同様。攻撃面では、リハビリ中の酒井良(31歳、前ザスパ)と、2節ニューウェーブ戦前の練習で全治6ヶ月の怪我を負った奨・津季23歳、前・桐蔭横浜大)の“穴”が大きいのは明らか。と言っても、“懲りすぎ”かもしれないパスワークなど、美学があるからこそ「負けても面白いサッカー」が“ありえる”ことは、2戦連続で実感できましたが……。

[得点経過]
15分 1-0
(大久保剛志、22歳=2年目、前・ベガルタ仙台←ベガルタY)

18分 2-0
(澤口 泉、22歳=今季加入、前・流通経済大学←浦和Y)

ソニー仙台は、CB谷池洋平(31歳=加入2年目、前・栃木SC、元・徳島など)の統率力、カットに入るタイミングも見事でした。相対的に低レベルゆえに際立ったとも言えますが、日本トップ・レベルも世界トップ・レベルと比べると低レベルですから、相対的な差異を見て楽しむという点では、JリーグもJFL以下も大した差はないと思います。競り合いの中での相対的評価として、巧い(下手)、面白い(つまらない)などと感じるわけですし――。

だからこそ思うのですが、J2で低迷しているクラブを含めて、関係者、監督、選手は「結果がすべて」ではない魅力をアピールすべきでは? 会見に臨む立場である監督はPR担当でもあるべきでは? 例えば、会見で「負けたけど面白かったでしょ?」と言い出し、そのトーンで押し切る監督がいたら、取材者や一般住民(=潜在的ファン)の意識も変わるかもしれません。

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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3/28町田ゼルビア
3/29V・ファーレン長崎

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